人員削減、成果主義の導入、非正規雇用者の活用…。1990年代初頭のバブル崩壊以降、日本企業はそれまでの雇用慣行にメスを入れることで激しい環境の変化を生き延びた。その一方で、日本企業の競争力の源泉、社員に深刻な危機が訪れる。日経ビジネスが描いた日本経済の40年、かつて「気楽な稼業」と流行歌に歌われた世界に訪れた変化は今も経営の大きな課題だ。
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2006年11月6日号より
部下の人事評価、セクハラ・パワハラ対策、情報管理、内部統制…。
中間管理職が“多重責務”に押し潰されそうになっている。
仕事が増えても給料は上がらず、やる気はどの階層よりも低下する。
生気のない上司を見て、若手は「管理職にはなりたくない」と言い出した。
組織を支える「ゼネラリスト」の崩壊。日本企業の新たな危機だ。
(細田 孝宏、篠原 匡)
トヨタは既に気づいている。
10月16日、愛知県豊田市。トヨタ自動車本社工場にほど近い雑居ビルで、ある研究会の第1回会合が開かれていた。
トヨタ自動車やデンソー、アイシン精機などトヨタグループ中核6社の人事担当者と組合幹部が集まった研究会。そのテーマは「グローバル化時代のホワイトカラー職場マネジメントのあり方」である。
1988年以降、トヨタグループは中部地区の主要企業と連携し、産業や労働、雇用などの研究を進めてきた。労使の代表が集う研究会の舞台となっているのは中部産業・労働政策研究会(中部産政研)という財団法人だ。
過去18年の研究テーマは、現場の社員に焦点を当てたものがほとんどだった。ところが今年、管理職の問題を初めて取り上げた。
増える“無免許”管理職
「管理職に何かが起きている」
中部産政研の矢辺憲二・主任研究員はこう語る。
今年1月、矢辺氏は藤村博之・法政大学専門職大学院教授の協力を仰ぎ、工場現場とホワイトカラー職場の組合員、管理職を対象とした意識調査を実施した。すると、「仕事の面白さや仕事をしていて良かったと実感できる場面が増えたか」といった問いに対して、ホワイトカラー職場の管理職では、明らかに悪い数値が目立った。
急速な海外展開を進めるトヨタグループ。ビジネスのスピードは加速し、管理職の仕事量も増加している。その一方で、派遣社員などの非正社員は既に欠かせない戦力となった。団塊世代の退職後は再雇用高齢者の比率も増える。管理職には、実務遂行能力に加えて、多様な人材をまとめていく力が求められている。
急増する日常業務と部下のマネジメント。管理職は抱えきれない仕事の量と責任に悩み、やりがいを感じられなくなっているのではないか――。こんな懸念を抱いた矢辺氏は、管理職の問題を研究会の俎上に乗せることを決めた。本来、管理職とは関係のない労組までテーマに賛同したのは、トヨタグループの組織全体がミドル層の現状に危惧を抱き始めた証左だろう。
「“無免許”管理職が増えている」
花王もトヨタと同様の懸念を背景に、ミドルの問題と向き合い始めた。94年に廃止した新任の主任や課長向けの階層別研修を2004年に復活させた。管理職の再強化に乗り出しているのだ。
花王では、評価の高い社員を将来の幹部候補として選抜し、育成する制度を1998年に導入。「横並びの人材育成はやめる」との方針を明確にした。だが、管理職の能力開発を自己責任としたことに対して、見直しを検討せざるを得ないデータが出てきている。
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