「地方再生物語」

“自主流通小麦”、世にはばかる

メーカーへの直販がもたらした、顔の見える小麦作りの喜び

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2008年8月21日(木)

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 昨年の農政改革に諸手を挙げて喜んだ男がいる。これで丹精した小麦を食品メーカーに直接売ることが出来るようになった、と小躍りするのだ。

 それは、生涯の目標として胸裏に温存していた製粉工場を仲間と建設するという夢を引っ張り出すことにもつながってきた。男の名前は、妹尾英美、北海道十勝平野のど真ん中で110ヘクタールの農地を持ち、小麦や野菜を作る64歳。

生産者と食品メーカーが直接取引

 国産小麦の流通が劇的な変化を見せ始めた。2007年4月、食糧法(主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律)が一部改正、そのことが大幅な規制緩和となって、小麦生産農家と食品メーカーの直接取引が可能になった。これにより小麦市場に新たな事業が誕生しようとしている。

 小麦は長いあいだ政府の干渉作物だった。生産される小麦は政府が買い上げ、その後、製粉会社などに売り渡し、製粉会社は民間企業へ売却するという形態が採られてきた。これが平成10年ころから、徐々に民間流通が取り入れられていき、今では全量民間流通に委ねられることになった。従来は、直接取引するとなると、ヤミ米(自主流通米)のような位置付けにならざるを得なかったが、それが公認されることになったのだ。

 小麦を販売するのは、北海道・幕別町にある農業生産法人、北海道ホープランド。買うのは三重県に本社を置く、おやつカンパニー。8月19日に同社の松田好旦(よしあき)社長が北海道ホープランドの社長、妹尾英美さんを訪問し、小麦粉を直接買い付ける契約条件を整えた。

 取引量は、2008年度産は約60トン(製粉後の粉ベース)。来年の夏に収穫する分も同程度を予定し、再来年は大幅に増量するという。さらに、ゆくゆくは、おやつカンパニーが年間に使用する小麦粉1万2000トンのうち、生産者が納得できる相当量まで取引高を増やしていきたいという。

 直接取引で何が、どう変わるのか。

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著者プロフィール

宮嶋 康彦
(みやじま やすひこ)

宮嶋 康彦

1951年長崎県佐世保市生まれ。写真家、作家。東京造形大学講師。『紀の漁師 黒潮に鰹を追う』(草思社)、『誰も行かない日本一の風景』(小学館)、『蛍を見に行く』『この桜、見に行かん』(文藝春秋)、『花行脚・66花選』(日本経済新聞社)、『たい焼の魚拓』(JTB)、『脱「風景写真」宣言』(岩波書店)、『写真家の旅―原日本、産土を旅ゆく。』(日経BP社)など著書多数。自身のホームページでは写真と文章を毎日更新。



このコラムについて

地方再生物語

財政難、過疎、高齢化など地方が置かれている状況はどこも同じように厳しい。しかし、苦しい中で、わずかながらも光明を見出している地方がある。都会にいるだけでは地方の本音は聞えてこない。そこに暮らす人の姿、風景、そして風土。実際にその地に足を運んでみれば、全く違う声が聞えてくることもある。地域間格差の本質と、再生に挑む人々の声をルポする。

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