「「跡取り娘」の経営戦略」

跡取り娘の“品格ある経営”とは
ニッポンブランド再生物語

【対談】坂東眞理子氏×白河桃子氏 その1

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2008年3月26日(水)

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『跡取り娘の経営学』 白河桃子著 日経BP出版センター 1400円(税抜き)

『跡取り娘の経営学』
白河桃子著 日経BP出版センター 1400円(税抜き)

 本サイトの連載「『跡取り娘』の経営戦略」が、書籍『跡取り娘の経営学』になりました。

 普通なら男性が継ぐはずの家業を、自ら経営者として継承することを選んだ「跡取り娘」たち。2006年10月の連載スタート時から、全国各地の「跡取り娘」たちをインタビューしてきた筆者の白河桃子さんは、こう感じていました。「どの跡取り娘にも共通する、潔さ、優しさ、仕事に対する類まれな情熱は、いったいどこからきているのだろうか?」

 『女性の品格』の著者で、昭和女子大学学長の坂東眞理子さんは、跡取り娘の記事を読んで、こうつぶやきました。「愛と責任感を持って経営に取り組む彼女たちの“品格”ある生き方に、私は感動します」…。

 白河さんが取材を通じて感じ取ったのは、跡取り娘たちの「働く女性としての品格」だったのです。

 今回はゲストに坂東さんを迎え、『跡取り娘の経営学』著者の白河桃子さんと「跡取り娘の品格」について議論を交わしていただきました。

●白河さんの最新連載はこちら→「白河桃子の“キャリモテ”の時代

―― 企業の継承に苦労する人が多い中、息子や娘婿ではなく娘に家業を継がせるというのが今回の『跡取り娘の経営学』のポイントです。

坂東 昔は「跡取りは、息子」というふうに決められていたと思うんです。家に女の子と男の子がいたら、男の子の方が「お兄ちゃん、あなたは跡取りなんだからしっかりしてね」と言われて育ちましたよね。女の子は、家を出てお嫁に行くと。

白河 そうですね。私の大学時代、家が商売をやっている女性の友人がいましたが、たいていは友人のお兄さんが家を継いでいました。

昭和女子大学学長の坂東眞理子氏

昭和女子大学学長の坂東眞理子氏 (写真:山田 愼二、以下同)

坂東 でもこの本にも出てくるように、最近はお嬢さんたちがしっかりと家業を継いで、成功する例が増えているわけですね。

白河 そうなんです。先ほどの例も、意外に妹本人の方がしっかりしていて兄がダメ、ということもあって。「あの会社は、お兄ちゃんじゃなくて、妹(友人)が継いだ方がよかったのでは? 友人も跡取りとして教育されていたら、いい経営者になったかもしれないのに、もったいない」と思うことがありました。

坂東 日本でも、昔の船場の商家や相撲部屋は、「家つき娘」が跡は取るけども、経営はお婿さんがする、という感じでしたね。娘さんは人事担当・経理担当重役で、「表の顔」は旦那さん。よそから有能な男性を迎えて、養子にすることも多かった。でも白河さんの本で紹介している人たちは、娘さん自身が経営をやっていますよね。

白河 「跡取り娘」の連載は2006年に始めたのですが、最初のうちは日本に「跡取り娘」がこんなにたくさんいるとは思いませんでした。私の世代(40代半ば)では、まだ女性が跡取りとして育てられることは、少なかったので…。

坂東 でも、それがよかったんじゃないかしら。女性は小さい時から「あんたは跡取りで、この店を継ぐんだから」と刷り込まれてきていないでしょう。だから逆に、男性よりも自由な発想ができると思います。

白河 プレッシャーがないんですよね、

坂東 そうですね。子供を育てる時も「あんたはこうだから」とか、親が先回りして「こうしなきゃいけない」と言うと、子供はかえって反発するんです。例えば跡継ぎの息子たちは、「あんたは跡継ぎだから」と言われ続けたことで、家業に重圧を感じたり反発したりして、伝統の大事な部分も壊したくなっちゃうんじゃないかしら。

白河 実際にそういう息子がいました。「お父さんを越えなきゃ」というプレッシャーがあって。それがない分、お嬢さんの方が強いんでしょうね。

坂東 お嬢さんは、「そもそも父親を越えられるはずがない、別の存在だ」と思っていますからね。その意味で、女性は「伝統の時代を壊さなきゃ」と思うことは少ないと思います。本当に最近は、「女の子は経営は向いていないから息子、だめなら婿」という狭い「男尊女卑」的な考え方が、変わりつつあるんですね。

跡取り娘の品格経営「社員を思いやる」

白河 『女性の品格』でコミュニケーションが大事である、と書いておられますが、「跡取り娘」たちはほかの人とのコミュニケーションや気持ちの交流を重んじる傾向があるんです。男性はどちらかと言うと、勝ち負けにこだわるのですけど。

坂東 女性は、部下が何を考えているか、気持ちよく働いているか、気を配っていますよね。白河さんの本に、跡取りさんを子供の頃から知っている、年上の社員(番頭さんとも言いますよね)がいる会社が出てきました。跡取りさんは、こういう番頭さんを押さえつけたりバカにしたりは、決してしない。逆に、男の子だと「番頭に牛耳られてはいけない、僕がしっかりしなくちゃ」と対抗心を出して、ムキになることがある。

白河 そうなんです。跡取り娘たちは、とにかく番頭さんを上手に立てて、うまくやりながら前に進んでいこうとしています。また、その社員たちがだんだん年を取ってきたら、彼らの将来を心配したりする…。

坂東 責任感があるのね。よく、「日本には上流階級がいない。豊かな生活をするとともに、社会に対する責任ある行動、ノブレスオブリージュ(高貴な義務)を持つ人が少ない」と言われます。でも跡取り娘さんたちは、そうしたノブレスオブリージュを持っているように思います。子供の頃から、父親の会社の従業員や仕事を手伝っている人から大事にされた分、彼らに対して責任を感じている。そういう人たちが、跡継ぎになっているんじゃないかしら。

白河 中にはかなり資産があり、事業をやめた方がいいかもしれない会社もあるんですよ。でも、会社をつぶしたら、社員が路頭に迷ってしまう。だから、やめられない。…そういう「利己」ではなく「利他」の気持ちを持った女性が多かった。こういう考え方ができるのも、跡取りさんたちが心豊かに育てられたからなのかなと思います。

坂東 もちろん、中には大事にされすぎてスポイルされた人もいるはずだけど、女性の場合は、スポイルされた人は跡継ぎにならないんですよ。責任感のある人だけが残るのです。男の子だったら、「ほかに男の兄弟がいない」という場合、たとえ出来が悪くても跡継ぎにされてしまうこともある…。

白河 総領息子は、ちやほやされますしね。

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著者プロフィール

白河桃子(しらかわ とうこ)

白河桃子

1961年東京生まれ、慶應義塾大学文学部卒業。結婚、少子化など女性のライフスタイルに関する取材を数多く手掛る。著書に『「キャリモテ」の時代』(日本経済新聞出版社)、『跡取り娘の経営学』(日経BP出版センター)、『「婚活」時代』(ディスカヴァー・トゥエンティワン )など。



このコラムについて

「跡取り娘」の経営戦略

 以前は、長男や娘の婿が家業を継ぐのが常識だった。しかし最近では、娘が自ら家業を継ぐケースが増えている。このコラムでは、こうした「跡取り娘」たちの経営戦略をインタビューする。 女性リーダーのための記事は「NBonline Women at Work」へ。

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