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「アラ探しより“面白い探し”のほうがいいじゃん」

マーティ・フリードマン氏(元メガデス・ギタリスト)インタビュー【後編】

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2008年4月21日(月)

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 前編にたくさんのコメントを頂き、ありがとうございました。また、ブログでも深い言及をいくつも頂戴しました。厚く御礼を申し上げます。

 「ジャンルにとらわれないミックスの前提になるのは、ジャンルごとの長い歴史があってこそではないか」というご指摘はその通りかと思います。お読みいただけばおわかりの通り、マーティ氏自身も、ジャンル区分そのものを否定しているわけではまったくありません。

 氏のお話は、「『パクリ』か『オリジナル』かの二元論は、ジャンル全体をつまらなくするだけだ」ということかと個人的には思います。好きなジャンルに深くハマってこそ、ミックスの面白さが生まれる。楽しむ方は、表面の面白さに惹かれるもよし、ジャンルを知っていて深く面白がるもよし。単純なマーケティング主導の薄〜いミックスもあるけれど、それは瞬間ヒット以上に愛されることはないんじゃないか。

 …でも、と音楽の専門家でもなんでもない経済誌編集者としては思うわけです。そうあって欲しいけれど、こんなに評価してくれるJ-POPがあるのに、音楽産業は縮小している。枚数が出ない道を進むことは、ミュージシャンにとっても不幸なことじゃないか?

 さて、お待たせしました後編です。マーティ氏の答えをお読みください。

◆     ◆     ◆

※今週水曜日(4/23)にはマーティ氏自身がJ-POPへのリスペクトを語るイベントもあります。生のマーティ氏はテキスト以上に魅力的です。記事にご興味を覚えられた方は、ぜひご自身の目で耳で触れられることをお勧めします。詳しくは文末を。

※このインタビューは全て日本語で行われました。マーティ氏の発言をできる限り忠実に再現するため、本文中にいくつかくだけた表現がございます。ご容赦下さい。

(聞き手、日経ビジネスオンライン 山中 浩之)

前編から読む)

山中: J-POPの魅力は、ジャンルや単なる上手さに縛られない「面白かったらなんでもあり」の姿勢。それを、リスナー、ミュージシャン双方がとても深く音楽に接していることが支えている…というお話、前編でお聞きしました。特に「ヘタウマの魔法」の話は、たいへん興味深かったです。

マーティ: とにかく、面白さをどんどん「プラス」していくのが、J-POPのすごいところですよ。

―― で、じゃあなんで「ヘタウマの魔法」がこんなにも効くのか、という理由なんですが、ものすごく単純に言うと「下手(に聴こえる)、だから親しみが持ちやすい」という見方がありますね。ファンとの距離を縮める魔法として機能して、それがセールスに結びつくという。マーティさんの本にも、日本は「アーティストとファンの距離がすごく近い」というお話がでてきますけれど、いかがでしょう。

「神様」か、「友達」か?、日米のアーティストとファンの距離

マーティ・フリードマン

マーティ・フリードマン
1990年代、ヘビーメタルバンド、メガデスのメンバーとなりアルバムセールス1300万枚超えの世界的なスーパーバンドへと導いたギタリスト。その後、J-POPに興味を持ち、メガデスを脱退。活動の拠点を東京に移し、ミュージシャンやプロデューサーとして活動している。3月12日にはセルフカバーアルバム「Future Addict」を発売した。
同時に、日本の音楽や日本語の魅力について、外国人やミュージシャンならではの視点で様々なメディアにおいて語っている。「日経エンタテインメント!」の連載「J−POPメタル斬り」も大好評。公式ページはこちら。「nikkei TRENDYnet」での連載はこちら

マーティ: それが作戦だとしたら、超当たってます。だってヘタウマを聴いたら、僕だってできそうじゃんと錯覚しますよね。日本はカラオケが多いから、カラオケでも楽しめるじゃん。だから距離が近くなるのは、セールス上もすごく正しいと思いますね。

―― 反対に、米国のようにとにかく「上手い」人が評価される世界では、自分と距離が離れていれば離れているほど、崇める人が増えて、大きなヒットになる、という感じなのでしょうか。

マーティ: そうですね! でも、そうなると、僕にはまだ分かってないことがあります。何で日本では、アーティストに対しての「親しみ」を、ファンもアーティストも認めているんですかね。

―― たしかに、日本のミュージシャンはライブのMCにしても、すごくサービスしますね。会場がある地方の名産を食べた話からメンバーの恋バナまで。ひいては曲のテーマにしても、同世代感覚というか、ファンは自分の思いをアーティストが、自分のかわりに歌ってくれているような感覚で聴いているような気がしますが。

マーティ: 何でですかね。日本ではどうしてそういう感覚なの?

