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【第8話】バブル末期に踊ったツケで自分のことを知ったんや

2008年9月3日(水)

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 十数年、立ち退きに応じなかった借家人の説得に成功した小川宇満雄。相手の立場に立ち、相手の道理を理解することが重要という。水が高いところから低いところに流れるように、物事には道理がある。それは、立ち退き交渉だけでなく、あらゆる場面に当てはまるだろう。

「自分のことを知る」

 前に、バブル崩壊で手痛い目に遭うた話をしたやんか(第3話参照)。不動産バブルの恩恵で稼いだカネを自分の実力と過信したが、結局、バブル経済の崩壊とともに、稼いだカネは泡のように消え去ってもうた。今回は、その後の話をしようと思う。

****

小川:おい、お前ら。自分のことってわかってるか。

サクラ:何それ?

小川:要するに、自分のことや。じゃあ、お前は誰や。

サクラ:サクラ

リュウジ:リュウジ

小川:そうやな。でも、それだけで自分が特定できてると思うか。「小川サクラ」「小川リュウジ」という名前はほかに結構、いてるかもわからんで。そやろ。

サクラ:うん?

小川:そやから、お前らを特定するためには、もっと説明せなアカンねん。例えば、サクラのお父さんは誰か、サクラの身長はどのくらいか、体重はいくらか。好きな食べ物は何か、とか。

サクラ:納豆。

リュウジ:カレー。

小川:そやそや。そんな風にして、自分を特定することをいっぱい書き出してみ。どれくらい自分を説明することができるかな。

「小川サクラ、144センチ、35キロ、女、学校に行っている、バスケ好き、CD好き、ソロバン習ってる、牛乳嫌い、チーズ嫌い、唐揚げ大好き、駄菓子屋行く、パン好き、10歳、体育が一番好き・・・・・・」

小川:30個くらい簡単に出てくるやろ。ほんだら、お前らをもっと特定するために、嬉しかったことや悲しかったこと、腹が立ったことなど、今日まで自分が感じたことを書いてみ。

「楽しかったこと・・・学校に行ってる時、友達と遊んだこと、運動会したこと、体育、生駒の登山、田舎で花火、北海道、遠足、ドラマ、プロレス、ディズニーランドに行ったこと・・・」
「嬉しかったこと・・・バスケクラブに入れた、友達ができた、妹ユウキが生まれた、プレゼントもらった、友達と遊んだ、一輪車に乗れた・・・」
「悲しかったこと・・・転校した時」
「ぶちぎれたこと・・・友達とケンカ、弟とケンカ」
「嫌だったこと・・・おなかが痛くなったこと、友達に悪口を言われた、ケンカした」

小川:ほら、今書いたやつを見てみいや。お前らの嬉しかったことや悲しかったことには人が絡んでいることが多いやろ。

サクラ:うん。

リュウジ:あっ、ほんまや。

小川:自分が1人で生きていないということがわかるやろ。

サクラ:うん、わかる。

リュウジ:そんなん、当たり前やん。

小川:そうそう、そやな。ほんだら聞くぞ。お父ちゃんが死んだら悲しいか。

サクラ:めっちゃ悲しい。

リュウジ:うん。

小川:そやな、悲しいな。逆も一緒やぞ。お父ちゃんがお前らより先に死ぬのは当たり前の順番やけど、お前らが先に死んでもうたら、父ちゃんや母さんがどれだけ辛いかわかるか。

サクラ:うん、わかる。

リュウジ:うん。

小川:そやから言うとくぞ。万一、学校とかでいじめにあっても、自分1人で生きてるんと違うんやから、1人で悩んだりしたらアカンぞ。父ちゃんや母さんはいつもお前らの味方やから、ちゃんと相談して、絶対に死ぬとか考えたらアカンねんぞ。そのために、“心の強さ”とか“克己心”とか勉強してんねんからな。

