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7:完膚無きまでに負けるという「幸運」

「敗北」を気持ちよく受け入れる方法(後)

  • 渡辺由美子

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2008年9月17日(水)

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【前シリーズ 「アンチ天才のボトムズ流仕事術 ~64歳の現場監督に聞け!」はこちらから】

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―― 1973年に初監督の「ゼロテスター」が始まったら、裏番組で「宇宙戦艦ヤマト」が始まった。主要なスタッフはほとんど同じだったにも関わらず作品の出来が「ヤマト」のほうが明らかに上だと感じて打ちのめされた、という衝撃のお話をうかがいました。

高橋 だから、「ゼロテスター」が終った後は、ふてくされて“逃げ”に入った(笑)。「次の企画はもう僕はやりませんから」と。

―― どうされたのですか。

 それで、「スタジオあかばんてん」という会社を作ったんです。取りあえずちょっと辛い思いをするわけですから、あかばんてんという仲間が集まる隠れ場所を作ってしばらく楽しくやろうと。そのうちに何かまた新しいものが出てくるだろうということですよね。虫プロにいた頃もそうでしたからね。何かあると「もうやらない」と言って仕事をしない(笑)。

―― 当時も、「そんなつまらない仕事ならやらない方がいい」と言ってふてくされていたとか。

高橋 そんなつまらないというよりは、「つまる仕事」をしている人がいるわけですよ。それでやっぱりすごい人の演出を見て、アイツはすごいなと思って。その隣で、同じように演出仕事を「こなして」いる人がいるんですけど、僕から見ると、明らかにアイツのは面白いけど、こなしている人のはつまらないわけですよ。

 でも1週間に1本放映していくということは、このつまらないものも数のうちなわけですよね。

―― 手間と時間がかかるアニメを週に1本作るためには、クオリティよりも完成をゴールにせざるを得ないときがあると言うことですね。

高橋 でも、「数のうち」の仕事をするくらいなら、後ろ指を指されても遊んでいた方がいいというような心持ちになっちゃったんです。本当は、数のうちの仕事をこなしていくのも結構大変なんです。

 だからたぶんあの時の僕は、やっぱりどこかで格好をつけて、「そんなこなし仕事ならやらない方がいい」という……鬱屈した何かを発散し続けることしか出来なかったんですよね。

「ダメだったら、それはそれでいい」

―― そこだけお聞きしていると、最近流行ったニート発言のようですね。「働いたら負けかなと思っている」という(笑)。

担当編集・Y ご自身はそういう鬱屈した感覚にとらわれていて、ここから抜け出さなきゃという感じだったんでしょうか。それとも誰かのせいでこんなになったんだから、俺がこうなるのは俺のせいじゃないみたいな……。

高橋 いや、僕は誰かのせいとは全然考えなかったですけど。どこか、それはそれでいいんだと思っていましたよ。

―― それはそれでいい?

高橋 そこは、ふてくされている時期があっても許される虫プロダクションという環境があったということですね。

 普通は、この人はすごいとか、この人がいいなと思ったら嫌になるじゃないですか。その人の前から逃げ出したいとか、自分がもう、けちょんけちょんになって暗い気持ちになるとか。

 でも虫プロにいる限りは、いいものは素直に認めようという精神がどこかにありました。認めちゃっているにもかかわらず、自分がやらないということは本当はよくないんですけれども、それでいいんだと思っていましたね。全然暗い気持ちにならないかというとそんなことはないですけど、でもやっぱり暗くならなかったですね、あんまり。

Y 前回の「負けたら相手を全面的に認めると楽になる」というお話とつながりますね。

―― 虫プロの環境のどんなところが良かったのですか。

高橋 それはつまるところ「自分の居場所がある」ということですね。

 いいものはいいものとして認めるけれど、それでもどこかに自分の居場所や何かが自分にはあるだろうと思っていましたからね。また、何かあるだろうと思わせてくれる場所だったんです、虫プロは。

 何とかなるだろうというのも、根拠はないんですよ。やみくもに信じていただけで。でも、何かある、何とかなるだろうという楽観的なところは、小さなことでも、今でも僕にはあるかもしれないですね。今はダメでもそのうち何か浮かんでくるかなとかというね。

高橋良輔監督

高橋良輔(たかはし りょうすけ)

日本を代表するアニメ監督のひとり。1943年1月11日東京生まれ。1964年、株式会社虫プロダクションに入社。主 な作品に「W3(ワンダースリー)」「どろろ」「リボンの騎士」などがある。虫プロダクションを退社後、サンライズ創業初期に「ゼロテスター」(監督/1973)に参加。代表作として「太陽の牙ダグラム」(原作・監督/1981)、「装甲騎兵ボトムズ」(原作・監督/1983)「機甲界ガリアン」(原作・監督/1984)「蒼き流星SPTレイズナー」(原作・監督/1985) 「沈黙の艦隊」(監督/1996)「ガサラキ」(原案・監督/1998)「火の鳥」(監督/2004)「モリゾーとキッコロ」(監督/2004)「FLAG」(原作・総監督/2006)「幕末機関説 いろはにほへと」(原作・総監督/2006)がある

*****

高橋監督自身の「敗者復活戦」を象徴する「装甲騎兵ボトムズ」。その最新オリジナルビデオアニメ「装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ」(原作・監督)がバンダイビジュアルより発売中。戦いと孤独の中に深く沈む主人公、キリコ・キュービィの若き日と彼を取り巻く壮大な陰謀が描かれる。最終巻(第6巻)は8月22日発売

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牛島 信 弁護士