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4:「大企業に入れば勝ち」か?

  • 渡辺由美子

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2008年8月27日(水)

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【前シリーズ 「アンチ天才のボトムズ流仕事術 ~64歳の現場監督に聞け!」はこちらから】

前回から読む)

―― 監督がおっしゃった「100点の呪縛」は、本質的には「他人が決めたルールを、自分にとっての正しさと勘違いする」こと。だから満点にこだわる必要はない、合格点ぎりぎりでもいい、と。

 たぶん、頭では理解できたと思うのですが、やっぱり「偏差値の高い大学に行けた=大きな会社に入れた=幸せ」と、そのルートに乗れなかった人たちだけがしんどい思いをしている、というのは、私の中ではなかなか消えないんですよ。たとえばこの「プラチナタワー」。

担当編集・Y ん、うちの会社のビルがどうかした?

―― 大きくて新しくてきれいなビルで、大勢のビジネスマンの方が忙しそうに行き来しているじゃないですか、白い巨塔みたいに。ここに無名のフリーライターである私が1人でのこのこ行くと、「ああ、何だか負けている、この大企業の皆さんに私は負けているんだろうな」と思って、それで凹んだりするんですよ。

Y …でも所詮賃貸だよ、借りビルだよ(笑)。

―― 個人的な話で恐縮なんですが、私は今の記憶をもったまま、自分が17歳に戻ったらどうするか、と考えるんですね。たぶん遊んでいないで受験勉強をして、もっと偏差値の高い大学に入ろうと頑張ったんじゃないかと思うんです。そうしたらこのなんとなく抱えている「負け感」は感じずに済んでいるのではないかなと。

Y 17歳で人生を間違えたんじゃないか、って?

―― 日本では早いうちに勝負が決まってしまう気がするんです。負け感を感じないためには、よほど才能がある人以外は、大企業とか安定した職業に就いた方がいい。またそういうところに行くためにはいい偏差値の大学に入った方がいい。……フリーライターとして結構楽しく仕事をしてきたはずなのに、やっぱり心のどこかでそう思っているんですね。さきほど高偏差値の大学に入っても報われないと感じている人がいる、と言いましたが、やっぱりその(学歴)カードはあるに越したことはないと。

高橋 そういうことで言うと、僕は思うことがあるんですよ。僕は最初に就職したのが伊藤忠自動車だったんですね。

―― 伊藤忠、ということは大会社のグループ企業ですよね。

高橋 まあ、そうですね。労働時間は9時から5時半までだったですし、残業はほとんどなかったですし、働くところとしてはとてもよかったんですよ。

―― 一流どころのグループ企業で、働く環境はよくて、どうして辞めるという気持ちになったんですか。

「生きるために働け!」という時代でも、迷いは生まれる

高橋 やっぱり若いですから、何か、生活のためだけに会社にいるということに飽き足らなくなったんでしょうね。

 就職するまでは、僕も世間の価値観の中に逆らわなかったですよ。僕らの時代は、親が「あなたは、自分の好きなことをやりなさい」という時代じゃなかったですからね。食べていくために就職するわけです。

 それで、その頃から、肉体労働よりは事務職の方が給料もよかったから、親としては事務職に就きなさいとごく普通に。今の親だと個性を伸ばすとか、好きなことをやれとか、志は何だとか、よく分からないことを言いますけれども。

―― よく分からないこと(笑)。

高橋 いや、よく分からないというのは、そこに責任を持っていないですからね。

 その言葉に責任を持つ覚悟がちゃんとあれば、「好きなことをやれ」という言葉は生きてくると僕は思うんだけれど、たぶんそんなに真剣に考えて言っていないと思うんですよ。それより昔の親のように、世の中に出たら日々の暮らしだよ、暮らしをよくするためにはどうしたほうがいいよ、という意見の方が、親としての責任から出る言葉だし、はるかに心に響くんじゃないでしょうか。

―― 最近の親が個性を伸ばせと言うのは、もしその職で食べられなくても、家で暮らしていればとりあえず生活は大丈夫だからという意味もあるのかもしれませんね。

高橋 最近は「ガテン系」とか「手に職を」という流れも出てきたけど、僕たちの親が言う「手に職を付けろ」は、そんな流行に左右される言葉じゃなかったですから。お前は勉強もできないし、サラリーマンは無理だろうから手に職を付けろという、そういう指導の仕方ですからね。

 だから取りあえずは親の言うことに逆らわないで、まずは食わねばと思って就職したわけです。その後に、就職はしてみたものの、さて世の中に出て、学生以外の生活をしてみて、自分のこれからの余白の人生を考えると、「ええ? 俺ってこれでいいのかな」ということになったんじゃないですかね。

―― 監督は、親の言うことはありがたいと思いつつも、結局、そういう安定した人生はつまらなくなってしまったということですか。

高橋 そうですね、でも、もうどうにもやるせないというほどせっぱ詰まっていたわけじゃないんです。何となく漠然と考えているときに、発作的に辞めたわけですから。

―― 発作的に?

高橋良輔監督

高橋良輔(たかはし りょうすけ)

日本を代表するアニメ監督のひとり。1943年1月11日東京生まれ。1964年、株式会社虫プロダクションに入社。主 な作品に「W3(ワンダースリー)」「どろろ」「リボンの騎士」などがある。虫プロダクションを退社後、サンライズ創業初期に「ゼロテスター」(監督/1973)に参加。代表作として「太陽の牙ダグラム」(原作・監督/1981)、「装甲騎兵ボトムズ」(原作・監督/1983)「機甲界ガリアン」(原作・監督/1984)「蒼き流星SPTレイズナー」(原作・監督/1985) 「沈黙の艦隊」(監督/1996)「ガサラキ」(原案・監督/1998)「火の鳥」(監督/2004)「モリゾーとキッコロ」(監督/2004)「FLAG」(原作・総監督/2006)「幕末機関説 いろはにほへと」(原作・総監督/2006)がある

*****

高橋監督自身の「敗者復活戦」を象徴する「装甲騎兵ボトムズ」。その最新オリジナルビデオアニメ「装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ」(原作・監督)がバンダイビジュアルより発売中。戦いと孤独の中に深く沈む主人公、キリコ・キュービィの若き日と彼を取り巻く壮大な陰謀が描かれる。最終巻(第6巻)は8月22日発売

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