 人間は生きているうちに、楽しいことがいっぱいある。たとえ辛いことがあっても、世の中にはお前らよりももっと辛くて悲しい人たちがいる。それも忘れるな。わかったな。

サクラ:ハイっ。

リュウジ:うん。

小川:ようし、覚えとけよ。1人で生きてるのと違う、というのはほんまに大切なことや。1人で生きているようでも、実はまわりの人に生かされている。そのことを忘れたらアカンで。お父ちゃんな、バブル期に不動産投資で失敗して苦労したんや。それでも今、こうしていられるのは多くの人に助けられたからや。

****

コメント6件コメント/レビュー

この回を読んで、バブル期、その後の私の経験を思い出しました。私も多くの人の援助を受けて何とか最終的な破綻をせずに済みました。小渕内閣の時「中小企業特別融資」というのが実施されましたが、取引先の銀行の営業が来て「3千万円借りろ。」と言う。その頃バブルの清算もようやくのこと終わり特別な資金需要もなっかったのでこの話を断ると「ゴルフ会員権が下がっているからどうか。それともベンツでも。」と言う。「バブルの時に多くの中小企業がこの誘いに乗って苦労したのに、また同じ事をさせるのか。」と聞くと「保証協会の実績が欲しいので付き合え。」とのこと。以来色々なやりとりがあったが私は、銀行とは距離を置いて仕事をしています。特に今のような景気動向が不安定な時代は、借金を出来るだけ減らして身の丈にあった経営をするべきだと思います。(2008/09/07)

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「【第8話】バブル末期に踊ったツケで自分のことを知ったんや」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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この回を読んで、バブル期、その後の私の経験を思い出しました。私も多くの人の援助を受けて何とか最終的な破綻をせずに済みました。小渕内閣の時「中小企業特別融資」というのが実施されましたが、取引先の銀行の営業が来て「3千万円借りろ。」と言う。その頃バブルの清算もようやくのこと終わり特別な資金需要もなっかったのでこの話を断ると「ゴルフ会員権が下がっているからどうか。それともベンツでも。」と言う。「バブルの時に多くの中小企業がこの誘いに乗って苦労したのに、また同じ事をさせるのか。」と聞くと「保証協会の実績が欲しいので付き合え。」とのこと。以来色々なやりとりがあったが私は、銀行とは距離を置いて仕事をしています。特に今のような景気動向が不安定な時代は、借金を出来るだけ減らして身の丈にあった経営をするべきだと思います。(2008/09/07)

やったらあかんことを一回もやらずに生きていくなんてドダイ無理な事なわけで。誰だって失敗、成功そういったものがある。仕事も人生も、中にはいじめをしたことある人も読者にいるはず。その失敗から何を学んでどのように生きていくかに人の値打ちはかかっていると、私は思います。迷惑かかった人はそんなんでは許されへんって思うだろうけど、誰だって人を傷つけていく事はあるだろう。それを気にして生きていくなんてできるわけないし、全ての人の期待にこたえられるような人は、「神」と呼ぶ。こうやって失敗したり勉強した事を一所懸命伝えることは、子供の心に何か伝わるものがあるはず。それが間違いかどうかなんて、将来子供があるときにふっと思う事で、このお父ちゃんの一所懸命な姿は生きるという事の大切さを語っていると私は感じます。お父ちゃんはまた10年後、勉強して今とは違う事を言うだろう。でも、今伝えられる事を伝えきろうという姿勢を見せる事こそ教育ではないのか。一度でも人に迷惑をかけた者は、教育者としては失格なのだろうか?そんな人間に私は興味ない。(2008/09/05)

8億以上の借金を踏み倒しているように読めてしまいました。法律的には片がついているのかもしれませんが、すっきりしないものを感じます。生涯をかけてでも、少しずつ返していって欲しいなと感じました。借りたお金は、バブルの地上げは通常の事業の失敗とは少し性格が異なると思いますので、皆少しずつでも返していくような社会規範を望みます。(2008/09/05)

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夢の実現にあたっては強く「念ずる」。そうした心構えを支えにビジネスの世界の荒波を渡ってきました。

後藤 忠治 セントラルスポーツ会長