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「新人諸君、身なりは安上がりでも、安酒は飲むな」

山下亀三郎伝:15

  • 山岡 淳一郎

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2009年4月6日(月)

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(前回「危機は『人脈』に頭を下げ、復活は世界を見る『戦略』で稼ぐ」から読む)

(イラスト:茂本ヒデキチ)

 山下亀三郎は、世界恐慌の大津波が押し寄せるなか、幹部社員の大量脱退による経営危機を、コスト削減と日本興業銀行の貸出制度の活用で切り抜けた。

 興銀からの資金を豪州―アジア間の小麦輸送、満洲から欧州への大豆輸送に集中的に投入し、経営を立て直した。その配船オペレーションは、世界的な食糧や資源の流れに乗じた戦略性を帯びていた。

 山下は、窮地を脱してひと息ついた。

 しかし、恐慌は猛威をふるっている。失業者は百万人を超え、「都落ち」する人の群れが東海道を歩いていく。東北地方は飢饉に見舞われ、親は血を分けた娘を売って、糊口をしのぐ。生まれたての赤ん坊を圧殺し、口減らしをしなければならなかった。

 都会でも「大学は出たけれど」職はなく、時代閉塞の壁が立ちふさがる。東京板橋区のある集落では、「もらい子殺し」が横行していた。住人がわずかの手数料で「もらい子」をさっさと始末してしまうのだ。恐慌は人の心を破壊した……。

 そんな時代、傾きかけた会社を本格的に再生させるには一にも二にも「人材」である。

 山下は組織と人事の改革に着手した。役員の若返りを断行し、冗員を削る一方で、次の時代を託せそうな学卒を積極的に採った。さらにライバル船社との業務提携に精力を傾け、人事面に「共有」の発想を取り込んだのだった。

競争して潰れるなら、協力を選ぶ

 たとえば、浅野財閥の船会社、東洋汽船を有力船主のひとつとして受け入れた。東洋汽船が保有する船11隻を共同経営する合意をとりつけ、1931年6月、正式契約を交わすと同時に東洋汽船社長の高橋勇を取締役として山下汽船に迎えたのである。山下―東洋は、共同出資の海運会社を設立した。

 あるいは三井物産に頼み込んで幹部候補生を貰い受け、海外拠点に置いた。大阪商船からも夏場の閑散期に余った船腹を借り受け、北洋材の積み取りに就航させる。

 川崎汽船との間では、互いの運航効率を高めるために北米地区の集荷代理店業務の一切を山下汽船が引き受け、北米山下海運が配船を全面的に管掌した。川崎汽船の出張員が山下の北米店で仕事をする体制が敷かれた。両社は、北米山下海運の共同経営(出資は山下51%、川崎49%)にも乗り出した。

 不景気の長いトンネルのなかで、山下は、それまでの「競争」一辺倒から「協力」へとシフトチェンジをしたのであった。

 海運界は、上げ潮のときは生き馬の目を抜くような熾烈な闘いを展開するが、不況の底で下手なダンピング合戦を展開しようものなら、共倒れしてしまう。誰かが調整役にならねばならない。海運界で「長老」の仲間入りをしつつあった山下が、リーダーシップをとり、その任に当たった。

成金炎上 昭和恐慌は警告する

図、『成金炎上』の主な人物とその相関図

※『成金炎上』の主な人物とその相関図はこちら

単行本、「成金炎上」

 「ニッポンの1929」。百年に一度の危機に、私たちは、かつて来た道を再び歩むのだろうか。そして、最後に生き残るのは誰なのか? 日経ビジネスオンラインで好評をいただいてきた本連載が、大幅に加筆、新たな書き下ろしとともに再構成され、単行本として発売されます。

 「国を背負って金を獲れ」と雄飛した成金たちの活躍と黄昏、昭和恐慌、そして戦争に至る道を、「金ぴか偉人伝」の金子直吉、山下亀三郎、そして三井財閥の大番頭、池田成彬(いけだしげあき)、政界で財政を取り仕切った井上準之助の四人を軸に描き出します。我々は昭和恐慌から何を学ぶべきなのか、ぜひご一読下さい。

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