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小麦が日本人にもたらしたもの

日本農業の担い手を自負するがゆえの怒り

  • 宮嶋 康彦

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2008年7月24日(木)

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 「品目横断的経営安定対策でどれだけ減収になったか、知っていますか?」

 午後11時を過ぎた集会所の畳の部屋に、農家のSさんの言葉は響いた。帰り支度をしていた9人の男たちは、再び居住まいを正して、筆者の反応を待った。返す言葉はなかった。

 「それまでは、小麦、甜菜、でんぷん用ジャガイモ、大豆、それぞれの品目ごとに補助金が付いていた。それを完全になくして、農家の規模とやる気のある営農者に限って補助金を出そうというわけでしょう。それで収入が変わらなければいいが、フタを開けてみれば2割近くも落ち込む結果になった。どうしてこうなるわけ…。なんの落ち度もない、しかも肥料も農薬も燃料も高騰しているじゃないですか」

 去年施行された品目横断的経営安定対策に対して、農協も行政も異論を唱えた。道庁に出向き、苦境を訴えた。農業収入の減少は町の歳入に関わること、「それに6月11日にはヒョウの被害が出た。被害額は5億円にのぼります。陳情する私たちは必死でした」と小清水町長の林直樹氏は語る。

日本農業の担い手を育てるという大前提

 そもそも、品目横断的経営安定対策とは何か。日ごろ農業問題に関心の薄い人には、皆目、分からないかもしれない。筆者も似たような1人であったが、昨年秋から、越後松之山で日本一高価な米を生産し続けている戸邊秀治さんのルポを開始して、初めて、この政策と向き合うことになった。

 まず着目するのは「日本農業の担い手を育てる」という大前提に立っていることだ。主たる勤めを他に持ちながら、片手間に米作りをしている零細な兼業農家や、後継者がいない、高齢の農家は、市町村が認めない限り、補助金交付の対象外となる。これまでは、全農家に品目別に補助金が交付されて「ばら撒き」との批判にさらされてきた農政が根本から見直されている。

 「担い手」とは市町村が認定した認定農業者と、一定の条件を備えた集落営農ということになっている。認定農業者の要件は、北海道で10ヘクタール(都府県4ヘクタール)以上の営農規模でなくてはならない。ちなみに、越後松之山のような中山間地の規模要件は、実情に合わせた特例が設けられている。

貿易自由化を背景に、日本農業の体力をつけるため

 筆者は昨年10月から多くの農家に面会してきた。不遜ながら、不真面目な農家も見てきた。これほど片手間に米を作っている兼業農家に、補助金というかたちの納税をするのはごめんだ、と苦い思いをしたこともあった。こうした農家が、品目横断的経営安定対策が謳うところの担い手にならない限り、日本の農業の未来は暗い、と思ったものだ。

 品目横断的経営安定対策はWTO(世界貿易機関)の協定に深く関わっている。

 今週からはじまったWTOの閣僚会合。日本の多くの農業団体や農家の願いとは裏腹に、農産物の関税が引き下げられる公算は大きい。世界の情勢は貿易の自由化に向かっているというのが実情。そうなれば、一気に安い穀物などが国内に流通し始めることになる。国際競争力のある作物を作ることで対抗するしかない日本農業は、土曜日曜など、主たる勤めの空き時間を利用して農作物を作っているような、片手間な農業のあり方では太刀打ちできるはずがない。

 このWTOの流れを背景に、価格や技術面で世界と戦うことができる日本農業の体力をつけなければならない、という礎石の上に積み上げられているのが品目横断的経営安定対策だ。Sさんの訴えのように、減収は困るが、一面では優れた科条といえるのではないだろうか。

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大量陳列、大量販売というのがある程度限界にきているのかなと思います。

松﨑 曉 良品計画社長