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「アラ探しより“面白い探し”のほうがいいじゃん」

マーティ・フリードマン氏(元メガデス・ギタリスト)インタビュー【後編】

2008年4月21日(月)

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マーティ: うん、僕の考えですが、たぶん本当のミュージシャンは、「何人聴いてくれるか」ということは考えてないと思いますね。そういうことを考えるのは、僕に言わせればアマチュア。

―― ということは、ああ、「売れるなら、やるよ」というのはマーティさんには「アマチュア」、自分のやりたいことが売れるまで手練手管でその世界に生き残り続けられる人が、プロなんだ。

マーティ: アマチュアは、流行ってる音楽を分析してコピーするとか、どうやってたくさんの人に聴いてもらえるか、すごく企画しているかもしれないけど。でも本当のミュージシャンは、たぶん完全に、自分の心から出てきた音楽を作っているから。「ついてきてくれるファンがいればいい。いなくてもしょうがない」っていう。自分に正直でないと、音楽はつくれないから。

 僕の個人的な音楽のセンスだって、ひょっとしたらマニアックかもしれない。僕はそういうコントロールはあんまりできないんですよ。たぶんほとんどのミュージシャンも、同じじゃないかな。もちろんレコード会社とかは、当然、流行ってる曲みたいな音楽を作ってくださいとか、絶対言うと思う。でもそういったことも含めて、結局そのアーティストの本当の音楽は、自分の心から出ていると思います。ごめんね、こういう話だと経済に詳しい人は納得しないかな。

―― いえ、阿久悠さんだってご自分の仕事に「マニアックさ」「狂気」という言葉をよく使っていたように記憶してます。届くか、売れるかどうかのコアに、マニアックさ、本当の気持ちがあるのはお二人に共通しているんじゃないでしょうか。マーティさんのお話で、「距離が近くなって、市場が狭くなる」ということを、売り上げにつながらないじゃないか、と、簡単に否定しちゃいけないと思えてきました。

鈴木亜美のバックバンドはヘビメタ軍団!?

―― 「パクリ」にしても、ミュージシャンの本当の気持ちのところで、「だってこの音楽が好きだから」という思いがベースにあって、「レゲエとヒップホップとロックを混ぜたっていいじゃないか」という自由な発想を許す、そこから「面白い」J-POPが生まれてくるわけですね。

マーティ: そうですよ。たとえばいくらポップといっても、作っているスタッフたちはかなりのヘビメタファンだったりするんですよ。

 僕が、それに超気付いたのは、鈴木亜美ちゃんのツアーをやった時。僕は亜美ちゃんのファンなんだけど、彼女は、全然ハードロックとかヘビメタのイメージないでしょう? でも現場に入ったら、スタッフが100%、みんな僕の曲を知っていたし、前のメガデスの曲も聞いてた。しかも「マーティさん、ライブでも弾きまくってください。もう、ゴリゴリで」って言うんだよ。ということは、こっそりメタラーはいっぱいいるね。

―― なるほど。J-POPは何をやっても面白ければOKだから、自分の音楽性も生かしつつ、鈴木亜美ちゃんをそれに乗っけるということができる“可能性がある”場所なんだ。

マーティ: だって洋楽で、亜美ちゃんみたいなアーティストにそんなことやったら、絶対「ふざけるな!」って言われる。かわいい女の子のボーカルで、バラードやポップ、ダンスミュージックみたいなところに、思いっ切りガツンと弾くギターなんかいらないでしょ。でもゴリゴリでお願いします!って言うから「マジで? じゃあ……やっちゃうよ」って。

―― やっちゃいましたか。

マーティ: ヘビメタファンが多いせいなのか、アイドルのポップの中にも、必ずギターの部分が入っているんですよ。最初に聴いたときはすごく不思議だったんだけど、J-POPでは、昔からあったんですよ。

―― 本の中にも書かれてましたね。三原順子のくだりですね。

マーティ: 三原順子の曲も、耳が釘付けになったけど、ポップにこんなにギターが入ってるのは向こうではあり得ないから、ほんとに不思議だった。

 それをよーく考えたんだけど、日本ではいろいろな曲をたくさん聞いてるからかもしれない。タモリ倶楽部の「空耳アワー」を見てると、洋楽といっても日本人が聴いてる洋楽は、英語の音楽だけじゃなくて、ケニアとか、エジプトとか、ラテンとか、ほんとによく聴いているね、この人たち。

―― いや、あれは、かなり極端な人たちだと思いますけど、そういう人が「空耳アワー」に投稿することで、こういう曲もあるんだと認知は広がるわけですね。

マーティ: だから、より深く音楽を楽しめる。だから、J-POPはこんなにリッチで、味が深い。一般の人たちだってそんなに聴いているということは、ミュージシャンだったらより深く、より変な組み合わせを聴いていると思う。だから本当に、いろんな可能性が持てるんだと思いますね。

NYより、日本のラジオ局のほうが面白いよ!

