「茂木健一郎の「超一流の仕事脳」」

茂木健一郎の「超一流の仕事脳」

2008年4月22日(火)

圧倒的存在感で部下を引っ張る

〜水産加工船ファクトリーマネージャー 吉田憲一〜

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 今回お話を伺った吉田憲一さんは、ベーリング海で操業する世界最大級の水産加工船のファクトリーマネージャーをされている。国籍もばらばらな120名ものスタッフを率いて、2カ月間、昼夜分かたずスケトウダラなどの加工品を作り続ける。

 さまざまなものを背負って生きてきた吉田さんの圧倒的な存在感を感じた。仕事に対する厳しさ、あくなき探究心。どんな状況であっても必ず課題あり、それを探求していく姿勢。「努力とは何か」と聞いたときに、「常に何かある。それを考え続けているかどうかだ」とおっしゃっていた。

 そうできる人は、なかなかいない。現状がうまく転がっていたら、それで満足してリラックスしてしまうというのが普通なのに、あくなき探究心を持ち続けている。そこにしびれた。

 こうした姿勢を部下にだけ求めるのではなく、むしろ自分にそれを科している。そうでないとリーダーとして説得力が出ない。ああいうリーダーなら、部下も言うことを聞かざるをえない。口だけではなく、自分もやって見せているわけだから。

 吉田さんは、人を評価するということの重大さをよく分かっている。評価のポイントがその人の「人格力」に置かれている。採用の時にも「あいさつがきちんとできるか」「言葉に嘘がないか」という点を重視する。それはなぜかというと、今のスキルがどうかではなく、この先、その人が「どれくらい伸びるか」に重きを置いている。

 また、部下がトラブルで損失を出した時にも、損失そのものではなく、部下の仕事に対する姿勢を見ている。そのトラブルにどう向き合ったかを評価している。これは「良い成果主義」だ。表面的な数字だけの成果主義なんて、誰でもできる。

 真面目に仕事に向き合う気持ちがあるなら、必ず伸びる。そこを見ている。これは経験に裏打ちされた人の評価の仕方だと、リアリティを感じた。僕が「どんな人でも性根を入れ替えることはできますか」と聞いた時に、「ダメなやつはダメでしょう」と吉田さんは答えた。

 きれいごとではなく、現場でずっとやってきた人のリアルなすごみを感じた。一方で、今はダメでも、ちゃんと変われる人もいるということもおっしゃっていた。吉田さんの現場の厳しさが伝わってきた。まさに仕事師たちの集まりで、毎日毎日仕事ばかりの日々を過ごし、それでお金を貯めてまた散っていく、強烈な仕事だ。

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不屈のリーダー、極寒の荒海へ
NHKの番組サイトへ
NHK総合テレビ
4月22日(火)午後10:00〜10:45
・再放送
 総合 毎週火曜 午前1:05〜1:49
     (月曜深夜)
 総合 毎週火曜 4:05〜4:49
 BS2  毎翌週水曜 午後5:15〜5:59
 アメリカの水産業界でその名を轟かすスゴ腕の日本人がいる。全長115メートルという世界最大級の水産加工船を率い、「低気圧の墓場」と呼ばれる冬のベーリング海を舞台に、高品質の水産加工品を生産し続けるファクトリーマネージャー(工場長)・吉田憲一(52)。
 
 この船の作業員は、120人、殆どはフィリピン人やメキシコ人だ。かつては定職に就かず、その日暮らしだった者も少なくない。2ヶ月に及ぶ長い航海の間、彼らのモチベーションを高め、高い作業の質を保つことで、高品質な製品を作らせる。航海ごとの契約で人の移り変わりが激しいこの世界にあって吉田の船では、その7割が契約を繰り返す。吉田は、かつて船内での作業中、左腕を失うという壮絶な事故に見舞われた。そのどん底からはい上がった経験が、吉田を真のリーダーへと成長させた。
 
 番組では、1か月に及ぶベーリング海での航海に同行取材。操業直後、製造部門のナンバー2が倒れ、現場に立てなくなるという事件が勃発した。その後も多発するアクシデント、騒然となる船内、その時、吉田は……。ベーリング海で操業する巨大化工船を舞台に、外国人を率いる吉田のリーダーの流儀に迫る。


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著者プロフィール

茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)

茂木 健一郎

1962年、東京都生まれ。東京大学大学院卒業。「クオリア(感覚質)」を手がかりに、脳と心の謎に挑む新進気鋭の脳科学者。現在、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。


このコラムについて

茂木健一郎の「超一流の仕事脳」

毎回、1つの分野で超一流の仕事をしている人物を追うNHKのテレビ番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」。キャスターを務める脳科学者の茂木健一郎氏が、番組を通じてその人物から受けた刺激をさらに深く考察して語るコラム。

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