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「他の企業の内定者に声を掛けませんか」

  • 双里 大介

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2008年5月21日(水)

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 5月も終わりに近づき、初々しいリクルートスーツ姿の学生を見かけることも、以前よりは少なくなってきた。

 春先には、就職活動中の学生が集団で合同会社説明会へと向かう光景をよく目にした。今、就職活動だろうと思われる学生を見かけても、たいていが一人で歩いている。初夏の陽射しが強くなっていくにつれて、内定が決まった人と、決まっていない人、そのコントラストも一層強くなっていく。

 就職活動も折り返し地点を過ぎた。就職が決まらない学生がいるのと同じように、新卒学生をなかなか確保できない企業もある。

 菅野正道(仮名)は、流通系企業で人事副部長を任されている。今年の新卒採用目標は約60人。しかし、5月も終わろうかとしているこの段階で、まだ5名にしか内定を出せていない。

 苦戦が続いている足元に、いつもまとわりついてくるのが就職ビジネスだ。つい先日も、菅野はこんな電話を受け取った。

「他の企業の内定者に声を掛けませんか」

 学生の中には、複数の企業から内定を得ている学生もいれば、内定をもらっても“本当にこの会社でいいのか”とまだ決めきれずにいる学生もいる。そうした不安を抱く学生に声を掛け「引き抜こう」という誘いの電話だった。10年以上採用担当をやってきたが、こんな提案は初めてだ。ここまでやるようになったのか。

 ふざけるな、と思った。他の企業の内定者を奪うことを、当然のように勧める現実に、腹立たしさを越えて恐怖さえ感じた。常に不安を煽り続け、学生と企業を振り回すだけ振り回す。もちろん、自分たちも就職ビジネスの助けを借りている部分は大きい。でも、一線を越えてしまっている部分があるのではないかと、菅野には思えてならない。

「大人として、それをやっちゃいかんだろう」

 思わず口をついて出てきそうになった言葉を呑み込み、うちは大丈夫ですからと、菅野は静かに受話器を置いた。

*    *    *

 昨年の秋、就職活動を始めたばかりだった藤田慎司(仮名)くんは、筆者にこんなメールをくれた。

DATE:2007/11/27(水) 00:01

今日は、大規模な合同会社説明会に行ってきました。朝は早めにホテルを出て電車に乗ったのですが、もう同じイベントに行く就活生で満員電車になっていました。あまりの人数にビックリです。

自分としては早く会場入りして、希望していた○○○○という企業の説明会の整理券を取ろうしたんですが間に合わず……これからは、もっと早めに行こうと決心しました。

ただ、ひとつ魅力的な企業も見つかりました。○○○○というあまり知られていない会社なのですが、なぜ魅力を感じたかというと、まず配付資料の華やかさがあります。海外の雑誌のような感じでした。

社長も若く、説明会でのプレゼンが非常にユニークだったことも印象に残りました。例えば、会社説明のスライドを上映している途中で笑いを入れたり……一見なにを考えているんだと思いましたが、効果は絶大なようで、大手企業でもないのにブースは大盛況でした。

エントリーしてみたい企業も見つかり、今回の合同会社説明会は、それなりの収穫がありました。

 現在の就職活動では、合同会社説明会(通称“合説(ゴウセツ)”)は避けて通ることのできないイベントだ。学生にとっては1度に多くの企業情報を集めることでき、企業にとっても大勢の学生に対して効率的にアプローチすることができる。

 60名以上の決して少なくない数の学生を確保しなければならない菅野にとっても、合同会社説明会の場は魅力的に映った。だから3年前、1度だけ合同会社説明会にブースを出した。主催者側の営業担当者は「100人は集められます」と豪語した。でも、納得いく成果を得ることはできなかった。ブースに足を運んでくれた学生は20人足らずだった。

 学生は大手企業の整理券に殺到し、配布資料の華やかさに目を奪われてしまう。まだ社会を経験していないのだから、仕方がないことなのかもしれない。だからこそ、まだ社会のことがわからず、企業や仕事に関する知識が不十分な学生のために会社説明会があるはずだ。

 そこは、会社説明会といういうよりも、巨大な広告空間だった。お金を掛けた企業がブースのもっとも目立つ場所を陣取り、華やかに飾り付けをし、目新しい仕掛けを施した企業に学生が群がる。「学生とまともな話し合いができる場ではない」。それ以降、菅野は合同会社説明会への参加を取り止めることにした。

 合同会社説明会に参加しないことは、デメリットも小さくない。学生に認知されるまでに時間が掛かり、説明会に参加しない企業は「採用意欲があまり高くない」と学生に偏見を持たれることにもなりかねない。

