この連載では「情報の環境問題」をキーワードにCSR(企業の社会的責任)の問題を考えているわけですが、情報環境問題が破壊的な影響を及ぼした例として、ファシズムのメディア統制やとりわけ大虐殺、つまり「ジェノサイド」を挙げることができます。
20世紀に入って、人類は少なく見積もっても4回、100万人規模の人間集団を地上から根絶やしにする「ジェノサイド」を引き起こしました。第1はオスマン帝国によるアルメニア人大虐殺(1915〜16)、第2はナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺とスターリン時代のソ連による大虐殺(1941〜45〜…)、第3はクメール・ルージュによるカンボジアでの大虐殺政策(1975〜79)、そして第4はルワンダ大虐殺(1959〜94)です。
ナチスやスターリニズムは既に過去の歴史となって久しいですが、ルワンダのケースはごく最近起こったことです。実はいまだ裁判も終わっておらず、大虐殺については当事者から話を聞くことができます。幸いルワンダ共和国政府から招聘をいただき、3年ほど準備して、キガリ出張が実現しましたので、これから数回ルワンダからリポートをお届けしたいと思います。
ジェノサイドは「非常時」に起きる
先に挙げた「大虐殺」は例外なく「戦時」つまり「非常時」とされるときに起こっています。
賑わう首都キガリ市内(2008年5月22日)。紛争終結から14年。復興が進み、新たな大規模建築物も数多く建てられ始めている
人は「今は生きるか死ぬか、というところなんだから、ほかのことなんか構っていられない、殺すか殺されるかなんだから、手段など選んでいられない」と短絡するとき、後から振り返ると信じ難いことを、淡々と実行してしまう。
上記のジェノサイドはすべて「非常時だからやむを得ない」といった理由のない理由で、平時から存在していた社会対立に「最終的解決」をもたらそうと人為的に導入された大量殺人であることが共通しています。
このうち、ナチス・ドイツ+ソ連、ならびにルワンダのケースに顕著なのは、それがマスメディアによって増幅されたことです。第1次大戦中のトルコや1970年代のカンボジアに関しては正確なところがわからないのですが、少なくともナチスのホロコーストとスターリニズム、そしてルワンダに関しては、ラジオなどの公共放送から新聞雑誌など、ありとあらゆるメディアを通じて、「最終解決」の政策が国の方針として周知されました。
またそこでは音楽放送を含む様々なメディア・マインドコントロールの手法が使われたわけです。
日本車も数多く見かける。ただしほとんどが中古車で、闇ルートから解体された車(盗難車?)などが輸入されることもあるらしい。ちなみにルワンダ国内では日本円を両替することはできなかった。理由は「誰も見たことがないので本物かどうか分からないし、ここでは誰も使えないから、両替などできない」(銀行の窓口担当者)
私はかれこれ25年ほど、こうした音楽や放送と感情のコントロールの問題と向き合っています。やっている事は、基礎的な生理測定から作品の作曲や演奏までいろいろですが、中心となる問題意識は実は1つで、これを追う中で「オウム真理教」のメディア・マインドコントロールから「オレオレ詐欺」まで、様々な事例と出合いました。
中でも「ルワンダ大虐殺」に関しては、私がこの問題を追っている最中の1994年に発生したものでした。マスメディアの果たした役割や責任が極めて重い。
そこで今回は、まず基本的なところから、ルワンダの問題を整理しておきたいと思います。日本語の活字になるのは初めての内容も含まれていますが、直接のヒアリングに基づくものです。
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