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その仕事、ここが惜しい!

2008年4月11日(金)

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 一見、そのビジネスが乱立しているように見えても、そこにまだ開拓されないビジネスチャンスがあるのを実感させられるのが、昨今流行の“ネイルサロン”だ。

 私は最近ネイルアートを始めた。処置を施してもらう間の2時間、両手を差し出しじっとしていることなど不合理で不可能にも思えた私だった。だがこれがやってみると、2時間を犠牲にしてでも、1カ月もの間、日々の時間の節約ができることに気づくと、やめられなくなった。

 男性諸氏には実感していただきにくいだろうが、普通のマニキュアだと3日ほどで端が欠けはじめる。週2回こまめにはがしたり塗ったりするか、いったん欠け始めたのを放置し崩壊し続ける爪を眺めて暮らす日々か、という選択が待っている。マニキュアが乾くまで指先を使う用事がしにくいこともあり、家で細々動きたい女性にはなかなかこの“塗る”時間をとるのが難しい。

 それを解決してくれたのが、ネイルサロンだ。一度塗ったら美しいまま1カ月持つのだから。そこで現在のようにネイルサロンが乱立した。私は興味本位で毎回異なる店に行くことにしているのだが、これが行ってみると面白い。

 まず、インターネットで調べ「隠れ家ネイル」と表記されたネイルサロンに行った。訪れてみるとそこは一軒家だった。「どうぞ」と通された駐車場はその家のガレージだった。そして家の2階の一室に招かれた。どうも落ち着かない気分で施術が始まった。

 「デザイン見本は?」と聞くと、「それがないんですよねぇ。携帯に写真があるから見ます?」と自分の携帯を差し出した。ちっちゃな画像からデザインを選ぶことにした。

 ズラッと並ぶマニキュアのビンにホコリがかぶっていた。そのホコリを眺めながら私の爪は美しくなった。ネイリストは店舗を構えるライバルたちを羨ましいと語った。廊下を走る子供たちの声が聞こえた。突然ドアが開き「ママ」という子供。「あっち行ってなさい」と叱るネイリスト。独身キャリアウーマンにとって最も苦手な一瞬がそこにあった。

 次はもっと街中のネイルサロンにした。ここはマンションの一室で看板もなかった。中には大勢ネイリストが働いていたが、その圧迫感と密閉感に、なにやらよからぬものを密造しているような錯覚にとらわれた。

 これほど多人数で運営するサロンだから聞いてみた。
「デザイン見本は?」「それがあまりないんですよねぇ」

 仕方がないからまた写真で選んだ。こういった空間を“隠れ家的”というが、働く女性がホッとしに来る空間と位置づければ決してそれは満たされていない。隠れ家=息が詰まる密室、なのだから。

 私は、次は表通りに面したガラス張りで開放感のあるサロンにした。両手を差し出す私の様子を、通りを歩く人たちがジロジロ見た。「客寄せのさらし者じゃないか」と恥ずかしかった。

 だが人に見られる前提だけあって、一見豪華にくつろげる空間だった。私は聞いてみた。

 「デザイン見本はありますか?」
 「それが、この程度なら・・・」

 多少ある見本からデザインを選んだ。さらし者になるのを辛抱すれば、ここなら少しでも見本があるし息も詰まらない、と思ったが、肝心のネイリストの技術は私にはちょっとだけ不満が残るものだった。

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「その仕事、ここが惜しい!」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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