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3:「クリエイティブ」とか「やりがい」に潜む罠

  • 渡辺由美子

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2008年8月18日(月)

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※8月18日公開時にリンク切れがありましたので、19日のメールマガジンとトップページにて再公開させていただきます。ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます:編集部


【前シリーズ 「アンチ天才のボトムズ流仕事術 ~64歳の現場監督に聞け!」はこちらから】

前回から読む

――実は、前シリーズの原稿を書いて監督にチェックをしていただいたときに、ひとつだけ気になったことがあったんです。

 事務所を作って電話に出るだけで食える(「食いっぱぐれない方法は、ひとつだけ」)の中で、「電話をかけてきてくれる人が全部がクリエイターというわけじゃないんですよ」という文章を書いたのですが、監督から「クリエイター」という言葉について、「クリエイティブな能力がある人」に変更するという訂正が入りまして……。

高橋 はい。ありましたね。

――私は、企画・営業職の人のことを「クリエイターではない」、つまり、「=実際のアニメを作る人ではない」という意味で書いたのですが、監督の訂正通り「クリエイティブな能力がある人じゃない」と直すと、営業職はクリエイティブな能力がいらない仕事なのか?……と思ってしまって……。結局、もう一度監督に見ていただいて、再度直していただいたのですね。

高橋 あれは、僕に電話をかけてくる相手というのは、「企画や営業の人という、“中継ぎにならなきゃいけない立場の人”が、自分に足りないものを求めてくる」という文脈だったんですね。だから、分かりにくいということであれば、「クリエイティブな能力がある人」の部分は取っちゃったほうがいいなと。

――こだわってしまってすみません。

担当編集・Y 渡辺さん、「クリエイティブ」や「クリエイター」って言葉を使うのに、ものすごく慎重ですね。

写真:大槻 純一

――そうですね。特に私より若い人にとっては、こだわりがあるところだと思います。「自分の仕事にはクリエイティブなところはないのか?」という気持ちって、これもなんとなく「負け感」につながっているような気がして。

Y 出た。渡辺さんの「負け感」。

――実は、アニメ雑誌の記者をしていた頃から気になっていることがあって。

 私の世代以降でしょうか、今の若い人は、「クリエイター」になりたいという人がすごく増えたと思うんですよ。10代のうちにタレントとか漫画家になれなかったというのは「夢」の範囲なのですが、クリエイターなら手が届きそうだ、と。“クリエイティブな仕事”というのが大きな意味を持ってきたと思います。

Y さきほどのお話にあった「褒められる中に罠がある」にも繋がっていると思うんだけど、渡辺さんの話を聞いていると、「クリエイティブ」「クリエイター」という言葉にも罠があるんじゃないかと思えてくるんですが。本当はその言葉自体にはたいした価値なんてないのに、手に入らないと自分を「敗者」と錯覚させるような。

――でも、「罠」と言っても、必要だと思うんです。自分の仕事に何の意味も感じられなかったら、すごく寂しいじゃないですか。

Y それって「クリエイティブ」じゃないと「仕事してる意味がない」ってこと?

――すくなくともクリエイティブじゃないと、仕事の「やりがい」は感じにくいんじゃないかと。

「個性」重視で「個性的に見える」肩書きが増えた

高橋 それは、「クリエイティブ」、つまり“創造的な仕事”をしたいのか、「クリエイター」という“肩書き”が欲しいだけなのか、そこははっきりしたほうが良いと思います。

――肩書きだけが欲しい、といいますと。

高橋 最近、職業でも「何とかデザイナー」とか、カタカナ職業名がやたら増えましたよね。何でもカタカナにすればカッコイイ、というのがあるじゃないですか。何とかコーディネイターとか、カリスマ何とかとか。そういうカタカナ職業名が異常に増えた。本来はあんなに必要ないですよね。

 「個性的に」とか、「好きなように」と言われても、それがそのまま評価や生活、稼ぎにつながる社会ではないのに、妙に個性や自分らしさが求められるからね。そうすると自己欺瞞としてのカタカナ職業名が増える気がする。

 僕らの若い頃にもやはりカタカナ職業がありました。そして、カタカナ文字になっているだけでカッコイイって思っちゃうんですよ、若いときは、浅はかなことに。

 本当にカッコイイ領域に行くのは難しい。だから、その“隣”にあるカタカナ仕事が増えていくんです。

――“隣”とは。

高橋 例えば「何とかデザイナー」という呼称だって、すごい領域の人は絶対的にカッコイイし認められるものがあるんだけど、その域まで到達していないのにカタカナ名をつけることで「ええ、まあ、だいたいそれと同じような仕事ですかね」とカッコよさげに見せている。そうした錯覚を利用して、どんどんカタカナ職業が増えていく。

 本来はカタカナの肩書きなんかに縛られなくったって、「クリエイティブ」、“創造的”な仕事はいくらでもできるんですよ。

――そうなんですか? クリエイティブな仕事がしたいなら、まずはそういう会社に入ってポジションを得ることが重要で、就職活動に“負け”たら、もうクリエイティブな仕事はできないと考えている若い人は結構いるんじゃないかと思うのですが…。

高橋良輔監督

高橋良輔(たかはし りょうすけ)

日本を代表するアニメ監督のひとり。1943年1月11日東京生まれ。1964年、株式会社虫プロダクションに入社。主 な作品に「W3(ワンダースリー)」「どろろ」「リボンの騎士」などがある。虫プロダクションを退社後、サンライズ創業初期に「ゼロテスター」(監督/1973)に参加。代表作として「太陽の牙ダグラム」(原作・監督/1981)、「装甲騎兵ボトムズ」(原作・監督/1983)「機甲界ガリアン」(原作・監督/1984)「蒼き流星SPTレイズナー」(原作・監督/1985) 「沈黙の艦隊」(監督/1996)「ガサラキ」(原案・監督/1998)「火の鳥」(監督/2004)「モリゾーとキッコロ」(監督/2004)「FLAG」(原作・総監督/2006)「幕末機関説 いろはにほへと」(原作・総監督/2006)がある

*****

高橋監督自身の「敗者復活戦」を象徴する「装甲騎兵ボトムズ」。その最新オリジナルビデオアニメ「装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ」(原作・監督)がバンダイビジュアルより発売中。戦いと孤独の中に深く沈む主人公、キリコ・キュービィの若き日と彼を取り巻く壮大な陰謀が描かれる。最終巻(第6巻)は8月22日発売

コメント4件コメント/レビュー

クリエイティブな仕事があるのではなく、クリエイティブに仕事をする人がいるということでしょうか。(2008/09/10)

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

クリエイティブな仕事があるのではなく、クリエイティブに仕事をする人がいるということでしょうか。(2008/09/10)

インタビュアーが卑屈なほどに負け感漂う発言をするせいか、監督のお話が、とてもわかりやすくしっくりきます。このサイトの読者層は社会人、それもある程度ビジネスについて考えられる層であることを考えると、もっと別な、若い層やクリエーターを目指す層向けの媒体でこそ流してほしい、いい連載だと思います。(2008/08/19)

ナンバーワンよりオンリーワンというどこかの歌詞がありましたが、なにか「個性」ということが変に強調されすぎている世の中であると思いますし、そこには「競争からの逃げ」のニュアンスも感じられてしまいます。イチロー選手の「変わらなきゃ」こそがクリエイティブの名にふさわしいということですね。納得。(2008/08/19)

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三品 和広 神戸大学教授