「地上げ屋の道徳教育」

【第7話】シンドイ思いをしとるのは「道理」を外しているからや

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2008年8月27日(水)

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 実際の立ち退き交渉では、理不尽な要求をされることも少なくない。家賃を払っていないのに立ち退き料を要求してくる、相場をはるかに上回る立ち退き料を求める――。小川はごねる借家人を何人も目の当たりにしてきた。だからだろう。権利の前に義務がある、と言う。

「物事の道理について」

 いつの頃からか、「そんなん道理やんけ」とか「水は上から下にしか流れん」という言葉をよく使うようになった。物事は道理に沿って動くとオレは思うとる。この道理をきちんと捉える目と知恵がなければ、仕事も人生もうまくいかへん。一度は子供の頭に入れた方がいいと思うて、このテーマを選んでみたんや。

****

小川:お前ら、“物事の道理”って知っとるか。

サクラ:ん?

小川:物事の道理とはな、こう書くねん。「道」の「理(ことわり)」や。辞書には「物事の筋道」ってあるけど、お父ちゃんは「正しい道」って理解しとる。

リュウジ:んん?

小川:正しい道っていうのは正しい行動や。正しい考え方っちゅうことや。

サクラ:ハイ。

小川:水は上から下にしか流れんやろ。それと同じように、物事には何でも道理がある。この道理を外すと、何でもうまいこといかへん。ほんだら、お前らに道理を当てはめてみようか。例えば、勉強をせぇへんで、テストでエエ点が取れると思うか。

サクラ:そら、取られへんわ。

小川:例えば、リュウジ。練習をしっかりせぇへんで、サッカーがうまくなると思うか。

リュウジ:そら、無理やわ。

小川:そやろ、これが道理っちゅうもんや。じゃあ、道理の反対はなんや。

リュウジ:・・・・・・。

小川:さっき、リュウジが言うた「無理」っていう言葉がそうや。「無理が通れば道理が引っ込む」っていう言葉もあるやろ。・・・・・・。まあ、知らんか。道理に反することがまかり通れば、道理に適ったことが行われなくなる、という意味や。ま、この言葉も覚えとけや。いいか、絶対に無理を通そうとしたらアカンで。しんどいぞ。

サクラ:ハイ。

小川:じゃあ、この物事の道理が分かるには、どうすればいいんやろか。

リュウジ:ん〜。

小川:まあ、そやな。いつも正しい考え方や正しい行動を取る、とかやな。ほんだら、サクラ。お前にとって、学校での正しい行動って何や。

サクラ:勉強すること。

小川:おう、そうやな。それが正しいわな。それが、道理やわな。ほんで、これも言うとくぞ。物事の道理をつかむには、正しい思考回路が必要や。これは、いつも何が正しいか、考える癖をつけとかな身につかんで。しょうもない欲を持っとると、何が正しいかって分からんようになるから、気ぃつけろよ。

リュウジ:ハイ。

小川:ほんで、読書な。読書で正しい考え方を養うんやぞ。分かったな。

サクラ:ハイ。

小川:ようし。ほんだら書けよ。

「道理とは正しい道です」
「道は行いです」
「いつもどうすれば正しいかを考える」
「いつも正しい行動ができるようにする」
「正しい行いは人に影響されない」
「正しい行動は欲を捨てるところから始まる」

小川:立ち退き交渉でもな、物事の道理が重要なんや。水が高いところから低いところに流れるように、道理に沿って話を持っていかなければ、人を説得することはできへん。これは何も立ち退き交渉だけの話じゃないで。人生のあらゆる局面に通用すると思う。

****

 前に、「立ち退き交渉のコツは相手になりきること」と話したわな(第1回参照)。交渉ごとにも道理があると思うとる。道理に沿って話をすれば、相手はこちらの話を聞いてくれる。逆もまたしかりや。この道理、相手の立場に立たなければ理解できん。つまり、相手の道理をまず知ることや。
 オレの場合、相手の主張はすべて聞く。向こうの主張を聞き入れて、立場を理解して、その後にオレの話も聞いてや、と持っていく。「あんたの言うこともよく分かるけど、借りたモンはいつか返さなアカンわな。そやろ。それが今と違うか」ってな具合や。まあ、具体例を示そうか。

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著者プロフィール

篠原 匡(しのはら・ただし)

昭和50年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、日経BP社に入社。以後、主に「日経ビジネス」の記者として活動している。趣味は競艇と出張、庭いじり。著書に『腹八分の資本主義』(新潮社)、『おまんのモノサシ持ちや』(日本経済新聞出版社)がある。

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