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【時代のリーダー】新宮 康男・住友金属工業会長

人心掌握するバランス感覚「関西財界のエース」の期待

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2009年4月7日(火)

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先行きが見通しにくい2009年。困難な時代には新しいリーダー像が生まれるはずだ。これまでも企業経営や政治に新しい時代を切り開いたリーダーがいた。そんな時代のリーダーを日経ビジネスが描いた当時の記事で振り返る。
(注)記事中の役職、略歴は掲載当時のものです。

* * *

1993年3月22日号より

天性のバランス感覚で人を動かし、住金に一時代を築いた。「やわらか頭」CM、不況下での大型設備投資と一見大胆な策を打ち出すが、そこに至るプロセスはち密そのもの。その手腕から「住友グループの顔」「関西財界のエース」との声もかかり始めた。

=文中敬称略(村上 広樹)

新宮 康男(しんぐう・やすお)氏
1926年兵庫県生まれ、67歳。48年東京大学法学部卒、住友金属工業入社。71年経理部長。74年管理部長。77年取締役管理部長。81年常務。83年専務。84年副社長。86年社長。92年会長に就任。

 昨年9月3日、住友銀行頭取の巽外夫は大阪・北浜の住友金属工業本社をふらりと訪れた。会長の新宮康男に会い、イトマン問題の処理に協力を依頼するためだ。「イトマンはもう単独では生き延びられない。住金に一肌脱いでもらう以外、解決の道はない」。この時点で巽の腹は、住金グループの鉄鋼商社、住金物産による救済合併で固まっていた。

 巽と新宮は、巽が住銀本店営業部副部長、新宮が住金経理部資金課長を務めていた当時から30年来の付き合い。巽はこの長い付き合いにイトマン問題の命運をかけた。

 新宮に向き合うと巽は自分の考えを率直に切り出した。巽の説明を聞いて新宮が言う。「どうしても合併せなあきまへんか。自主再建は本当に無理ですか」。「本体はともかく、関連会社、イトマンファイナンスの不良債権が多すぎる。ここで区切りをつけることが必要です」。「分かりました。引き受けましょう。老舗、イトマンが消滅するのは残念ですが、ほかに方法がなければ仕方ありません」。

 巽の記憶によれば、新宮の返事はほとんど即答だった。「私がイトマンと住金物産の合併を考えているというのは、彼にとっては初耳だったはず。にもかかわらず、その場で分かったと言ってくれた。そこに彼の男気がある」と巽は言う。

「社員に120%の頑張りは求めない
100%の力の和で経営を考える」

 巽に限らず、新宮を知る人の多くは、彼を「信頼に足る人物」「期待を裏切らない男」と評する。住金入社以来、順調に出世の階段を駆け上がってきた。支えとなったのが、周囲から寄せられるこの信頼感だ。

 新宮は自らを「学校で一番になったこともないし、先を読む特別の才能に恵まれているわけでもない」と評し、「だからこそ、人の話をよく聞いて、人に動いてもらうことが大切だ」と話す。どうしたら人をその気にさせられるか。ビジネスマンとして、あるいは経営者としての新宮は常にこの点を第一に考えて行動してきた。「大きな組織は、しょせん一人の力では動かせない。社員全員に持てる能力を100%発揮してもらい、その和で経営を考えることが大切だ。100%力を出してもらえればいい。120%の頑張りは求めない」。新宮はこう言う。

 55年の結婚以来、夫の言動を間近で見守ってきた妻、隆子の新宮評は「ずるい人」だ。「あの人には年の離れた兄と姉がいて、小学生のころから夏休みの工作や昆虫採集の宿題を全部やってもらっていた。小さい時から人をその気にさせるのがうまいのよ」。この話になると、新宮は「宿題なんか好きなもんにやらしといたらええやんか」とニヤリと笑う。

 「好きなもんにやらしといたらええやんか」の精神は、企業人の立場でも基本的には変わらない。新宮は住金入社後、ほぼ一貫して本社の経理、管理畑を歩んできた。製鉄所の現場、特に技術に関しては、分からないことの方が多いという気持ちがある。これが逆に新宮を技術重視のメーカー経営へと駆り立てている。「技術立社」の実現は、新宮がことあるごとに強調してきた経営の重要テーマだ。

 技術陣の活性化をいかに重視しているかは、これまでの経営判断にもよく表れている。例えば、今年1月に発表した和歌山製鉄所・中径シームレスパイプ(継ぎ目なし鋼管)製造設備の全面更新。不況下で収益低迷にあえぎ、シームレスパイプの需要見通しも明るいとはいえないこの時期、業界には「なぜ今、全面更新か」という疑問の声が多い。それでもあえて住金が約900億円にも上る投資に踏み切ったのは、「技術立社と言いながら、せっかくできた新技術の芽を摘んでいいのか」との論理が働いたためと考えられる。

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三品 和広 神戸大学教授