「世界ブランドの日本人を追え クエスト 探求者たち」

世界ブランドの日本人を追え クエスト 探求者たち

2009年2月6日(金)

拍手を信じない、舞台のカリスマ

演劇人 野田秀樹 〈NODA・MAP〉主宰

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 一つの世界で、頂点を極めることは難しい。

 劇作家であり、演出家であり、自らも俳優を務める野田秀樹は、演劇の世界で、30年以上トップを走り続けている。

 1980年代を席巻した劇団〈夢の遊民社〉を覚えているだろうか。76年に東京大学演劇研究会を母体として結成された〈夢の遊民社〉を主宰したのが野田秀樹だ。〈夢の遊民社〉は、「小劇場演劇第3世代」の代表として、常に注目を浴びる舞台を発表し、観客動員数でもトップを走っていた。

30年以上、トップを走り続ける

 いわゆる「新劇」と呼ばれる大手の既存劇団のリアリズム演劇のアンチテーゼとして自由な演劇や舞台芸術が目指されるようになったのが、60年代。故・寺山修司などがその先駆けで、「第1世代」と呼ばれ、彼らの実験的で前衛的な舞台は、国際的にも評価が高かった。学生運動なども沈静化した70年代には、つかこうへいなどが活躍。観客動員数も大幅に増え、若い世代を中心に支持を得たのが、「第2世代」である。

 それに続いた第3世代の中でも、〈夢の遊民社〉は、常に時代の寵児だった。

 「野獣降臨(のけものきたりて)」で、岸田戯曲賞受賞(83年)。86年、劇団結成10周年記念の「白夜の女騎士(ワルキューレ)」「彗星の使者(ジークフリート)」「宇宙(ワルハラ)蒸発」の書き下ろし3部作一挙上演では、国立代々木競技場第一体育館に1日で2万6400人もの観客を集め、日本演劇界初の快挙と報じられた。

 85年の科学万博つくば博での上演や、企業との提携や協賛を集めた大規模公演など、公演のプロデュースシステムでも、それまでの小劇場演劇の常識を覆し続けた〈夢の遊民社〉は、92年の解散までに、総ステージ数1205回をこなし、総観客数は81万2790人に上るという。

 93年、俳優たちが所属する劇団というシステムを脱し、プロデュース公演を行う企画製作会社〈NODA・MAP〉を設立した野田は、ここでも次々と斬新な舞台を送り出し、いくつもの賞を受賞し、数多くの観客を集めている。

 2007年に上演された「THE BEE」では、紀伊國屋演劇賞、毎日芸術賞、朝日舞台芸術賞、読売演劇大賞と日本演劇の主だった賞を軒並みに受賞し、読売演劇大賞では大賞のほか、最優秀作品賞、最優秀演出家賞、最優秀男優賞までも一挙に受賞した。

 頂点を極めることは難しい。いわんやそれを続けることは。

 30年以上にわたりトップを走り続ける野田秀樹の秘密は何だろう。

本当にいいと思って見てくれているのか?

 演劇人・野田秀樹を振り返るならば、1992年の〈夢の遊民社〉解散へと立ち戻らざるを得ない。

 観客動員数も落ちてはいない。人気絶頂とも言える時期の劇団解散には、当時、誰もが驚いた。

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著者プロフィール

酒井 香代(さかい・かよ)

エディター、ライター。
1985年 京都大学文学部(哲学科)美学美術史専攻卒業。広告制作・編集プロダクションにて大手航空会社機内誌(日本航空機内誌「ウインズ」)はじめ、企業誌を中心に編集・執筆をする。2000年よりフリーランスに。「クロワッサン」(マガジンハウス)や「ユーヴァレール」(企業誌)などの人物インタビューはじめ、「別冊太陽」の「気魄の人 横山大観」「ルノワール」「古代九州」などの執筆・編集に関わるなど、旅・酒・美術・建築などの取材を続けている


このコラムについて

世界ブランドの日本人を追え クエスト 探求者たち

世界を舞台に活躍し、世界を相手に勝負を挑む日本人たち――。中には、日本では無名であっても、欧米各国で唯一無二の存在として名を知られる日本人もいます。その姿を追うドキュメント番組、「クエスト〜探求者たち〜」がwowowで始まりました。このコラムでは番組と連動し、各分野で活躍する日本人の姿を文章で描いてきます

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