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【第1話】「心を強くするために、絶対にやったらアカンこと」

2008年7月9日(水)

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 いじめ自殺が相次ぐ昨今。いじめに回らない、いじめに負けない強い子供にしたい。そう考えた地上げ屋の小川は自分の子供に道徳教育を始めた。月に1度、1つのテーマを決めて、自分の体験を基にその意味を子供たちに考えさせる。この地上げ屋自身、カネと欲望が渦巻く不動産業界、特に立ち退き交渉という札束が飛び交う世界で人の本質を見続けてきた。そんな悪漢だからこそ話せる道徳論とは。

「心の強さとは」

 小学生のいじめ自殺に衝撃を受けた小川は、子供に対する心の教育を始める。最初のテーマは「心の強さ」。他人をいじめない、いじめられても折れない――。そのことを、教えようと考えたからだ。そして、土曜日の午前、小川は2人の子供を居間に呼び寄せた。2006年11月25日のことである。

****

小川:よっしゃ、お前ら、こっちに来い。勉強会を始めるで。ノートに日付とテーマを書いとけよ。今日のテーマは「心の強さ」。お前ら、「人間の強さ」ってどういうことやと思う?

サクラ:何やろ。ケンカが強いとか、空手を習うとか。

小川:そんなん違う。本当の強さっていうのは、“心が強い”ってことを言うねん。肉体的に強いとかではないねん。

サクラ:そうなん?

小川:おう、そうや。心が強くない人間は人をいじめたり、物を盗ったりしてしまう。心が弱ければ、いじめられてもはねのけることがでけへん。逆に、心が強ければめげへんやろ。よう覚えときや。心が強うなかったら全然アカンねん。サクラやリュウジは心が強い方がいいか?

ノート

リュウジ:はい。

小川:ほな、どうしたら心を強くできると思う?

サクラ:決めたことを、やめずに続ける。

リュウジ:何だか知らんけど、エエことをする。

サクラ:人をいじめない。

小川:まっ、そういうことや。ただ、それだけじゃあないで。大切なのは「嘘をつかへん」ということや。嘘をつくと人は段々、弱くなる。嘘をつかんと正直に生きるということが大切なんや。ほんだら、何で嘘をつけへんかったら心が強くなるか、何で嘘をついたら心が弱くなるか、分かるか。

リュウジ:何でやろ。

小川:前にサクラ、家族の貯金箱から100円玉を盗ったことがあったやろ。最初は盗ってないと言うとったけど、その時お前、目がウルウルしとった。お父ちゃんと母さんは「サクラや」とすぐに分かったで。あん時、お前は不安やったろ。

サクラ:(うなずく)

小川:盗ったくせに盗ってないと嘘をついて、苦しかったからと違うか。それだけ、オドオドしとった。もの凄く心が弱くなっとった。正直に「盗りました」と言う方がどれだけ楽か。100円玉を盗ったのは失敗や。でも、失敗しても正直に謝れば、心は強くなんねんで。ほな、どうしたら嘘をつかんようにできるか、分かるか。

サクラ:とにかく正直に何でも言うとか。

小川:サクラは何でお金を盗ってしもうたん? 「お金が欲しい」という欲があったからと違うか。人間、過度の欲を持つから失敗する。欲を捨てれば、嘘をつく必要はなくなんねん。サクラだけじゃないで。リュウジかて、一生懸命やらな失敗するやろ。これは、さぼりたいという欲があるからや。じゃあ、書いとけよ。

ノート

「本当の強さは、心の強さです」
「心を強くするには正直であるべきです」
「失敗しても嘘をつかないためには欲を捨てる方がいいです」
「いつも正直に生きれば、心は強くなります」

小川:何で「欲を捨てろ」と言うか分かるか。お前らに、何にも負けない強い人間になってほしいと思うからや。あと、人生がカネとイコールではないということも分かってほしい。欲は人の目を曇らせる。お父ちゃん、欲にまみれた人間をそれこそ嫌というほど見てきたで。あの10年前の光景、今でも目に浮かぶわ。

****

 1999年、小川は神戸市の資産家が所有していた底地を買った。底地とは、借地権が付いた不動産のこと。一般的に、土地と建物の所有権は同じ場合が多いが、中には土地と建物の所有者が別のことがある。この土地だけの所有権を底地という。小川は底地の売買契約において、忘れ得ない体験をした。

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「【第1話】「心を強くするために、絶対にやったらアカンこと」」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長