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「ぽっかりと穴があいているんです」

  • 双里 大介

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2008年6月5日(木)

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DATE:2008/4/30(水) 22:45

来月の2日、東京である企業の筆記試験を受けるのですが、まだ色々な考えがぐるぐるしてて。自分の中でまだ何もしっかり決めきれていない状態なのに受けていいのか。迷っている時点で受けるべきではないのか……私、考えすぎですか。 でも、就活って今やらなくちゃいけないことなんですかね。

大学生活もそろそろ終わりが見えてきた頃、やることはやったなという時期から、そろそろ就職のことを考えるか……というのが私の理想なんですけど。

世の中そんなに甘くないですよね(笑)。

この数カ月、それなりに就職活動をやってきましたが、やっぱり先のことを考えると、ちょっと不安になる。明確な目標がないからいけないんですよね。筆記試験を受けるかどうかは、もう少し考えてみます。

 4月末に高橋優衣(仮名)さんから届いたメールだ。高橋さんが就職活動を本格的にスタートさせたのは、年明けの1月頃から。つまり、3年生の冬ということになる。これでも「少し出遅れた」ほうだという。

 大手企業への就職をめざす学生ともなれば、3年生の春から情報を集め始めている。大学側も春から夏にかけて就職ガイダンスやセミナーを開催し始め、今や就職活動の本格化は「3年生の秋」と言われている。

 つまり、動きだしの早い学生は、ほぼ大学生活の半分、約2年間を就職活動に費やし、一般の学生でも約1年以上を就職活動に当てているということだ。この就職活動の早期化は、年々加速度を増している。

*    *    *

 千野裕美(仮名)は、准教授として経済学部でゼミを担当している。この時期になると、大学にある千野の部屋には、毎日のように何人もの学生が相談にやってくる。内容のほとんどは就職活動に関するものだ。

 昨日の夜も、携帯電話に学生から連絡が入った。「今、ちょっといいですか……」。いくつか内定をもらったが、どこに入社しようか決めかねているということだった。

 千野のゼミには、3年生が20人、4年生が14人、所属している。3年生のときに単位が取得できなかった学生は、4年生になってその埋め合わせをしなければならない。しかし今「就活で忙しいから」という理由で4年生の約半数がゼミを欠席する。

 千野は、出席に比重を置いた評価をしている。普段から「就活でゼミに出られないという理由はダメ」とは言っている。彼らは彼らなりに、自分の未来を掴もうと必死になっていることはわかるが、それでは単位はあげられない。

 学業と就職活動の「はざま」で千野が頭を悩ませるようになったのは、ここ数年のことだ。単位が取れないのは自己責任だと、バッサリと斬り捨てることも方法のひとつかもしれない。でも、千野は学生を見捨てることができない。

 10年前、千野が准教授になったばかりのころ、就職状況は氷河期の真っ直中だった。苦労して苦労して内定を取ってくる学生の姿を間近で見てきた。それ以来、学問が学生の本分だろうと思う一方で、就職活動も応援してあげたいという気持ちがある。

 だから、4年生でどうしても就職活動を理由に出席できない学生には、レポートでフォローしたり、友人にノートを借りることにも目をつぶっている。本心では、不本意だと思いながらも。

 きっと、大学が社会に出る前の「最後の砦」になってしまっているのだろうと、千野は思う。働く意義、仕事に対する考え方、社会に出ていくために必要な知識やマナー……すべてを大学が教えなければならない状況にあると痛感している。

 あるとき、学生がこんな相談を持ちかけてきた。

 その学生には、就職したいと思っている企業があった。名前も知られていない中小企業。それでも、学生はその企業に大きな魅力を感じていた。しかし、父親にそのことを告げると、こう言われたという。「高い授業料を払っているのに、そんな名前も知らないような会社に勤めるのか?」。

 今、こうした“親の希望”に右往左往させられている学生は少なくない。大手志向なのは学生たちだけはない。親もまたそうなのだ。「誰もが名前を知っていて、親も知っている有名な会社」への就職をめざして、学生は大手企業の説明会に列をつくる。

 大手だ、中小だという前に、もっと教えておかなければならないことがある。だから千野は、ゼミの学生に向けてこんな話をする。「なぜ、蕎麦が食べられるのか。そば粉をつくる農家の人がいて、運ぶ人がいて、打つ人がいるから食べられる。仕事はいろいろな人に支えられないとできないもの。逆にいえば、誰かを支えるためにすることが仕事。“これは誰のためになっているか”。企業名ありきではなく、そういう視点で仕事を選んでほしい」。

 基本的な「働く意義」を教えることも、今では大学の役割となりつつある。
 働く意義だけではない。時には「常識」も学生たちに教えなければならない。

 1年生に向けて基礎演習の授業を行っているが、約4割の学生が授業が始まっているのに筆記用具も出さない。授業は「筆記用具を出しましょう」から始めることになった。

コメント4件コメント/レビュー

たぶん、「子は親の鏡」なのだろう。ここに出てくる例が極端なのかどうかわからないが、モンスター・ペアレントとか暴走老人とかの出現と、密接につながっているような気がしてならない。「ぽっかり開いた穴」を持つ子供たち・若者たちは、そういう「穴」を持ったままの大人たちの中で育ってしまったのだ。根は深いと思う。(2008/06/09)

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いただいたコメント

たぶん、「子は親の鏡」なのだろう。ここに出てくる例が極端なのかどうかわからないが、モンスター・ペアレントとか暴走老人とかの出現と、密接につながっているような気がしてならない。「ぽっかり開いた穴」を持つ子供たち・若者たちは、そういう「穴」を持ったままの大人たちの中で育ってしまったのだ。根は深いと思う。(2008/06/09)

今の若者の状況を嘆きたいオトナにはうってつけのネタかもしれない。だが、最近の若者全体がこれほどひどいわけではない。誰でも大学に入ることが出来るようになって、また、小さな頃からひたすら塾通いすれば、(「穴」が大きくても)名の知れた大学にちゃっかり受かるような時代になって、この記事のような学生が幾らかいるのも確か。だが、それがすべてではない。私も若者だけれども、この例の学生たちのレベルはひどすぎる。幼稚園児でなく同世代かと思うと、あきれてアタマが痛くなってきた。この子らの親は、なにをしてきたんだろう…(2008/06/07)

1つ目のコメントにコメント。まんざらではない。こういう学生が昔より増えていることは事実。学生全体に占める割合については議論の余地があるが、今の勢いで増加しつづけたら日本の将来は暗い。 ひとえに、政府も世間も親も社会全体で、教育を軽んじ過ぎたためだと思われる。昔、どこかの漫画で「司法、立法、行政の三権に教育を加え、四権にすべきだ」という話を読んだことがある。教育とは、国運を左右し民族存亡に関わるほどのもの、と言えば、ぬるま湯日本の大半の人は「バカじゃないの」と冷めた反応がかえってくるだろうが、まあ、そのうちわかる。(がり)(2008/06/06)

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