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1:「負け感」からの出発

  • 渡辺由美子

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2008年7月30日(水)

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【まえがきにかえて ~受験、就職、職選び……自分はどこかで間違えたのか?】

 このところ、“負けが込んでいる”。そんな気持ちになることが多い。

 1990年代前半、“クリエイターブーム”に乗ってデビューして、それなりに仕事もあって楽しくやってきたお気楽ライター、それが私(渡辺由美子/本企画インタビュアー)だった。

 ところが出版不況と言われ始めたころから出版社に新入社員が入りにくくなってきた。入ってくるのは契約社員とアルバイト。そのうち会社によっては“正社員が偉い”という空気さえ出てきて、何だかなあと思っていたら、仕事のジャンルが広がるにつれて、さらに見たくもない現実が見えてきた。

「ええっ、××君、あなた、そんなに年収あるの!?」

 アニメ・コミックといったテーマを扱う“カルチャー村”に住んでいた私は、「お給料はイマイチだけど、仕事は楽しいよね?」という村のお約束を信じてやってきた。それなのに、同じ出版という業種でも、会社によって、雇用形態によって、こんなに待遇の差があったなんて。「なにを当たり前のことを」と、このサイトの読者の皆さんならおっしゃるかもしれないが、フリー業の私は会社事情といったものに疎く、その差異に気づくのがかなり遅かったのだ。

 ふと気づくと、TVも新聞もネットもこぞって「格差社会」「一度負けたらはい上がれない」「境遇の差が全てを決める」と、そんなことばかり言い立てている。

 会社勤めの友人たちまでが、暗い顔で「この会社にいる限り、自分がやった仕事の評価は低いままだ」「この会社では年齢に見合った昇給なんて望めない」などとぼやきだす。だったらフリーの私なんてどうなるんだろう。

 もしかしたら、私はとんでもなく大きな“人生の選択肢ミス”をやらかしたんじゃないだろうか。学校を卒業した段階で、「大きな会社の正社員」になっておけば、今こんなに不安にならずにすんだのじゃないか。いやいや今のご時世、生涯を保証してくれるような立派な会社に入るには、学校だってもっと偏差値の良いところに入っておかないと…ということは、じゃあ、私の人生は17歳からやり直さないといけない、ということ!?

 そんなことってあるか、と思いながらくすぶっていると、日経ビジネスオンラインの編集・Yさんから「高橋良輔監督のインタビューをもう一度しませんか」とのお声がかかった。

 このサイトの方にはもしかしたらお馴染みではないかもしれないが、高橋監督といえば、アニメの世界では日本を代表する方のひとり。派手だったロボットものに、「装甲騎兵ボトムズ」で渋い戦争映画の雰囲気を持ち込んだ。新作「ペールゼン・ファイルズ」では、過酷な戦場に放り込まれた兵士5人が、己が生還するために何を犠牲にしても戦い抜くというハードな物語で、新たなファンを獲得。60歳を過ぎてもなお最前線を走り続けるトップクリエイターだ。

 去年やらせていただいた監督インタビューの連載は「天才に負けてもへこたれず、自分の味を出していこう」というテーマだったが、「格差」「はい上がれない社会」という言葉がさらに重くのしかかってくるようになった今、監督からもっと具体的な処世術をおうかがいしてみたくなった。

「自分は敗者」という泥沼からどう復活するか

 希望にさえ格差があると言われる世の中で、いかに自分の身を守りながら戦っていくか。

 実は、高橋監督ご自身が、自分の生きる道と思い定めたアニメの世界で、連戦連敗を喫した経験がある。監督デビュー作が「宇宙戦艦ヤマト」、そして次の作品が「機動戦士ガンダム」という歴史的名作と放映がぶつかり、敗れたのだ。

「自分には運がない、負けてどん底に落ちた、そういう経験があるから、“この先どうやって這い上がるか”をずっと考えて来たんです」

 日々の敗北感、負け感をどういなしていくのか。そもそも、勝ち負けって何なのか。そこを間違えると、人は簡単に「敗者」になったと思い込んでしまうらしい…今の私みたいに。

 スタートラインでライバルを見て“才能がない”と打ちのめされ、作品で負けて、もうだめだと思ってから、監督の復活劇は始まった。

 自分は負け犬だ、という気持ちをどうコントロールするかから、大逆転への道はひらけている。監督が語る「今から始める“敗者復活戦”」を、ぜひ私と一緒に体験して欲しい!

【前シリーズ 「アンチ天才のボトムズ流仕事術 ~64歳の現場監督に聞け!」はこちらから】

高橋 お久しぶりですね。

担当編集Y おかげさまで連載第1シーズンは大変好評でして、どうもありがとうございます。特に、「まわりが“天才だらけ”の中で、どう生き延びる?」の回はものすごく読まれました。再開にあたって、改めてお礼を。

―― 当日のページビューでトップ5位以内を連発していたんですよ。

高橋 僕はよく分からないんですよ。5位というのだって、よく分からない。例えば、その日は5本しか記事がなかったのかもしれないし(笑)。

―― あんまりランキングとかは気にされないんですか?

