「地上げ屋の道徳教育」

【第9話】常軌を逸した執念も時には必要になるもんや

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2008年9月10日(水)

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 バブル期に独立し、億単位の大金を掴んだ小川。だが、不動産投資に手を出した結果、20億円の借金を抱えることに。バブル崩壊で本業である立ち退き業務も縮小。利払いさえまともにできない状況に追い込まれた。その状況を克服し、復活を遂げたのはあきらめない執念だった。

「めげない、くじけない、なまけない」

 人生を生きるうえで、時たま思い出す言葉やフレーズってあるやろ。落ち込んだ時に自分自身を奮い立たせ、調子をこいている時に自分を戒めるような言葉やな。正直、子供たちには早すぎる気もするが、知っていて損はないと思うから、いくつか教えてみた。あっ、先週の最後、「めげない、しょげない、なまけない」と書いたけど、「めげない、くじけない、なまけない」の間違いや。訂正してお詫びします。

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小川:おう、今日は「心のフレーズ」と言うか、「人生訓」と言うか、普段の「心構え」と言うか、そんなことを勉強するで。

リュウジ:何それ。

小川:生きるうえで頭に入れておいた方がいい言葉や。いくつかあるからな。まずは、「めげない、くじけない、なまけない」。よし、「めげる」ってどういう意味や。

サクラ:何かうまくいかん時とか、友達とケンカした時とか。

リュウジ:失敗した時とか、お母さんに怒られた時とか。

小川:そうやな。じゃあ、そんな時に、めげないためにはどうしたらエエと思う。

サクラ:そんなんできるん?

リュウジ:・・・・・・・。

小川:それはな、いつも一生懸命取り組むことや。お父ちゃん、社会人になってからな、あまりめげへんようになってん。何でか言うたら、とにかくたくさん本を読んで、必死で仕事をしてきたからや。少々失敗してもな、必死でやっている限り、めげへんねん。オレの言っている意味が分かるか。

サクラ:何でそうなるん?

リュウジ:必死でやったら??

小川:お前ら一度、学校の勉強を必死でやってみたらエエ。それで100点を取れんかっても、一生懸命やった結果やったら清々しい気分になるで。運動会の競争でもそうや。一生懸命練習して、必死に走れば順位が何位やろうが悔いは残らへん。でも、逆に手を抜いたり、ダラダラしたりして失敗したら周りも怒るやろし、自分もめげるわな。オレの言うてること、わかるやろ。

サクラ:うん、それやったらわかる。

リュウジ:うん、リュウジもや。

小川:そやで。とにかく何ごとにも一生懸命や。「くじけない」と「なまけない」の意味はわかるやろ。端折るで。ほな、次のフレーズや。いくで、「義理を欠かない、安目を売らない」や。

サクラ:ギリを欠かない?

リュウジ:ヤスメ売らない、何それ?

小川:おう、そうや。大事な言葉や。「義」「理」を「欠」かない。漢字で書くとこうや。どういう意味かというとな・・・。おい、リュウジ。お前、この間、お父ちゃんが見に行った授業参観日の時、忘れ物して隣の人に物を借りたやろ。その後、お父ちゃんは怒ったわな、恥ずかしいって。

リュウジ:うん、覚えてる。

小川:物を借りるやろ。その時、お前は隣の人に“義理を受けた”ことになんねん。お前は義理を受けた以上、その義理を返さなアカンねん。じゃあ、逆に隣の人が何か忘れ物をした時、お前が持っているくせに貸さなかったらどうや。それは“義理を欠く”ということや。エエな。次に、「安目を売らない」。これ、わかるか。

サクラ:えっ、わからん。

リュウジ:うん、何それ。

小川:字を見たら何となくわかるやろ。例えば、授業中に友達とぺちゃくちゃしゃべってて、先生に注意されるやろ。これを、「安目を売る」というねん。まっ、要するに“下手うち”やわな。弱みを出したり、ミスったりして自分の価値を下げるという意味やな。下手ばっかり打っていたらどうなると思う。

サクラ:それはアカンで。自分が嫌になる。

リュウジ:父さんやお母さんに怒られる。

小川:そうやろ。自分が落ち込む元やし、友達をなくしたりするかわからんしな。じゃあ、下手をうたんためにどうしたらいい?

サクラ:授業をちゃんと聞く。

リュウジ:一生懸命やる。

小川:そうや。義理を欠いたり、安目を売ったりする奴は嫌な奴やろ。そんな奴にはなりたくないわな。

サクラ:うん、絶っ対にイヤ。

リュウジ:うん、リュウジもや。

小川:人を頼ったり、物を借りたり、カネを借りたり。簡単に恩を受けたりせんことや。そんで、ルールをきちんと守って、義務をちゃんと果たして、人に迷惑をかけんことや。・・・・・・。これ、結構難しいけどな。お父ちゃんの課題でもあるわ。心のフレーズはまだあるで。ただ、少し長くなるから後の方でまたやろうか。

 最初にやった「めげない、くじけない、なまけない」。大人になると、この意味がよくわかると思うで。バブル崩壊後、仕事が激減した話は前回したわな。でも、あきらめずに頭を回していれば、道は拓けるもんや。

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著者プロフィール

篠原 匡(しのはら・ただし)

昭和50年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、日経BP社に入社。以後、主に「日経ビジネス」の記者として活動している。趣味は競艇と出張、庭いじり。著書に『腹八分の資本主義』(新潮社)、『おまんのモノサシ持ちや』(日本経済新聞出版社)がある。

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