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花柳界というお仕事

2008年6月27日(金)

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 京都祇園のお茶屋で舞妓や芸子をあげての宴席に招かれた。出世したらぜひ京都で芸子遊びをしてみたい、と憧れる諸氏は少なくないだろう。私は女の眼で見たそれを紹介したい。

 過去にも私は何度かお茶屋で遊ばせてもらう機会はあった。その時は舞妓や芸子を見て、ああきれいだな、これは男性は憧れるはずだと、しみじみ納得して帰るばかりだった。だがある時、ある疑問が湧いた。

 私は関西の芸能界にいるせいか、知人の母親がもと芸子さんだったというケースがたまにある。80代になるその母親は、今でもハイヒールを履き、お洒落をして小走りに娘の関係者に挨拶に回る。娘と共にハワイに行き、ブランドショッピングに盛り上がる。髪もお化粧もお洒落も時代にずれることなく、80代でも人生を現役でエンジョイできているその姿を見たときに、私は驚異的な衝撃を受けた。

 年金問題が叫ばれるなか、メディアに登場する80代は、80代という言葉からくるイメージ通りに枯れたお年寄りであることが多い。人生での定年を迎え、少ない年金で生活を支える姿は切なくこちら側に届く。私の亡き母も寝たきりの80代だったし、近所のおばあちゃん達もまた同様だ。だからつい、80代とはそんなものだ、という認識でこれまでを過ごしてきた。

 だが、同じ80代でもこれほど個人差がある。それはあくまで生体としての個人差なのか、それとも、ライフスタイルや経済力がそれを分けるのか、どちらが主な理由だろうと、漠然と疑問に思っていた。

 もと芸子の母親を持つ知人にその理由を聞いてみた。すると知人は「母は色町の人やったからやと思う」がその返事だった。色町とは花柳界のことだ。

 「色町の女性は、結局、若い時からいい着物を着て、おいしいものを食べて、いいものの味わい方を知り尽くしている。それがあの元気な80代を構成していると思う」とつけ加えた。

 その後、同じ80代のもと芸子さんがママをやっているという京都のクラブに行った。キリッと着物を着こなすママの機転、判断力、身のこなし、姿勢のよさ、こだわりなどを目の当たりにし、やはり同様の思いを持ったものだ。

 そして、先日の祇園のお茶屋遊びで、私は20代の舞妓と一緒に、50代、60代、70代の芸子さんたちに囲まれたとき、私の疑問は確信へと変った。

 皆、美しいのだ。単純な理由だが、このことの持つ衝撃はすごい。誰一人として、近所でみかける高齢女性のようにくたびれていない。舞妓は昔ながらの豪奢な衣装だが、50代以上の芸子さんになると、普通に上品な着物と、小さく結った髪型だ。それでもあふれんばかりの艶やかさがあった。若くてきれいなのは当たり前だ。高齢で美しい女性に、私は女性として見とれていた。

 やがて、彼女たちによる舞いが座敷で披露された。小唄を歌う人、三味線を弾く人、踊る人、とそれぞれに分担しながらの舞いだった。もちろん高齢の芸子さんも、舞った。

 私はそれを見ながら思った。彼女たちこそ、昔から仕事をし続け、定年もなく、働き続けてきた女性なのだ、と。

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「花柳界というお仕事」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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夢の実現にあたっては強く「念ずる」。そうした心構えを支えにビジネスの世界の荒波を渡ってきました。

後藤 忠治 セントラルスポーツ会長