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「嫌になることもあるけれど、ここで倒れるわけにはいきません」

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2008年4月23日(水)

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 あのメール以来、田嶋萌(仮名)さんからの連絡はない。

 3月末までは、彼女は毎日のようにメールをくれていた。それが4月になったとたんに途切れがちになった。

 就職協定による内定解禁日は10月1日だ。ただ、この協定はあくまで「紳士協定」であり、実質的な拘束力はない。4月1日以前に出される内定は「内々内定」、4月1日以降に出される内定は「内々定」と呼ばれ、正式内定が出る10月までには、ほとんどの学生の進路が決まっている。

 一刻も早く優秀な学生を囲い込んでおきたい企業は、早々に「内々内定」「内々定」を出す。以前に比べて就職活動の時期が早まっているのには、こうした背景がある。4月ともなれば、学生へ届く「不採用通知」もぐんとその数が増えていく。

 田嶋さんのパソコンにも、3月末頃から何通かの不採用通知メールが届いていた。

○○○○ 人事部 採用グループです。

 先日はお忙しい中、「WEB診断」にご回答いただき、誠にありがとうございました。

 回答内容から、田嶋萌さんと当社の仕事の性質との適正を慎重に検討いたしました結果、大変残念ながら、ご希望に沿うことが出来ない結果となりましたことをお伝えいたします。

 何卒ご容赦くださいますようお願いいたします。

 ご連絡が遅くなったことをお詫びするとともに、ご応募いただいたことをあらためて深く感謝いたします。 田嶋さんの今後のご活躍、ご健勝を心よりお祈り申し上げます。

○○○○ 人事部 採用グループ

 田嶋萌さん こんにちは。 ○○○○ 採用グループです。

 先日は、WEB適正検査を受検いただき、ありがとうございました。

 さて、適正検査の結果を慎重に検討致しましたが、誠に残念ながら貴意に添いかねる事となりました。

 折角ご応募頂いたにも関わらず、誠に心苦しい限りですが、悪しからずご了承下さいますようお願い申し上げます。

 最後になりましたが、田嶋萌さんの今後の就職活動、および学生生活が有意義なものになりますよう、お祈りしております。身体に気をつけて、頑張って下さい。

 名前の部分を差し替えれば、誰にでも使える汎用の定型メールを、企業は何の疑いもなく学生たちに「不採用通知」として送る。

 ネット上で実施される適性検査のみで落とされる。さらに不採用の理由が「残念ながらご希望に沿いかねます」だけ。どうして不採用になったのか、その理由もわからない。クレジットカードの申し込みをして、審査に通らなかった時と同じような文面が学生に届けられる。

 あまりにも機械的。まったく血の通わない不採用の知らせを見て、学生は茫然とするばかりだ。ある学生は言った。「説明会に行くこともできず、1度も会うこともなく、インターネットの上で落とされる。面接で落とされるのならまだしも、会ってもいないのに、私の何がわかったというのだろう」。

 膨大な労力を費やした日々が、たった1通の汎用メールで水の泡と化していく。もちろん、学生たちも不採用になるかもしれないことはわかっている。覚悟していないわけがない。

 でも、落とされるにしても納得はしたい。なぜ、不採用になったのか。私の何がいけなかったのか。その理由がわからなければ、これから自分自身をどうしたらいいのか、わからない。前へと進んでいけない。

 企業の人事も忙しい。不採用になった学生をフォローすることが人事の仕事ではなく、会社に有益な人材を採用することが人事の仕事だということも理解している。けれど、もう少しだけ、ほんのわずかでもいい。学生の側に立った対応をすることはできないのだろうか。

 「社会とは、そういうところなんだから」。確かに社会には、厳しい現実が至るところに転がっている。社会に出れば、嫌でもそれらと向き合うことになる。

 ただ、厳しさを受け入れるには納得がいる。それは、大人も子どもも同じだ。自分は頑張ってきたつもりなのに、理由もわからないまま1通のメールのみで左遷や降格させられたら、誰もがその理由を聞きたいと思うのではないか。

 一人ひとりに不採用の理由を伝えるのは、マンパワー的に無理なのもかわる。ならば、少しでも具体的な不採用の根拠を学生たちに示すことはできないか。適正検査や能力試験の合格基準を数値化・グラフ化し、「基準に達していなかった部分」を明確にするなど……学生たちに「納得」できる材料を用意できなければ、戸惑う学生たちが増えるばかりだ。

 田嶋さんは、つい先日まで、こんなメールをくれていた。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長