コメント16件コメント/レビュー

採用担当者のエピソードに感動しました。確かに、不器用な部分があるかもしれませんが。私も就職活動中(と言っても、それほどしていないのですが)、イベントがかった、誰もが同じように流されていく状況に違和感を抱いており、今後の生活がかかっているというのに、どこか斜に構えていました。でも、大企業志向。でも、それほど活動していない。努力不足。でも、プライドは高くて、落ちたら絶望。ストレスで体調不良、精神不安定。今から思えば、自分の幼稚さが笑えます。結局、民間企業には就職せず、もとは嫌がっていた分野に進むことにしましたが、今ではまあ、満足しています。自分の道とは、そんな風にみつかるものなんでしょうかね。シューカツは、かたやイベント化、商業化している。その反面、人生の大きな岐路であり、少しでも軌道をはずれると路頭に迷うかのようなプレッシャーがかかる。自分の人生を総ざらいしましょうなんていわれる、自己分析がいい例です。(私は自己分析という言葉が大嫌いでした)そんな風に相反する要素が絡み合って、多くの矛盾をはらんでいるのが最近の就職活動の実情だと思います。一部の学生は違和感を抱えながら飲み込まれていく、飲み込まれざるを得ないのでは。「学校を出たら働くもんだ」そう思って、とりあえずでも一歩を踏み出す。そこでまた、勉強が必要と思うなら、働きながらでもすればいい。違う仕事がしたいんだと思うなら、頑張ってその道を探して、向かう努力をする。そんな感覚で、もっと前向きに軽やかに、社会への一歩を踏み出せたらと思います。働き始めた今、そう思います。もっと積極的に、もっと早く一歩を踏み出してみればよかったかなと(惰性で院に進学したので)。虚飾にまみれたあまりにも重い一歩。それが最近のシューカツであり、その一歩のプレッシャーが、ひきこもりやワーキングプア、3年3割の問題にもつながっていくのではないでしょうか。(2008/06/07)

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採用担当者のエピソードに感動しました。確かに、不器用な部分があるかもしれませんが。私も就職活動中(と言っても、それほどしていないのですが)、イベントがかった、誰もが同じように流されていく状況に違和感を抱いており、今後の生活がかかっているというのに、どこか斜に構えていました。でも、大企業志向。でも、それほど活動していない。努力不足。でも、プライドは高くて、落ちたら絶望。ストレスで体調不良、精神不安定。今から思えば、自分の幼稚さが笑えます。結局、民間企業には就職せず、もとは嫌がっていた分野に進むことにしましたが、今ではまあ、満足しています。自分の道とは、そんな風にみつかるものなんでしょうかね。シューカツは、かたやイベント化、商業化している。その反面、人生の大きな岐路であり、少しでも軌道をはずれると路頭に迷うかのようなプレッシャーがかかる。自分の人生を総ざらいしましょうなんていわれる、自己分析がいい例です。(私は自己分析という言葉が大嫌いでした)そんな風に相反する要素が絡み合って、多くの矛盾をはらんでいるのが最近の就職活動の実情だと思います。一部の学生は違和感を抱えながら飲み込まれていく、飲み込まれざるを得ないのでは。「学校を出たら働くもんだ」そう思って、とりあえずでも一歩を踏み出す。そこでまた、勉強が必要と思うなら、働きながらでもすればいい。違う仕事がしたいんだと思うなら、頑張ってその道を探して、向かう努力をする。そんな感覚で、もっと前向きに軽やかに、社会への一歩を踏み出せたらと思います。働き始めた今、そう思います。もっと積極的に、もっと早く一歩を踏み出してみればよかったかなと(惰性で院に進学したので)。虚飾にまみれたあまりにも重い一歩。それが最近のシューカツであり、その一歩のプレッシャーが、ひきこもりやワーキングプア、3年3割の問題にもつながっていくのではないでしょうか。(2008/06/07)

大学の理工系学部 教員です今回の記事で,「まとわりついてくる就職ビジネス」という表現がありましたが,そのようなビジネスがあることに対して学生や教員の認識が未だ弱いように感じます.また企業や一部大学がそれに踊らされてカモにされている部分も否定できません.もっとも合同説明会を全面否定して,出展しないという選択は非合理です.学生にとって,コンシューマ対象でない企業や小企業を知る唯一のチャンスですから.文字主体の真摯なパンフを配布するだけでも,大きなブース,派手なパンフの中では,心ある学生に企業を知ってもらうことは出来るはずです.以下は,基本的に別の記事へのコメントの再掲です.今回の記事に対しての方がより良く整合しているので再度投稿させていただきます.卒業年の前年秋からセミナ等の就職活動が開始されています.大学院の場合,まだテーマ模索中の修士1年の秋から2年の初夏まで就職に学生が追われています.それどころか1年5月(つまり入学後1ヶ月)で,すでに就職サイトがオープンし,学生の就職気分をあおっています.大学院での教育・研究は,半壊滅です.春休み,夏休みの研究の書き入れ時にも就職活動のためキャンパスに大学院生が不在.また博士課程進学を考える前に就職活動が始まるため,博士課程は海外で修士をとった外国人だけになりつつあります.博士修了者の需要が大きく就職も引く手あまたの分野でも,博士進学する日本人が大幅に減っています.専門性が高まり,Dr.であることが前提の国際的プロの社会で,日本人だけがMr.Ms.でありプレゼンスが低下しています.就職活動長期化による大学教育の低下は,ボディーブローのように,日本の産業界に効いてくるものと確信します.就職が前倒しになっているのは,少子化に対応してリクルート関連会社が,企業と学生の不安をあおって,多重受験と長期就職活動を推進していることが大きな原因です.(2008/05/30)

新卒という「若い娘」に群がる合コンのごとくと思います。ちょっとキジからは馴れますが、採用する側として、ここまで新卒に無駄金かけてどうするんでしょうか。新卒採用の無駄なコストを省いて今いる社員に分配した方がよっぽど生産性が上がると思います。新卒作用の理由はあるでしょう、組織の維持とか。「なぜ新卒が必要なのか」という考えがないから、見た目ばかり派手になって訴求力がない求人しかできないのでは、と思います。今思うと学生時代に2年か3年の頃から小さな会社を地道に足で回って企業の選別眼を養っていたらと思います。(2008/05/22)

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