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「事業家は、困難と闘うときには、喜んで困難と闘うべきものである」

山下亀三郎伝・4

  • 山岡 淳一郎

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2009年1月13日(火)

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 総理大臣の年俸が1万円ほどだった1903(明治36)年、山下亀三郎は英国の古船を5万円で買い取り、「喜佐方丸」と名づけた。こんにちの首相の年収は約4000万円。現代なら喜佐方丸は2億円くらいの価値だろうか……。

(イラスト:茂本ヒデキチ)

 亀三郎は、36歳にして念願の船主となった。

 ただ、船を持ったものの、どこへどう動かせばいいのか見当がつかない。「見るまえに跳んだ」のはいいが、着地の仕方がわからない。無茶といえば、無茶である。

 亀三郎、船のやり場に困り、海運ブローカーに相談をすると、神戸の船会社の上海航路に回してはどうか、とアドバイスされた。上海は、欧米資本が入って活況を呈しつつあった。ヨシッ、上海航路でひと勝負、と喜佐方丸に雑貨を満載させて神戸と往復させてみた。しかし、過当競争気味で運賃は正味250円にしかならず、まったくソロバンに合わない。燃料の石炭代も払えない。これが続くと、二、三航海でバッタリ倒れてしまう。いきなり壁にぶつかってしまったのだった。

 毎晩、真綿で首を絞められるような苦しさを感じ、いくら酒を呑んでも眠れなかった。

「日露戦争近し」の情報、かえって首を絞める

 まったく光が差さなくても、時間は容赦なく過ぎる。
 そんな頃、同郷の海軍将校、秋山真之から貴重な情報がもたらされた。

 「ロシアとの戦争が近いぞ」と秋山は耳打ちした。
 「いくさが始まるのか。海軍は、御用船を集めるのだな」山下が念を押した。

 秋山は、黙ってうなづく。戦争が勃発すれば、海軍は民間の船舶を好条件で借り上げて軍務に使った。三菱財閥の日本郵船は、「西南の役」や「日清戦争」で一手に御用船を仕切って莫大な利益をあげている。一杯船主にすぎない山下にとっても、御用船は垂涎の的である。情報をつかむと山下の動きは、速い。古谷久綱のツテで、海軍の軍政を掌握する斎藤実次官に会い、「喜佐方丸をぜひ、御用船にしていただきたい」と売り込んだ。

 「沙汰を待て」と斉藤次官は言った。

 しかし、待てど暮らせど「沙汰」はおりてこない。船を動かしても、停泊させてもカネはどんどん出ていくばかりだ。

 いよいよ年の瀬が押しせまった。金策に悩む山下は、他力本願ではやはりダメか、と御用船に見切りをつけ、石炭商売の知り合いが多い門司に向った。筑豊の石炭の積出港である門司は、大手銀行の支店も集まり、なかなか景気がよかった。

 山下は老舗の旅館「川卯」に旅装をとき、門司じゅうを走り回って、資金集めにとりかかった。だが……石炭の売買ならともかく、船は素人の山下に二つ返事でカネを貸してくれる奇特な人間はいない。カネの無心に行くと「バクチみたいな船稼業から手を引け」と説教される始末だ。

 進退、ここに窮まった。

 資金繰りに疲れはてた山下は、川卯の二階で手すりにもたれて海を眺めた。狭い関門海峡を汽船や帆船が、ひっきりなしに行き交っている。海面下の潮流は怖ろしく速い。船の商売は難しい。ふと、このまま俺も世間の潮に流されてしまうのだろうか……と弱気になった。

 と、そこに「ダッダッダッ」と階段を駆け上がってくる足音が聞こえた。

しかし、船は出て行く

 仲居が「ただいま、これが届きました」と電報を持ってきた。東京からの至急電報だった。何だろう、と開けてみた。

「喜佐方丸に御用船の命下る」

 ついに来た! これで生き延びられる。山下は、二度、三度と文面を読み返した。間違いない。御用船の命令を受けている。

 で、喜佐方丸は、いま、どこだ。
 調べてみると長崎の佐々港で三井物産の石炭を満載し、今日にも上海に向けて出航するという。山下は頭を抱え込んだ。

コメント1件コメント/レビュー

勝負できるときに素早く動けるか。これが勝つ秘訣かもしれません。ただ、負けているときは辛くてしかたない。そのなかで、チャンスを物にできる人が、お金持ちになれるんだなと思いました。(2009/01/31)

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勝負できるときに素早く動けるか。これが勝つ秘訣かもしれません。ただ、負けているときは辛くてしかたない。そのなかで、チャンスを物にできる人が、お金持ちになれるんだなと思いました。(2009/01/31)

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