• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

タイプ別「挨拶」とその克服法

2008年7月11日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 職場のスタッフのホテルでの結婚披露宴にご招待された。今まで幾多の披露宴に出席してきたことだろう。そして、挨拶もまたどれほどの数を指名されただろう。

 宴を主催する側の気合いとは別に、参加する側にとってはそもそも披露宴自体そう変わり栄えのするものではない。皆がする結婚というものを皆がするようにするわけだから、そう突拍子もないことが成立しにくいような仕組みに、それ自体がなっている。

 だが、人々が集まる空間において、そこにどういうドラマが作れるかは別だ。
それを構成するのはどうやら“挨拶”であるようだ。

 最初の挨拶は、新郎の勤める会社社長だった。もう数え切れない主賓挨拶を体験済みのはずだった。新郎新婦登場後の高揚し張り詰めた空気の中、おそらくは間違いのない王道のような挨拶を皆は信じて、言葉を待った。

 ところが、社長はマイクを握るとなぜかオドオドした。なにやら話してはいるのだが、その立場が生み出した含蓄のある話というわけでも、その人柄が皆に安心感を届けるという種類のものでもなく、ただ、本人の挨拶の苦手さのみを印象に残すことに終始した。

 企業のトップを勤め上げる実力と、挨拶は、別物なのだと痛感しつつ、その撃沈していく姿を「アチャー」とばかりに目の当たりにした。

 張り詰めた空気はそのまま次なる主賓挨拶へと移った。今度もまた山ほどの披露宴挨拶を体験済みの和服の似合う年配女性だった。挨拶はまず徹底した謙遜の言葉から始まった。

 「ワタクシのような者が、大勢の立派な皆さんに先立ちましてご挨拶をさせていただくことをまずはお許しいただきたいと思います」。そう言って、いったんマイクから離れ、丁寧に深々と頭を下げた。

 この瞬間、重鎮が重鎮らしくあることに、経験がそれを裏打ちしている安心感に、会場からは唸り声が聞こえてきそうだった。

 女性は王道の挨拶を間違いなく進め、それのみならず、「新郎が浮気されたときはぜひ、ワタクシにご相談くださいませ。秘訣をお教えいたします」と上品な笑いを取ることも忘れなかった。

 そう。これが年齢相応の、披露宴のオープニングに相応しい、人生経験者による幕の上げ方なのだ。円卓の招待客たちもウンウンとうなずくようにその挨拶を味わっていた。王道の挨拶はやはりそれだけで力を持つ。その厚みのようなものを私はじっくり見届けた。

 やがて料理も運ばれ宴もくだけたところで、新婦の同級生の女性の挨拶になった。母親に着せてもらったのだろう、あでやかな着物姿でチョコチョコと歩きながらマイクを握った。そして、おもむろに紙を広げなにやら読み出した。と思ったら、ウッ、と一声上げて、涙で言葉を詰まらせ喋れなくなった。これもよくあるパターン。緊張が感情のコントロールを狂わせ、自滅していく姿を、不憫に見守った。

「遙 洋子の「男の勘違い、女のすれ違い」」のバックナンバー

一覧

「タイプ別「挨拶」とその克服法」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

トランプ政権のここまでの動きはスロー。

ジョセフ・ナイ 米ハーバード大学特別功労教授