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丁稚、渋沢栄一と対峙する

丁稚が創った世界企業~金子直吉伝・7

  • 山岡 淳一郎

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2008年8月18日(月)

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 日本は明治維新で国を開いたものの、ずっと貧乏だった。
 資源のない国は交易で立たねばならぬ。

 その頃、世界経済は「金本位制」で動いていた。円だ、ドルだ、ポンドだといっても世界共通の正貨は「金」だったのだ。金の流出に慌てた明治政府は、金銀複本位、銀本位と身をよじらせるように通貨制度を変え、日清戦争後、金本位に復した。日本は本格的に世界経済に組み込まれる。だが、貧しさは苔のように社会を覆っていた。

 外国にモノを売って金を奪還し、蓄えねば「富国」は一炊の夢に終わる。

 ここで、「国を背負って金を奪れ」と勇猛果敢に挑んだのが、維新で士農工商の身分制から解き放たれ、地べたから這い上がってきた男たち。かれらは腹に「士魂商才」、世界と直に勝負をした。こんにちの日本経済の土台をつくったのは、間違いなく、この「金ぴか」な人びとである。

 いまから90年ほど前、日本の国家予算を超える年間売り上げを記録する会社があった。神戸製鋼、帝人、双日、IHI、太陽鉱工、サッポロビール、日本製粉、太平洋セメント……現代に続く錚々たる企業が、ここを母胎にしている。その名は、鈴木商店。三井物産を凌ぐ勢いで急拡大する商社だった。

 無学な丁稚あがりながら、鈴木商店の専務となって経営を取り仕切る金子直吉は、類いまれな決断力と実行力から「財界のナポレオン」と呼ばれた。資源のない日本を交易立国として羽ばたかせる動力源となった。「生産ほど尊いものはない」が口癖で、ありとあらゆる産業を興し、やがて史上最大の起業家へと成り上がってゆく……。

 だが、今はまだ、日本精糖が独占する製糖業界に食いこもうとして苦闘する、新参者にすぎない--。

前回から読む)


日糖事件”で、財界の巨魁が金子直吉の前に現れた
(イラスト:茂本ヒデキチ 以 下同)

 金子は、北九州の大里に精糖工場を立ち上げようともがいていた。業界の首領、日本精糖の不二樹専務には、「大里の水にはアンモニアがぎょうさん混じってるから、工場はできても砂糖はできへん。結局、工場は潰れて、レンガと石ころが残るばっかりや。金子は無分別なことをしたもんや」と嗤われた。

水の質には問題なかったものの、不二樹の呪いか、攪拌する機械がうまく作動せず、まともな砂糖が作れない。金子は、頭を抱え込んだ。

 そこに、ひとりの男が、ふらりと訪ねてきた。

 男は、挨拶もそこそこに、砂糖の精製方法を淡々と語り始めた。一々、理に適っている。攪拌機械の使い方も、じつによく知っていた。まるで神の使いのようだ。金子は、「どうしてここへ来たのか」と訊かずにはいられなかった。

意気と嫉妬が、ひとを動かす

 男が事情を打ち明けた。

「じつは、大阪の日本精糖の工場で長年、機械を扱ってきた職工です。先日、不二樹専務が工場へ来られたとき、ポケットから一枚の写真を落として行った。何気なく拾い上げたら、ふるいつきたくなるような美人です。専務寵愛の芸者、八千代でした。

わしらは職工ではありますが、一生懸命事業のために額に汗して働いております。しかるに不二樹専務は芸者遊びをして、その写真を懐にして惚けておる。そういう人に雇われるのを潔しとしません。それに反して貴下は品行方正で日夜、事業のために奮闘しておられると知り、暇を取ってまいりました」

 金子は胸が熱くなった。これぞ、天の助け。はるばる北九州までやってきた職工の男気に打たれた。必死に独楽のように回転していれば、思いは遠くまで伝わるものなのか……。

 が、一方で、人間の「嫉妬」がかきたてるエネルギーに金子はゾッとした。

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