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ヘタな英語でも米国投資家は熱狂、脱・グーグル経済圏を唱える男にインタビュー

「頓智・(トンチドット)」は“世界”の視野を変えられるか?

2008年11月11日(火)

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 2008年9月10日、シリコンバレーでトップクラスのベンチャーキャピタリストたちを前に一人の日本人が拍手喝采を浴びていた。岐阜県大垣市に本社を構えるベンチャー、頓智・(トンチドット)代表取締役の井口尊仁氏だ。

(関連記事はこちら→「ウェブ起業家デビュー戦「TechCrunch50」をさらった日本人たち」「iPhoneのカメラを通して情報を得る「SekaiCamera」、第一弾サービスを発表」)

 iPhoneを通して見る現実世界の映像に、さまざまな情報を付加して表示する「Sekai Camera(セカイカメラ)」を引っさげ、井口氏は米サンフランシスコのデザインセンターで開催されたイベント「TechCrunch50」のファイナリストとして乗り込んだ。米大手ブログメディア「TechCrunch」が開催するTechCrunch50は、投資家やベンチャーキャピタリストを前にスタートアップ企業がプレゼンするイベント。ただし、その貴重な切符はお金をどれだけ積み上げても手に入れられるものではなく、もちろんコネも効かない。幾度となく審査を経て、選ばれた企業のみがようやくファイナリストとして登壇できる。

 その貴重な切符を手に入れられるのは約50社。今年はその切符を手に入れるために世界50カ国から約1100社の応募が集まり、日本からは今回初めて頓智・を含む3社が選ばれた。優勝したのはTwitterのエンタープライズ版「Yammer」だったが、最も会場を沸かせ、イベントを大いに盛り上げた陰の殊勲賞を頓智・のSekai Cameraに与えることに異論を唱えるものはいないだろう。それほどまでにSekai Cameraはシリコンバレーの住民たちを刺激したコンセプトだった。

 頓智・がTechCrunch50の壇上で映し出したSekai Cameraのデモ映像は以下の通り。

 Sekai Cameraは、一般的に「仮想現実(Virtual Reality)」の対をなす概念として呼ばれる「拡張現実(Augmented Reality )」を具現化したコンセプト。仮想現実が仮想空間に現実世界を作り出すことを目的としているものに対し、拡張現実は現実空間に仮想的な付加情報を表示する。iPhoneのカメラを通して見る風景に、さまざまな人たちが書き込んだ情報が表示され、またその場で自分も書き込める世界を作り出そうとしているSekai Camera。

 この夢のようなコンセプトの具現化に奔走する井口氏に話を聞いた。

(聞き手は 原 隆=日経ネットマーケティング編集)

*    *    *

聞き手:原(以下H): TechCrunch50での喝采ぶりは米国でも様々なメディアに取り上げられていましたね。

 それは「ものすごかった」の一言。それまでのデモでは聴講者はみな下を向いてMac bookを叩いていたのに、僕らのデモが始まったとたん、みんな顔を上げて釘付け。スタンディングオベーションに大爆笑で、会場が一気に盛り上がりましたよ。ほかのデモが、何となくグーグルのラボの一部のような感じだったんです。検索をどう改善するかとか、SNSをどう盛り上げていくかとか。要はWeb2.0の流れで、既にあるサービスを組み合わせたり複合させたりするいわゆるマッシュアップの世界に閉じているんです。

 どれも新しいイノベーションを起こそうといったものではなかった。プレゼンテイターもみな慣れているし、また聴講者もそういう話を聞き慣れている。そういった意味ではすぐに想像できてしまう範囲のデモばかりでした。

ヘタな英語と、「脱・グーグル経済圏」が大受けの理由

頓智・(トンチドット)代表取締役の井口尊仁氏

 あれだけの注目を集めた理由はいくつかあると思います。まず、英語が下手(笑)。英語が下手だとみんな顔を上げるんです。変なやつがおかしな英語で一生懸命プレゼンしているぞ、と。さらに、よくよく聞いていると、どうやら発想が自分たちと違うぞ、という感じになる。パソコンやケータイのディスプレイの向こう側に閉じていないSekai Cameraは、日本人独特な価値観のなかから生まれてきたもの。改めて日本の面白さに気付いてくれたのではないでしょうか。

