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採用は5分で決める「一顔一決主義」

山下亀三郎伝・7

  • 山岡 淳一郎

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2009年2月2日(月)

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(イラスト:茂本ヒデキチ)

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 山下亀三郎は、他者の智恵「外智」と自らの判断力「内智」が経営を左右すると説く。他人の真似だけでもいけないし、オレ流の独りよがりでもダメ。バランスが重要だという。
 では、山下自身の内智とは、どのようにものだったのか?

 山下汽船は、別名「山下学校」と呼ばれたほど、多くの人材を輩出した。その人材育成に山下流の智恵が働いている。社員の採用も、ユニークだった。

 亀三郎は、会社の草創期は故郷愛媛の「地縁」を頼りに社員をかき集めたが、事業が軌道にのると、大学卒の新戦力を積極的に登用している。

 採用の核心をこう語った。

「わしのところは小僧上がりと大学の俊秀とを二つの柱として組織したい。郷里の伊予から小学校、高等小学校を終えたばかりの筋のいい小僧を『店童』として引っ張ってくる。大学は、京都(帝大)は末広重雄博士、東京(帝大)は穂積陳重先生からそれぞれ糸を引いてもらって連れてくる。給料は大会社の最低2割増しだ」

 末広、穂積とも同郷出身で、それぞれの帝大法科に君臨する「法王」だった。山下は、両教授の人脈をフルに活用している。

 山下は、社員の人事権を、終生、誰にも渡さなかった。採用面接には、どんなに忙しくても、山下自身が臨み、裁決した。採用、不採用の決め方が、これまた独特である。パッと見で決めてしまうのだ。本人は「一顔一決主義」と言っている。

「創業以来、人を採る信念は少しも違わない。すなわち一顔一決主義で、そうして両親があるかないかを聞き、その父と母を暗黙中に思い浮かべて採否を決するのである。だから早いのは二、三分、いくら遅くなっても五分以上かかったことはない。百人くらいの採否を決めるのには三時間もあったらたくさんだ」

同じ飯を喰い、過酷な環境で働く

 二、三分で人生を決められるほうはたまったものではない。面接をろくにしないで採否を決めるとは人を馬鹿にしている、と不採用者から非難の声が上がった。

 しかし、山下は動じない。

「私は、書物は眼鏡なしでは一行も読めないけれど、人間を見る目は眼鏡など必要としないつもりだ。学校の成績などは、その課目を記憶していたか、いなかったかというだけの話であって、人間としての神経が間違っていたら、いかに立派な成績表でも役に立つものではない」

 若者の「人間としての神経」を見極めるのは、五分もあれば十分だと亀三郎は言うのだ。この絶大な自信、人を見る「内智」は、浮きつ沈みつの人生経験で養われた。いかに科学技術が進歩しても「人間を見る目」は、実体験で身につける他はない。

 山下は、人の評価、「信用の鍵」は「第三者」が握っている、ともいう。

 本人の自己申告よりも、他人の評価のほうが正しい。だから、傲慢な経営者が「このくらいは他人にはわかるまい」と不正をしていても、周囲は重々承知なのだ。第三者から「あのやり方ではだめだな」と見られている会社は、だいたい潰れる、と警鐘を鳴らす。

 山下は人事権を握り、叩き上げとエリートのの二本柱を育て上げた。

 「店童」は、高等小学校を優秀な成績で卒業 (現在の中学二年終了)した者のなかから、「意志強固」な少年が選ばれている。店童に採用されると、神戸本社二階の「店童部屋」に入る。衣食住は会社もちで、シャツと棒縞の着物、角帯、鳥打帽、下駄の制服を支給される。

 支店に配属された店童は、朝六時に起床。社屋を掃除し、社員のインク壺を満たしてメモ帳をそろえる。机を整えてから食堂に行き、所長以下、全員と朝食をとる。朝、昼、晩の三食、皆で「同じ釜の飯を食う」のが常だった。

 八時半の始業と同時に事務所は戦場と化す。

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