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6:ヤマトに負けて、ガンダムに負けた

「敗北」を気持ちよく受け入れる方法(前)

  • 渡辺由美子

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2008年9月10日(水)

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【前シリーズ 「アンチ天才のボトムズ流仕事術 ~64歳の現場監督に聞け!」はこちらから】

前回から読む)

―― 前回は、自分の力量を高く評価しすぎると「負け感」からなかなか脱却できない、というお話でしたが、自分の力量というのは、なかなか正確にわからない気がします。

担当編集・Y …そういえば昔、どなたか落語家さんがおっしゃったことで、「人の噺を客として聞いてみると、俺よりちょっと下手かなと思うとだいたい自分ぐらい。俺と同じくらいかなと思うとかなり上を行かれていて、こいつはうまい! と思ったら、もうはるか上行っていると思った方がいい」という話が。

高橋 ああ、それは面白いですね。確かにそうですよね。同じぐらいかなと思ったら、実は相当上手いというのはあるな、確かに。

 僕ね、たぶんやっぱり人間は基本的に自分に甘いんだと思うんですよ。それだけだと思うんです。やっぱり自分は自分に甘いんですね。

Y 自分に甘いのが人間の基本。だとしたら、「自分の力を冷静に測る」というのは、つまりはどこか、市場なり、競技場なりに行って、値付けをしたり勝負をして、なんらかの結果が出てようやく納得できることではないのかな、と。

―― それなら私、なおさら自分の力量なんて正確に測りたくない気がします(苦笑)。「負け感」を感じている人が自分の力量を測ろうとするのは、「自分が他人と比べて負けてることを、決定的に認識する」という話になりますよね。それはしんどいと思うんです。

負けたときに、楽になるには

Y いやいやいや、だから……何か、いい負け方というのがありそうな気がするんですけどね。高校のころ柔道の授業で、青畳にばしんとたたきつけられる経験をしたときに、「投げられたのになんだか気持ちいい」と感じたことがあるんです。

 市場なり、競技場で負けたら、もちろんおっしゃるとおり敗北に深く傷つくんですけれど、何かそこから、「じゃあ次はこういう練習をしてやろう」でもいいし、「柔道ってやっぱり面白いなあ」でもいいし、「柔道もうやめようかな」でもいいですけれど、「負けた」こと自体に固着しないで済むような負け方があったら、自分の値付けを試すこと、知ることがちょっと楽に出来るかな…と。

高橋 そういうことなら「負けたら、とにかく相手を認めちゃう」というのは、楽ですよ。アイツはすごいと。その時にもう認めちゃう。何というのかな、条件をつけないで、取りあえず認めちゃう。

―― 「負けたら相手を認める」のは、楽なんですか!? 悲しくならないですか?

高橋 僕もね、いろいろあるんですよ。勝ち負けでいうと。

 僕は「ゼロテスター」(1973年)が初監督だったんですけど、その時の僕の監督業に対する評価は決して悪かったわけじゃないんですよ。オリジナル作品で1年以上続きましたから。70本ぐらい作りましたね。

 だけれどもその当時、途中から「宇宙戦艦ヤマト」(74年)が放送され始めて。

「同じスタッフなのに…!」--「ヤマト」の第1話に打ちのめされる

―― えっ……! 「ヤマト」ですか!? アニメファンを大量に生み出して社会現象にもなった。あれが同時期に。

高橋 「宇宙戦艦ヤマト」は、本放送のときには数字的には26話で打ち切りでしたから、視聴率とかそういうことで言えば負けではないんですけど、第1話を見たときに「内容的に負けた」と思ったわけですよ。

 というのは、「ヤマト」のチーフディレクターは、「ゼロテスター」でも外注で絵コンテをお願いしていた石黒昇さんですからね。僕らの仲間内もみんな「ヤマト」に関わっているわけですよ。「ゼロテスター」で一番コンテを描いてくれたのは、たぶん安彦良和さんなんですけど、安彦さんは「ヤマト」でも一番たくさん絵コンテを描いているわけです。

―― 「ヤマト」を作っているスタッフは、監督の「ゼロテスター」でも一緒に組んでいたスタッフだったんですね。

高橋 ええ。最初の頃は視聴率的に僕らの方が勝っていた。商業的にも途中までは勝っているわけです。けれどもそういうことじゃなくて、「ヤマト」の第1話が放送された段階で、ああ、同じスタッフと組んでいながら、作品的に負けていると。要するにそれはもう自分としては、監督の資質ということに関して自分で「また」疑問を持つわけですよ。

高橋良輔監督

高橋良輔(たかはし りょうすけ)

日本を代表するアニメ監督のひとり。1943年1月11日東京生まれ。1964年、株式会社虫プロダクションに入社。主 な作品に「W3(ワンダースリー)」「どろろ」「リボンの騎士」などがある。虫プロダクションを退社後、サンライズ創業初期に「ゼロテスター」(監督/1973)に参加。代表作として「太陽の牙ダグラム」(原作・監督/1981)、「装甲騎兵ボトムズ」(原作・監督/1983)「機甲界ガリアン」(原作・監督/1984)「蒼き流星SPTレイズナー」(原作・監督/1985) 「沈黙の艦隊」(監督/1996)「ガサラキ」(原案・監督/1998)「火の鳥」(監督/2004)「モリゾーとキッコロ」(監督/2004)「FLAG」(原作・総監督/2006)「幕末機関説 いろはにほへと」(原作・総監督/2006)がある

*****

高橋監督自身の「敗者復活戦」を象徴する「装甲騎兵ボトムズ」。その最新オリジナルビデオアニメ「装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ」(原作・監督)がバンダイビジュアルより発売中。戦いと孤独の中に深く沈む主人公、キリコ・キュービィの若き日と彼を取り巻く壮大な陰謀が描かれる。最終巻(第6巻)は8月22日発売

コメント3件コメント/レビュー

ペールゼンファイル、拝見しています。底力を感じます。(2008/09/10)

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いただいたコメント

ペールゼンファイル、拝見しています。底力を感じます。(2008/09/10)

「ゼロテスター」の名前を聞いて、主題歌の歌詞とメロディが子門真人の声でリアルに思い浮かびました。きっと毎週見ていたんでしょう。しかし、どんな内容だったかが、まったく思い出せません。確かに、同時期のヤマトに対して、作品的に相当「負け」ていたんだろうと思います。(2008/09/10)

昔、高橋監督がやや自嘲気味に自作は「牛のよだれ」(つまり)たいした人気もないのにだらだらと続く、というジンクスがある、と言われていたのも思い出しました。しかし、今回のインタビューには、例えれば地面を自分の足でしっかりと歩いてきた職人の言葉で、朴訥ながら重みを感じます。それにヤマトやガンダムを一目見て「負けた」と感じたというのは、やはり高橋監督は客観的な評価の目をもっておられたということでしょう。どこぞの首相の「客観的」とは雲泥の差です。(2008/09/10)

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