• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

恐慌の奔流を食い止めた泥亀の「人脈ダム」

山下亀三郎伝:12

  • 山岡 淳一郎

バックナンバー

2009年3月9日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

成金炎上 昭和恐慌は警告する

図、『成金炎上』の主な人物とその相関図

※『成金炎上』の主な人物とその相関図はこちら

単行本、「成金炎上」

 「ニッポンの1929」。百年に一度の危機に、私たちは、かつて来た道を再び歩むのだろうか。そして、最後に生き残るのは誰なのか? 日経ビジネスオンラインで好評をいただいてきた本連載が、大幅に加筆、新たな書き下ろしとともに再構成され、単行本として発売されます。

 「国を背負って金を獲れ」と雄飛した成金たちの活躍と黄昏、昭和恐慌、そして戦争に至る道を、「金ぴか偉人伝」の金子直吉、山下亀三郎、そして三井財閥の大番頭、池田成彬(いけだしげあき)、政界で財政を取り仕切った井上準之助の四人を軸に描き出します。我々は昭和恐慌から何を学ぶべきなのか、ぜひご一読下さい。

(前回「大不況のときは、世界旅行に出よう」から読む)

 大戦景気で内部留保を膨らませた山下亀三郎は、戦後の反動不況を「逆転の発想」で乗り切った。船価が暴落し、他の商船会社が「売船」で経営規模を縮小するのに懸命ななか、山下は英国のポンド安に目をつけ、ロンドンの現地法人に派遣した田中正之輔を通じて一挙に5隻もの大型船を購入している。

 「相場が下がっているときこそ、買い」と、大向こうをうならせた。

 大手との競合で、苦戦続きだった台湾航路には見切りをつけた。しかも台湾から撤退する代償として、日本郵船から30万円をせしめている。転んでもタダでは起きないしぶとさだ。一転、新市場として脚光を浴びていた中国に進出。広州、上海、漢口との定期航路を開いて台湾から引き揚げた船を投入した。

 山下の経営判断は、一見、嗅覚に頼っているようで、実は情報に基づいていた。その出所は、豊富な人脈からだった。

 関東大震災から昭和金融恐慌にかけて、日本経済がキリモミ状態で落ちていくとき、盟友の金子直吉が率いる鈴木商店は破綻したが、山下は生き延びている。

鈴木商店が破綻し、山下が生き延びた理由は

(イラスト:茂本ヒデキチ)

 山下が金融恐慌でサバイバルできた理由のひとつは、親しい間柄でも、手形の持ち合いをしなかったことだといわれている。

 かつて日露戦後の不況で自殺寸前まで追い込まれた山下は、「二度と手形の持ち合いはすまい」と肝に銘じ、どんなに追い込まれても姿勢を変えなかった。

 が、サバイバルできたのは、そればかりではない。山下は政財界の上層部に網の目のように人脈を広げていたのである。

 たとえば、1929年の株価暴落後、恐慌下の日本経済の舵取りに大きな影響を与える三井銀行筆頭常務・池田成彬との関係もそのひとつだ。

 池田はハーバード大学を卒業したエリートで、42歳にして三井銀行常務に就任した切れ者だった。山下は、自社のメインバンクが第一銀行なので三井とは疎遠だったが、なんとか金融界の巨頭と契りを結ぼうと気を配る。

泥亀が、どこの家でもまず親しくなるのは・・・

 そして山下は、共通の趣味である骨董を介して池田に近づき、瞬く間に懇意となった。なにしろ池田は山下の葬式で葬儀委員長を務めるほどだから、その親密さが想像できるだろう。ハーバード大卒のエリートと商店奉公から成り上がった船主。水と油のようだが、互いを補完していたのかもしれない。

 池田は、晩年、親しい経済人との対談で、山下の人となりを次のように語っている。

「あの人は不思議な人で……どこへ行っても奥さんと親しくなる。昨日まで知らなかった家にいつの間にか、ことわりなしに入れるようになる。とにかくそういうコツを心得ていた」(「故人今人」)

 対談相手が山下の腰の低さを指摘すると、池田はこう応える。

「威張らなかった。あの人は苦労したものです。七転び八起きとはあの人のことをいうのでしょう。いわゆる人生観というか、人間学を、すっかり身につけていた。あの人は、人に不愉快なことを言われても、別にそれをいつまでも根に持っていないで、すぐ忘れてしまう。そこがえらい」

 では、山下のほうは、切れ者の池田成彬をどう眺めていたのか。これが丸っきり正反対で、おもしろい。山下は、こう語っている。

コメント0

「泥亀サバイバル~金ぴか偉人伝・2」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック