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「差別と断罪」から「和解と補償」へ

ルワンダで自走した「数値目標」(CSR解体新書44)

2008年6月3日(火)

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 佐々木和之さん一家がルワンダで暮らすようになって3年目になります。鹿児島大学で農学を学んだ佐々木さんは、初め国際飢餓対策機構からエチオピアに派遣され、8年にわたって植林・土壌保全と農業改良に取り組みました。この後佐々木さんはコーネル大学で農村開発の修士号を取得、2000年にルワンダを初めて訪問して虐殺の事実と直面します。

 ルワンダの状況を目の前にした佐々木さんは、同年からブラッドフォード大学大学院博士課程に籍を置いて平和構築のフィールドワークを開始します。さらに2005年から日本バプテスト連盟国際ミッションボランティアとして、ルワンダの人々の癒やしと和解を目的にする、現地の教派を超えたキリスト教者によるNPO(非営利組織)「REACH」(Reconciliation Evangelism And Christian Healing for Rwanda)の主要メンバーとしての活動を始めました。佐々木さんの仕事に関しては、どうかこちらをご参照下さい。

「断罪と処刑」でなく「和解と補償」

 オウム真理教などの破壊的カルトからの奪還者を支援する活動をしておられる黒川文雄さんのご紹介で、昨年の秋、私は佐々木さんと知り合うことができました。1965年生まれの佐々木さんは私と同い年ですが、エチオピアでもルワンダでも、腰を据えた本質的な活動を一貫して継続しておられ、頭が下がるばかりです。奥さんと3人の子どもたちに犬と猫が1匹ずつ、今は子犬をもう2匹とケニアの金魚を人から預かっておられますが、そんな一家5人と数匹で、キガリで生活しています。

写真1

困難な課題に取り組む佐々木さんの日常は、同時に膨大な日常業務との戦いでもある。多忙を極める中、とてつもないトラウマを抱える人々と対峙するには、大変な精神力が必要だ

 佐々木さんたちが進めている活動を端的に示すキーワードは「修復的正義」Restorative justice です。長年の対立と内戦、そして虐殺によって生まれてしまった心の傷を癒やし、フツとツチの人々の間に赦しと和解を実現しようという、気の遠くなるような大課題に、REACHの人々は正面から取り組んでいるのです。

 家族を殺され、自分自身も殺害されかかったという人が、直接手を下した実行犯やその家族と再び手を携えること。
 
 日本でも死刑を巡る議論はいろいろ交わされていますが、ルワンダでは加害者と被害者とが直接手を携え合い、抱き合って涙を流して和解する方途が現実に求められています。

 たった100日の間に80万人とも130万人とも言われる人々が、同じ国民自身の手によって、主としてナタなどを凶器として殺害された1994年のルワンダ大虐殺。正確な数字は算出不可能と言われますが、虐殺や略奪に加担した人間は200万人近く、つまりルワンダ国民の4分の1に及ぶと言われます。

 政府の統計によれば、殺人現場を目撃したことがある人が国民の85%、破壊的暴行を目撃したことがある人は99%以上に上り、この国がとてつもないトラウマを負っていることが分かります。

 ルワンダでは、ジェノサイドに関しても、また一般犯罪についても、死刑の制度は廃止されています。これだけ人々が殺し合ってしまった後、さらに同じ「人種」差別に基づく「断罪」と「処刑」を繰り返すのが、いかに空しいことか、多くの国民が痛感しているのです。失われた命の代償として相手の命を奪うのではなく、どのようにして和解を成り立たせ、現実的な補償を通じて国を再建してゆくか。それが問われているのです。

忘れたクレジットカードを届けてくれる人々

 200万人の人が虐殺や暴行に加担したというと、どういう荒んだ国かと思われるかもしれません。しかし国民の25%近くが暴行に加わったという事実は、逆に言えば国民の75%は虐殺加害者ではない、つまり大半の人が被害者であるか、あるいは局外に立とうとしたという事実が浮かび上がってくるでしょう。

 ルワンダはアフリカで最も治安の良い国、キガリはサブ・サハラ地域で一番安全な都市だと言われます。駐日大使からそう聞きましたが、実際に来るまでは、私自身それを信じることができませんでした。

写真2

マナーの良いキガリ市内のオートバイタクシーライダーたち。ただし安全運転の一因は、交通警官が随所に立っているからだとも。どこかの国と似た感覚

 ところが、現実のキガリ市内や郊外の農村部は、明らかにナイロビなどと全然違う。まず交通からして穏やかなのです。近隣諸国と比べても、ドライバーのマナーが全然良い。市場も穏健な雰囲気で、生き馬の目を抜くような激しさがほとんどありません。とても賑やかなのですが、平和な空気です。スリなどの物取りは決して少なくないそうですが、強盗や殺人などは他のアフリカとは比べ物にならないほど少ないという。

 私がそれを痛感したのは、昨日本屋に買い物に行った時でした。支払いのために渡したクレジットカードをうっかり忘れてきた私自身、先進国ボケの最たるものですが、なんとそのクレジットカードを、次に私が立ち寄った電気店まで、走って届けに来てくれたのです。 もしそのまま無くしていれば、今頃はホテルの支払いにも窮し、利用停止やら再発行やらで、原稿を打つ余裕はありませんでした。まったく冷や汗ものです。

 「ルワンダはアフリカとは思えないほど安全」と、多くの人から聞いていましたが、強く実感した次第です。

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