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謝りかたの作法

2008年12月26日(金)

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 今年の後半はトラブル続きだった。駆け出しの働く女性から、ベテランの営業マンから、果ては、管理職のエリートキャリアウーマンに至るまで。恨みたくなるほど、多くの人たちとトラブッた。

 これらいくつかの事例は既にこのコラムで紹介済みだ。一体どうしてこんなことに巻き込まれるのかと、じっくり考えてみた。特に、相手が女性の場合、問題が起きた背景になにか共通点がないか気になり検討してみると、いくつかそれはあった。

 まず格闘して思ったのは、女性の自尊心の高さが硬い壁となって存在したということだ。それはキャリアの歳月の長短に関係ない。自尊心が自らを省みることを退け、自尊心が成長を止めているように私には映った。彼女たちに共通していたのはまず、自分の非を認めないというところだった。私はそれを許さなかったから彼女たちとトラブッたというわけだ。

 自分自身の正当化や責任転嫁に、彼女たちは自尊心を総動員したような印象を受けた。だが、彼女たちがそこまでして強固に守り抜いた自尊心は、実は自尊心なんかではなく、「自分は自分が思うほど仕事ができる女ではない」と自覚できない、弱さ幼さの鎧にすぎない。

 もしこれが、「あ、自分は正当化している」とか「私ったら責任転嫁してる」と自覚できていたなら、それほどまでに強固な主張はできただろうか。自覚できないからこそ、朗々と正当性を主張できたのではないか。そして、「自分は間違っていない」と死守するほどに、その人に成長は、ない。そこにあるのはそうやって生きてきた結果としての“幼さ”だ。

 自分の非を認めるのは、辛いことだし落ち込むし惨めになるし自己嫌悪で救われない感情に苛まれる。そんなの私だって避けられるものなら避けたい。だが私の経験では、成長はその落ち込みからしか生まれないのだ。

 これら一連のトラブルで得るものもあった。

 トラブル解決のために登場した役員の男性社員がいた。問題を起こした女性の、上司にあたる男性だ。

 彼は私に会うなり一度だけ深々と頭を下げて部下の不始末を謝った。それから私の話をじっくりとただ聞いた。私が、自分の話が男性に届いた、と自覚できたのは、その男性が私の話を聞くほどに、目に見えて落ち込んでいったからだった。「情けない」をその男性は何度か口にした。

 話し終えた私に、「もうほかに僕が聞いておいたほうがいい話はないですか」とまだ聞こうとする姿勢を崩さなかった。そして「これですべてです」と言うと、別れ際によりいっそうに深々と頭を下げて、再度の詫びを言った。

 部下には自尊心が邪魔をして届かなかった話が、より高い自尊心があっていいはずの上司にはストレートに届き、届くほどに彼は上司としての自己嫌悪に陥っていった。それを目の当たりにした私は、彼がなぜ組織の長になれたかを理解し、彼がおそらくこの問題を見事に解決してくれるだろう、と予感した。

 また、まったく別のトラブルを起こした女性の上司である男性にも会った。

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「謝りかたの作法」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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