「Road to CEO」

「Macからマック」は運命だった

〜日本マクドナルド 会長兼社長 原田泳幸氏(3)

バックナンバー

2008年4月1日(火)

1/2ページ

印刷ページ

Part2へ

 職業としての「社長」を自ら選び、活躍している人をお招きし、将来、経営層を目指す人々に、ご自身の経験を語って頂くトークセッション「Road to CEO」。今回は、マクドナルドの原田泳幸氏をゲストに迎えた。アップルで暫定CEOのスティーブ・ジョブズとともに改革の大鉈を振るい、マイクロソフトの後塵を拝していた同社の建て直しに成功、そして2004年には「マックからマックへ」、カリスマ経営者の藤田田の後継として日本マクドナルドの社長に就任。ここでもV字回復を成し遂げた背景を聞いてみよう。

(司会はリクルートエグゼクティブエージェントの井上和幸氏が担当。このインタビューは昨年行われたものです)

日本マクドナルド原田会長兼社長

-----------

司会、井上(以下I) マクドナルドの話を少ししていただきましたが、語呂合わせのように、Macからマックへというところが非常に話題にもなりました。

原田 これも運命だったような気がします。IT業界を33年、それまでYHP以外、自分の意思で退職したことはないわけです。しかも、エンジニア、セールス、マーケティング、お客さんのセグメントも多岐にわたって経験させていただきました。

 ただ、50歳を過ぎて、一生ITで終わるのかなという思いもありました。焼き芋屋を起こし、世界に通用するブランドに育てることも俺はできるぞ、なんて考えていた時期、慶応大学の寄付講座に行った帰りです。人材採用でお世話になっていたヘッドハンティングの方にお会いしたとき、「こういう話があります」と言われました。その瞬間、運命だと感じ、「分かりました。95%気持ちは固まっています」と言ってしまいました。

I 創業者の藤田田さんがご退任後、お亡くなりになったタイミングと重なったわけですけど。

原田 すれ違いです。私が入社してごあいさつにお伺いしようとした時にはもう入院されていて、私がアメリカに出張し、帰ってきた時にはお亡くなりになっておられました。ですからお会いする機会はなかった。残念でした。

I 一方で、藤田さんという素晴らしい経営者の会社を受け継ぐのは、ものすごいことだなと。その辺のお気持ち、何かありませんでしたか。

原田 私がマクドナルドのハンバーガーを最初に食べたのは1971年です。社会人になってすぐのことです。私がアップル時代、価格を59円に下げたり上げたりというのでマスコミが大騒ぎして、NHKの「クローズアップ現代」でも失敗事例として取り上げるぐらい大問題になっていました。消費者の信頼を失った事例としての取り上げです。

I よもやこういう話になるとは。

原田 お話を頂いた瞬間、「ああ、これはやりがいのある仕事かもしれない」と思いました。7年連続で売り上げが下がっているわけで、外から見て「逆にいえばそれは絶対チャンスがある」と思いました、外食産業というのは市場規模が27兆円。自社調べで、ファーストフード、ファミリーレストラン、コーヒーションプ、お弁当チェーンなどだけでも7.7兆円あります。外食業界の中でナンバーワンといっても当時は4000億円の売り上げにも満たなかった。それだけでもいかに伸びるチャンスがあるかというのが分かるじゃないですか。

I これ以上の挑戦しがいがある経営ってないんじゃないかと。

原田 そうですね。そのときすぐ決断した理由は、ビジネスのスケール感じゃないですかね。先ほども申し上げましたが、まだまだとは言え、当時の売り上げは約3900億円でした。しかも拠点は3,800店舗もある、グローバルでは119カ国、30,000店舗、売り上げは6兆円企業です。日本マクドナルドは上場していますから、上場企業の社長となります。これはまた未知の経験で、魅力だった。

I 先ほどお話しいただいたような、初動で、マネジメントの入れ替えを思い切ってやられた印象がありますが、外野からはいろいろな声が上がったと思うんです。その辺、どんなふうに受け止めていたのか。

うちはグローバル企業企業。嫌ならうどん屋へ行け

原田 そもそも人間は、経験が新しいチャレンジの阻害要因になりです。「異業種で大丈夫ですか」とずいぶん言われました。親にも言われましたよ。でも異業種だから新しいことができるわけです。同業種の人だったら、とてもじゃないけど勇気が出ない。入って、全社員に「新しい方向にバスが出る」と、バスの絵を描いて見せたんです。

I 実際のですか。

原田 そうです。気障なプレゼンですけどね。「このバスのチケットを買うかどうか自分で考えろ」といいました。「グローバル企業でありながら、日本は違う。アメリカ本社は日本のことを分かってくれない。こういう会話が多い。トヨタが日本国籍のグローバル企業であるように、我々はアメリカ国籍のグローバル企業であって、これは変えられないことだ。その強みを発揮しない限り生き残っていけない。それが嫌だったらバスに乗らなくていい」と言ったんです。

 「徹底してアメリカ国籍のグローバル企業であり、その強みを最大に活かす。戦略はこう行く、自分でこのバスに乗るかどうか判断し、乗るならチケットを買ってくれ」と言いました。バスに乗るか乗らないかは、本人の選択ですよ。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
この記事を…
内容は…
コメント7 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス、日経クリック、日経パソコン編集を経て、2006年2月から日経ビジネスオンライン副編集長、編集委員を務めた後、2010年4月から日経ビジネスアソシエ副編集長。ツィッターはこちら



このコラムについて

Road to CEO

この「Road to CEO」は、昇格や継承ではなく、自らの職業として「社長」を選び、活躍している方を招いて、将来経営層を目指す人材を前に自らの経験を語って頂くトークセッション。今求められている経営者としての技術を、生の会話の中からつかんでいただきたい。この企画と運営には、経営層に特化した人材紹介サービスを展開しているリクルートエグゼクティブエージェントの協力を得た。(写真:大槻 純一)

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン

日経ビジネスからのご案内