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対米戦争を避けよ! 泥亀、奔走す

山下亀三郎伝:17

  • 山岡 淳一郎

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2009年4月20日(月)

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(イラスト:茂本ヒデキチ)

 軍靴の音の高まりとともに海運界を暗雲が覆った。

 四方を海で囲まれた日本は、明治維新以降、国策的な海運政策で業界の発展を図った。海外との大動脈である航路が、万が一にも途絶するようなことがあれば、資源や生活物資の輸出入を船に頼る日本は、文字どおり「沈没」してしまう。

 海運界は、西南の役、日清・日露の戦争、第一次大戦といくさのたびに膨張した。

 だが、1931年の満州事変、テロとクーデターの時代を経て、37年の盧溝橋事件から日中の全面戦争へ突入すると、一転、存亡の危機が迫ってきた。

 海運界の長老・山下亀三郎は、日本と中国の和平を願っていた。これ以上、深みにはまれば、商売どころではなくなる。まして超大国のアメリカと戦うようなことになれば、日本は、粉砕される。

 山下の脳裏に若い頃に見たニューヨークの摩天楼がよみがえった。豊富な石油資源を背景に発展する米国の産業界……。戦争は避けねばならない、と山下は強く念じた。

 しかし、日中戦争は泥沼に入ろうとしていた。

 蒋介石率いる国民政府は南京から重慶へ拠点を移し、英米の支援を受けて徹底抗戦の構えをとる。延安を根拠とする中国共産党は、ソ連のサポートで力を蓄える。状況は、膠着化しつつあった。

 日本政府は、ここで、国民政府内で「対日和平」を主張する重鎮・汪兆銘へ提携の手をさしのべた。汪は、法政大学に留学した経験を持つ知日派であった。

和平派を支えるべく、船を出す

 山下亀三郎は、この動きに敏感に反応した。

「汪先生が政権をとれば、戦火はやむ。彼を裏で支えてやろう」

 山下は、汪兆銘に和平の望みを託した。

 日本の支援をとりつけた汪兆銘は、主戦派の蒋介石と幾度となく激論を交わした。汪には「革命の父」と呼ばれる孫文直系の自負があった。孫文の遺言を起草したのは汪だった。孫文は日本と戦うな、と言っていた。汪は、和平すべし、と蒋に迫った。

 だが議論は平行線をたどるばかりだった。汪は「おまえは日本の手先か」と痛罵された。

 山下の期待も虚しく、1938年12月、汪は中央政治委員会の席上、委員長の蒋介石と激しくぶつかり、もはやこれまで、と飛行機で重慶を脱出した。昆明で給油後、一気に仏領インドシナ(現ベトナム)の河内(ハノイ)に移った。蒋介石と袂を別った。

 汪は、ハノイの雑踏に身を隠した。日本側は、汪を中心とした新政権の樹立を構想し、その動向を注視していた。一方、蒋介石には、重慶を去った汪は日本の軍門に下った裏切り者と映る。テロリストが、血まなこで汪の姿を探し求めた。

 1939年3月20日午前3時、ハノイのコロム街に銃声が響きわたった。
 汪兆銘の隠れ家を四人の中国人が急襲し、汪の寝室に踏み込んで拳銃を乱射したのだ。

 ところが、偶然にも、その夜に限って汪兆銘は秘書と寝室を取り換えており、被弾を免れた。腹部に三発の銃弾を受けた秘書は、息も絶え絶え、汪から預かっていた自分名義の銀行小切手帳にすべてサインを済ませ、絶命した。

 汪兆銘と秘書の遭難の詳報は、22日、東京に伝わった。政府は、すぐに五相会議(総理、陸軍、海軍、大蔵、外務)を開き、陸軍大佐に汪の「救出」を命じた。大佐は、「5.15事件」で暗殺された犬養毅の息子で、支那通の政治家・犬養健を同行者に指名した。

 犬養たちは、極秘裏にハノイに向かうことになった。
 汪を救い出すには船が必要だ。ここで山下の登場である。

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