• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

「自由競争」の欺瞞と本性

2008年3月28日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 「自由競争」。この言葉が持つ欺瞞は私が所属している芸能界でも日々感じる。

 「最近テレビが面白くない」はよく聞く言葉だ。莫大な予算の番組がある一方で、低予算番組はそれをまた下請け会社がさらに低い予算で作る。タレントは時価だし出演料が高いから、社員の給与内で支払いが済むアナウンサーを局は最大限利用する。これだけでかなりのコストダウンができる。

 そこに近年新たなコスト削減策として登場したのが“文化人”という枠だ。この“文化人”はアナウンサーより安い出演料で済む。アナウンサーと文化人だけを置いておけば、かなり低予算で番組は仕上がる。

 番組予算の少ない関西は特にだが、最近のニュースバラエティ番組の乱立の背景にはこういう事情があると私は読んでいる。現実に起こる事件はバラエティと刺激に富み、優秀な番組企画者はもはや必要ではない。

 日々起こることを、ああでもない、こうでもない、と、文化人が喋る。そしてアナウンサーが締める。もちろんそういう番組はあっていいのだが、私が感じる欺瞞とは、私自身に降りかかることとしてある。

 最近の私の出演依頼に「文化人として文化人価格で」というのが少なくない。そこには「もはやあなたは立派な文化人。お金を云々するお立場ではない。だからお金をとやかく言わず、低価格で出演するに足る人物である」という、相手の自尊心をくすぐりながら値段を叩くという巧みなロジックが出来上がる。

 そして話をよく聞いてみると、「ついでにせっかくだから、体当たりロケにも出てほしい。あくまで文化人として」というところで相手の本音が読めたりもする。芸やモチベーションはタレントであることを期待し、あくまで文化人だと持ち上げる。

 多くのタレントが抱く、懸命に頑張ればこの世界で成功するかもしれない、という分かりやすいモチベーションは、今では、成功報酬にとらわれず懸命に頑張るべき崇高なあなた、というわけの分からん理屈にすり替わる。

 それは私だけかと思って周りを見渡すと、似た職業があった。
それが医療界だ。

 フェラーリに乗る医師がいる一方、過労死寸前の医師もいる。過疎化した地方への配属を期待されるのも、大学病院での過重労働に見合わない賃金環境を放置されるのも、それは医師が“崇高な”職業だと位置づけされているのが一因だ。

 「だって崇高な職業だもの。当然でしょ?」という眼差しと現実の過酷さについていけず、開業に走る医師も少なくない。

「遙 洋子の「男の勘違い、女のすれ違い」」のバックナンバー

一覧

「「自由競争」の欺瞞と本性」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

富士山を目標にする人はいつか富士山には登れるでしょうが、エベレストには登れない。

澤田 秀雄 エイチ・アイ・エス会長兼社長、ハウステンボス社長