―― うーん、ひとつは“世間様”に「反抗的な」主義主張を、あんまり個人が言わないお国柄だから、かな。もちろん例外はありますが。

マーティ: アメリカでもね、ある程度はそういうのがあるんですけど、でも向こうではすごく、アーティストとファンの間に壁があるんですよ。楽しさは別として、カッコよさでいえば、僕もそっちの方がカッコいいと思っていますよ。だって、ライブに行くんだったら、ステージの上に、普通の人を見たくないでしょ。アーティストを見たいんだよ。普通じゃない話をしてくれる人を見たい。だけど、日本ではそういう感じじゃないんだよね。だから、なぜ? って感じ。

 だってB'zだって、稲葉(浩志)さんは神様みたいだけど、MCは普通にフレンドリーにしゃべるでしょ。本当に大サービスだよ。向こうでは、B'zほどじゃなくても、ライブハウスに出ているレベルでも、すごくカッコつけます。

 お客さんの方が全然、給料は高いのに、バンドのメンバーの方がカッコつけて、「俺は神様だ!」ってところがあるんですよ。お客さんの前では、俺はアーティスト。下手くそでもね。でも、お客さんの立場ならそれも納得しますね。ある程度は、「おおーっ!」と感じたい。でも日本ではちがう。この違いは、まだ僕が考えなきゃいけないことですね。

―― まったくの素人考えですが、たぶん、日本でも以前はそうだったんじゃないでしょうか。かわいいアイドル歌手にしても、コンサートに行くお客さんは、「手の届かないところで頑張っている子」と感じている、ファンからしたら雲の上の存在だった。そのあと、バンドブームの頃からかな。「君たちの気持と僕の気持ちは同じなんだ」というミュージシャンが増えて、距離が近くなっていった気がします。

マーティ: 面白いね。

音楽が売れすぎた時代があった、それだけなのかもしれない

―― おそらく、その親しみ効果が強烈に効いて、日本では1998年あたりをピークに音楽CDが大量に売れたんです。が、そこから急激に売れなくなってきた。私はそこで新しい曲をろくに聴きもせずに、「それは、曲がつまんないからだろう」とか、シンプルに考えていたわけです。

 ところが、マーティさんの本を読むとそんなことはないと分かるし、実際買って聴いてみたら、確かに面白い曲がたくさんある。名前も知らなかったAll Japan Goith、GReeeeN、改めて聞き直したら宇多田ヒカルもすごくいい。ニコ動で知ったPerfumeは音楽だけでもすばらしいし、MEGも魅力的。遅まきながら40代にも刺さる曲をいっぱい知りました。

 では、なぜそんなに本当は面白いのに、CDの売り上げが伸びないのか。いいものを作っているのに、セールスに結び付かないというのは、今の経済の中で音楽業界に限らず、おそらくは多くの日本人が感じていることなんですよ。「こんなにいいものを作っているのに、売り上げにつながらない」と。

マーティ: …僕は経済的なことはわからないけど、音楽のスタイルや曲の善し悪しとはあんまり関係ないレベルの、大きな波があって、それが下り坂にはいっているのかもしれない。だから、「真面目に」いい曲を作っていれば、また上り坂が来るんじゃないかな。それに、その98年前後の数字がイレギュラーで、売れすぎたんだ、という考え方だって、あるよね。

―― なるほど。言われてみれば、その前の状態に戻っただけでもありますね。例えばヘタウマもマーティさんが言う「魔法」じゃなくて、「とにかく聞き手との距離を縮めれば売れる」という、売るためのテクニックとしてみんながそれを使って、バブル化した。その反動が今なのだ、とか。

マーティ: たぶん5年前ぐらいから、今ならたとえばiPod touchみたいなインターネット関係の面白い機械や仕組みがいっぱい増えてきて、そっちにお金を使ってるんじゃないかな。みんながそういうのを持つようになって、インフラが整ったら、そこで楽しむ音楽に興味が戻ってくるはずじゃん。そうなったら、また音楽のセールスが増えると思いますね。

―― 「98年よもういちど」という発想だと、今は悲劇的に見えるけれど、あちらのほうが異常だという考え方もできる。でも、個人的にもうひとつ気になっていることがあります。

 阿久悠という、昨年亡くなった作詞家は、「自分は『世の中の人全員に向けて歌詞を書きたい』と思っていたし、作曲家も歌手もそう思っていた、そういう時代があった」と語っています。それが、ファンとアーティストの距離が近くなる、つまり「分かる人、分かる世代にだけ分かればいい」という考え方の曲が増えてきて、分からない人にはまったく届かなくなる。この結果、売れる曲のボリュームは小さくなっていく、というわけです。

 阿久悠さんの黄金時代に10代を過ごした自分には、ものすごく納得できるのですけど、マーティさんはどう思いますか。

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● サイン会案内

マーティ・フリードマン+SHELLY
トークショー&サイン会、大盛況でした!

単行本発売を記念したイベントが行われました。マーティ本人がJ-POP愛を熱く語るトークショーのほか、本を買っていただいた皆さんにはサイン&握手、さらにプレゼントまでつく豪華版です。さらに、トークショーのお相手として、伝説の深夜番組「Rock Fujiyama」で共演していた元気娘・SHELLYの参加も決定。奮ってご参加くださり、本当にありがとうございました!

【マーティ・フリードマン トークショー&サイン会】

4月23日(水)20時より
TSUTAYA TOKYO ROPPONGI(東京・六本木)にて

問い合わせは、電話03-5775-1515(TSUTAYA TOKYO ROPPONGI)

イベントの詳細はこちらをご覧ください

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著者プロフィール

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス、日経クリック、日経パソコン編集を経て、2006年2月から日経ビジネスオンライン副編集長、編集委員を務めた後、2010年4月から日経ビジネスアソシエ副編集長。ツィッターはこちら



このコラムについて

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 「ユーザーの顔が見えない」と言われる中で、自分自身の思い入れを武器に成果を上げている人々がいる。いわく言い難い個人の熱意(X)を、ビジネスとして組み立て、市場にいる買い手に思いの丈を伝える(EXPRESS)工夫を、本人へのインタビューを中心に、所属する組織や、市場規模の大小に関わらず紹介する。

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