高橋 たぶん気にし始めれば誰でも気になると思うんで、大概のランキングや評価みたいなものは気にしないようにして、むしろ遠ざけている方です。ネットとかで、匿名で書かれる噂なんかは特に。見ないし、聞かないということで。

 だって、いいことだけを読むわけにはいきませんからね(苦笑)。いいことも悪いことも受け入れて、それを適当に相殺して平然としていられる性分じゃないんで。だから、直接的にものを言ってくれる人は別として、匿名性のものはなるべく触れないということに。

―― なるほど。

Y 「まわりが天才だらけ…」のお話がすごいページビューを稼いだというのも、今ネットでものを読む人の気持ちに、あのお話が求められていたんだろうなと思うんです。みんなやっぱり「周りは、ちょっと俺よりできるんじゃないかな」と、うっすら悩んでいる。

高橋 それは、普通みんな誰でも思ってますよね。どうも周りは自分よりもできるんじゃないか、自分はちょっと何かこう、最初の一歩で遅れているんじゃないか、とかね。そういう思いというのはありますよね。

「自分は最初の一歩で出遅れた!」

―― あ、そうです。私も含めて、「最初の一歩で出遅れている」という気持ちはいま、たくさんの人が感じていると思います。

 第一部でお聞きしましたが、監督は、アニメ業界に入っていきなり「周りの連中に比べて、才能がない」と苦悶されて、「この仕事でいこう」と思えるまでにずいぶん長い間お悩みになったと。

 いまの20代、30代の人と話すと、当時の監督とよく似た悩みを抱えているように思えるんです。「自分の才能が見つからない」「努力が報われない」と。頑張って偏差値の高い大学に入ったのに正当に報われている感じがしない、という声も聞きますね。実は自分自身の中にも、「世の中の多くの人に自分は負けている」という思いがあります。

Y え、そうなの?

高橋良輔監督

高橋良輔(たかはし りょうすけ)

日本を代表するアニメ監督のひとり。1943年1月11日東京生まれ。1964年、株式会社虫プロダクションに入社。主 な作品に「W3(ワンダースリー)」「どろろ」「リボンの騎士」などがある。虫プロダクションを退社後、サンライズ創業初期に「ゼロテスター」(監督/1973)に参加。代表作として「太陽の牙ダグラム」(原作・監督/1981)、「装甲騎兵ボトムズ」(原作・監督/1983)「機甲界ガリアン」(原作・監督/1984)「蒼き流星SPTレイズナー」(原作・監督/1985) 「沈黙の艦隊」(監督/1996)「ガサラキ」(原案・監督/1998)「火の鳥」(監督/2004)「モリゾーとキッコロ」(監督/2004)「FLAG」(原作・総監督/2006)「幕末機関説 いろはにほへと」(原作・総監督/2006)がある

*****

高橋監督自身の「敗者復活戦」を象徴する「装甲騎兵ボトムズ」。その最新オリジナルビデオアニメ「装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ」(原作・監督)がバンダイビジュアルより発売中。戦いと孤独の中に深く沈む主人公、キリコ・キュービィの若き日と彼を取り巻く壮大な陰謀が描かれる。最終巻(第6巻)は8月22日発売

コメント9件コメント/レビュー

私は一度大学受験に失敗しましたが、当時は他人に負けたのではなく、ベストを尽くせなかった自分に負けたという風に感じていました。同じように浪人した私の友人たちも同じような感じでした。この記事の前提となっている社会の価値観、特に大学受験に関するものは本当にそうなのでしょうか。少なくとも、私の周囲いた人は、いい大学にいけばいい会社に入り、いい人生が送れるからいい大学を目指すといった人はいませんでした。メディアが勝手に作り上げている価値観なのではないでしょうか。(2008/09/10)

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

私は一度大学受験に失敗しましたが、当時は他人に負けたのではなく、ベストを尽くせなかった自分に負けたという風に感じていました。同じように浪人した私の友人たちも同じような感じでした。この記事の前提となっている社会の価値観、特に大学受験に関するものは本当にそうなのでしょうか。少なくとも、私の周囲いた人は、いい大学にいけばいい会社に入り、いい人生が送れるからいい大学を目指すといった人はいませんでした。メディアが勝手に作り上げている価値観なのではないでしょうか。(2008/09/10)

「なかなかやるね。でも、俺とは違うな」凄い。この台詞をさらっと言えるような人間になりたい。本物のオンリーワン。(2008/08/01)

非常に納得のいく内容でした。「呪縛というのは、他人に強制されるよりも、自分で作ってしまっていることの方がずっと多い」「自分なりの幸福をつかもうと思ったら、自分が作っている呪縛から逃れることが重要」という高橋監督の言葉に深く頷きました。「負け感」、正体のない焦燥感から抜け出るためには必要な視点ですね。この記事を書かれたライターさんに一言。記事の内容自体は良いと思います、「負け感」を強く感じている一人の率直な反応、気持ちを書かれているのも良いと思います…が、文章の記述形式自体はいかがなものかと思いました。ライターの発言部分が太字で、監督(およびその他の発言者)の発言が標準、というのはおかしいと思います。【編集部より:ご意見をありがとうございます。表記についてはライターの方ではなく、編集部側の責任です。書式として、インタビュアーを太字にすることになっており、どちらを重視して、ということではございませんが、この企画のように「対談」風になっていると、ご指摘のような印象が生じるかもしれません。今後検討させて頂きます】(2008/08/01)

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三品 和広 神戸大学教授