「トップに聞く! 大変革の胸の内」

人事部なんていらない!?

積水化学工業 大久保尚武社長に聞く(前編)

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2008年3月31日(月)

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 人事部なんていらない──。

 そう考えて、実際に人事部をなくしてしまった企業がある。それは、積水化学工業(株価)。ユニット型住宅「セキスイハイム」や住宅建材、高機能プラスチックなどでその名を知られる。同社は2007年1月、人事部を廃止。人材グループをCSR部の中に移した。

 人事部撤廃のほかにも、若手リーダー候補の育成や企業DNAの継承を目的にした「変革塾」、幹部候補生などビジネスリーダーを対象にした「際塾」、新事業を創出する事業化型人材を育てるための「志塾」など、この会社ならではの取り組みを続けている。独自の施策で注目を集める積水化学。その要諦を、大久保尚武社長に聞いた。

(聞き手は川嶋 諭=日経ビジネス オンライン編集長)

――グローバル経済が変調をきたす中、日本企業にも閉塞感のようなものが漂っている気がしています。社長は1999年の就任以来、社内活性化のために様々なアイデアを考え、実行してきました。今日は、その辺りの話を聞かせて下さい。

図版

人材育成に関するユニークな施策を進める大久保尚武社長
(写真:菅野勝男、以下すべて)

大久保 実は昨年、人事部をなくしてしまったんですよ。これは、積水化学60年の歴史の中で初めてのことです。企業の社会的責任(CSR)を果たすCSR部。その中に、人材グループを新たに作った。

 従業員は無数にある会社の中で積水化学を選んでくれた。しかも、従業員の多くは約40年、ここで働く。その会社がハッピーでなければ、それはとんでもないこと。せっかく積水化学を選んだ従業員が、「うっとうしいな」と毎日思って会社に来て、いい仕事をするわけがない。

 格好よすぎる言い方かもしれませんが、従業員は社会からの預かり物。従業員にいい仕事をしてもらうということは、文字通り、企業の社会的責任です。この理念をベースに置きたい。それで、あえて人事部をなくしちゃったんですよ。

――確かに、人事部というのは「管理」というイメージがある。

大久保 勘違いしちゃうんですよ。従業員は、人事部は何かうっとうしい所だと思いがちです。一方、人事部は人事部で人事考課をつけたり、異動させたり、社員を管理することが仕事と思っている。でも、僕に言わせれば、そんなのは仕事ではない。本人の持っている能力や可能性は氷山のようなもの。海の上に出ているのは1割程度でしょう。海の下に潜んでいる9割をどう発揮させるか。そういうことをやろうよ、と言っている。

 社員がみんないい仕事をすれば業績がついてくると僕は思っている。いい仕事とは、従業員がその仕事に惚れ込んで、その意味をきちっと理解して進めていくことです。従業員をそういう方向に持っていくにはどうすればいいか。それを考えると、人事部が異動や人事評価といった人事管理を行うというのはそぐわないんです。それは、人事部ではなくライン長の責任だからです。

 部下の仕事ぶりを知っているのはそのラインの長。ライン長ほど自分の部下のことを知っている人間はいない。訳の分からない人事部がどうこう言っても、本質とは関係がない。ライン長が従業員を育てるという意識をしっかり持って仕事をしていくのが理想でしょう。

重要なのは能力や向き不向きでなく本人の意思

 ただ、そうは言いながらも、会社の中で仕事をしていく上で大切なのはその人の意識です。端的に言うと、与えられて仕事をするのか、自分からしたいと思って仕事をするのか。この意識の差。私はそう考えているので、2000年頃から「手を挙げる人事」を基本に据えました。

――「手を挙げる人事」ですか。

大久保 うちの会社では、本人が手を挙げなければ昇進や異動はできません。僕はね、能力や向き不向きよりも意思がはるかに重要だと思っている。上の人間は、あいつは能力がある、とか分かったようなことを言うけど、そんなものは分からない。大切なのはまず意思です。

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著者プロフィール

篠原 匡(しのはら・ただし)

昭和50年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、日経BP社に入社。以後、主に「日経ビジネス」の記者として活動している。趣味は競艇と出張、庭いじり。著書に『腹八分の資本主義』(新潮社)、『おまんのモノサシ持ちや』(日本経済新聞出版社)がある。



このコラムについて

トップに聞く! 大変革の胸の内

変革の真っ只中にある企業や組織のリーダーに、日経ビジネスオンライン編集長が直撃インタビューを敢行。なぜ変革しなければならないのか、変革の推進力は何か、そして変革を成功させるためのポイントなどを聞き出します。

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