 同時に、Web2.0と騒がれた潮流が行き詰まりを見せていることも背景にあるんでしょう。リーマンをはじめとする金融危機が顕在化する前から、IPOやM&Aの件数が減っている。IPOができないということは、要は売り上げがないということ。グーグルのAdSenseでキャッシュバックしてもらうようなビジネスモデルしかない。グーグルの作り出した経済圏から飛び出すようなものがなくなってきていたわけです。

 結局、Web2.0エコノミーはグーグルがスタートアップ企業を買うことで成り立っています。TechCrunch50でも「君たちはグーグルに買われるまで、どうやっていくんだ?」という質問がありましたが「Never!(あり得ない)」と言い返してやりましたよ。うまいことやってグーグルに売り抜けてキャピタルゲインを手に入れることなんて全く考えていない。

 Web2.0のカルチャーは終わりを告げています。独自で産業を作り出し、独自で利益を上げるといった本当の意味でのイノベーションがなくなっていたところに現れた、日本から来た僕たちのコンセプトに新しい価値観を感じ取ってくれたんでしょう。

 とにかく、僕らは野蛮極まりなかった。デモの完成度も低く、プロトタイプは見せられないの一点張り。荒削りな状態で、しかもよく聞き取れない英語で突っ込んでるわけです。このチャレンジング精神がもともと開拓民の魂を持っている彼らの琴線に触れたんでしょうね。

 まぁとにもかくにも、忘れられない経験をさせてもらえました。TechCrunch50って選出されても当日決められた時間まで誰にも話しちゃいけないんです。ブログにも書いちゃだめ、スターバックスで全然関係ない人に話してもだめ。これはまた非常にストレスのたまることでした。そもそもサンフランシスコに向かう理由を家族にも言えないんですから。

 着いてからも地獄。着いてすぐにデモのリハーサルをするんですが、すべてダメ出しを受けました。TechCrunch50は著名なベンチャーキャピタリストを集めたショーなんです。聴講者が数十万円払って参加するイベントですから、そのグレードに応えられないものは出せない、出しちゃいけないというポリシーが徹底されていました。

 うちのスタッフはどんなときでもジョークを忘れないタフな連中ですが、さすがにあのときはピリピリしてましたね。シナリオもスライドも全部差し替え、ようやく主催者側にOKを出してもらったのがオープニングの前日でしたから。

*    *    *

 SekaiCameraの機能は、iPhoneのカメラを通して見た現場の画像に、他人が貼りこんだ文字や動画、音声などの情報が見える、というもの。例えば本屋さんで本棚をiPhoneのカメラを通して見ると、「この本は面白いよ」「これは大笑いしたよ」とか、他の人のコメントが本の表紙に重なって表示される…といったイメージだ。

H: SekaiCameraは、「コンセプトはすばらしいが、多様な位置・画像情報を個々のコメントとどうリンク付けするのか。はたして実現できるのか」という疑問の声も多く聞こえていますが。

コメント7件コメント/レビュー

元ネタは「電脳コイル」のメガネでしょうか。(2008/11/12)

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「ヘタな英語でも米国投資家は熱狂、脱・グーグル経済圏を唱える男にインタビュー」の著者

原 隆

原 隆(はら・たかし)

日経コンピュータ記者

宮崎県出身。お酒が好きです。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

元ネタは「電脳コイル」のメガネでしょうか。(2008/11/12)

私は現役時代にはなかなか出来なかった花鳥風月をゆっくり楽しむ事を、定年後に実行しています。野草,樹木,野鳥の図鑑を見て今まで名前も知らなかった草木や鳥の名前を探しながら楽しんでいるのですが、写真では見分けが付かないものも多く、この記事を見て、鳥に向けて検索すれば名前や生態が分かるとか、木に向けて検索すれば、春夏秋冬の花や実紅葉の様子等が分かるとうれしい。高齢者にも使い易くしてくれるとありがたい。(2008/11/12)

頓智.のこの技術コンセプトはめっちゃ面白いですね。じじいゲーマーですが、MSXやファミコンで初めてゲームを遊んだ時に似たwktk感を覚えました。iPhoneではなく、DSiをプラットフォームにすれば、まさにイノベーションが起こるはず。きっと大喜びするので(多分、既に興味を持っているだろうと思います)、任天堂の岩田さんに「開発費ください」といってみてください。(2008/11/12)

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