―― ところで、やっぱり一度音楽から離れてしまうと、「新しい、今の曲」に触れる場所がわからなくなる。これが問題だと思うんです。これからJ-POPを聴こうと思ったら、どんな番組やラジオを聞けば、面白そうな曲が見つかりますか。もちろん、マーティさんのラジオ番組や、日経エンタテインメント!、連動でのウェブ連載(マーティ・フリードマンのJ-POPメタル斬り/延長戦)を読めばいいんだけど。

マーティ: それがたぶん一番ですけど(笑)、やっぱりラジオはいろんな音楽が聴けるね。日本のラジオは全体的に幅広いです。J-POPも流れつつ、マニアックなテクノ系や、アバンギャルドなジャズ系とか。あまりお昼には流れなさそうな音楽を、普通に流してるじゃないですか。向こうだったら、変なトランス系とか、アバンギャルドで抽象的な音楽は、流れたとしても、知られてないラジオ局で夜中の3時ぐらいしか。

―― 夜中の3時って妙にリアルだな。でも、日本と米国のラジオ局の違いもよく言われることなんですよね。「日本には数局しかないのに、米国は、それぞれのジャンルごとに細かく専門のラジオ局があって、24時間自分の好きな音楽が無料で聴ける。すばらしい。やっぱり音楽先進国だ」って。

マーティ: それで、ミュージシャンはその狭い専門ジャンルから一歩も出ないでお互いパクリあったりしているんだよ。じゃあアメリカのメジャーなラジオはどうか、というと、王道のポップス、セリーヌ・ディオン、マライア・キャリー、ラップ系ぐらいしか流れない。

 でも日本のラジオ番組なら、1時間も聴いていればロックもJ-POPもジャズも聴ける。ラテンやダンスミュージックだって聴ける。好きなジャンルじゃなくても、次々流れるから飽きない。だから、ラジオを聞いてれば、いい曲が見つけられると思うよ。

―― なるほど。でもヘビーローテーションとDJの長い長いおしゃべりが、中年にはちょっと辛いんだけどなあ。

普通のリスナーの耳は、結局は正しいと思う

高市: 私もマーティさんの本を読んでものすごく共感するんですが、ちょっとよろしいでしょうか(と、同席していた別編集部の音楽マニアがガマンできずに身を乗り出してきた)。

 この本のPART2の「マーティが選ぶJ-POP極私的TOP40」を読んで、もうひとつ聞きたいことがあるんです。このランキングって、日本の音楽雑誌が絶賛するアーティストは、あんまり入ってませんよね。

マーティ: あえてはずしたわけじゃないけど、僕のランキングは、音楽ライターの意見とは異なるんです。日本の音楽ライターについては分からないけど、僕、アメリカの音楽ライターの意見は大嫌いなんです。

 この本では、僕は完全に一般の人の耳で聴いている。僕の好きな曲も、全部一般の人が聞く曲だから、だから、専門家の批評とは意見が違う。

 音楽雑誌のライターの意見は、基本的に、実際に音楽を買うファンとはちょっとちがうでしょう。「みんな浜崎(あゆみ)が好き」というのは、いいものの証拠じゃん。でもたいていの批評家は、トレンディーで格好をつけて、もっとマイナーなものを「いい」と言う。僕は完全に一般の人の聴き方で楽しんでるから。

 それに、アメリカの音楽ライターは、ミュージシャンになりたかった人が多いと思います。日本の状況は分からないけど、洋楽シーンでは、そういう人ってかなり苦い人、ビターな人になります。

―― 売れる曲の良さを見つけるんじゃなくて、自分が上に立つために批判する…

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「「アラ探しより“面白い探し”のほうがいいじゃん」」の著者

山中 浩之

山中 浩之(やまなか・ひろゆき)

日経ビジネス副編集長

ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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