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ビジネスパーソンは『日本史A』で歴史視点を手に入れよう

ノンフィクション作家佐藤優氏×『成金炎上』山岡淳一郎氏対談 第1回

  • 山岡 淳一郎

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2009年5月25日(月)

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 昭和恐慌がいま、私たちに警告を発している--。最新作『成金炎上』で成金の興亡、そして昭和恐慌を描くなかで、社会から切り離され、孤立した人々がテロリズムに駆り立てられる可能性を示唆した山岡淳一郎氏と、現代日本におけるテロルとクーデターの予兆を鋭敏にとらえた佐藤優氏の対談連載がスタート。ふたりは近著で「歴史は繰り返す」という危機感を語っている。

佐藤 山岡さんの『成金炎上』、読ませていただきました。本当に面白かったです。偶然ですが、私、今、井上日召(※)の著作の『一人一殺』を復刻して、解説をつけて出そうと思っているんですよ。山岡先生が、やはり同じような時代状況の本を構想されたことに偶然では済まないものを感じております。
(※昭和のテロ横行の端緒となった「血盟団事件」の首謀者)

山岡 僕は大正から昭和にかけて時代の流れに沿って、この本を書いたのですが、佐藤さんと魚住昭さんの対談集『テロルとクーデターの予感 ラスプーチンかく語りき2』を拝読して、なるほど、こんにちの現象から国家と資本の相克を分析すれば、こうなるのか、歴史はくり返しているなぁと、あらためて感じました。

佐藤 優(さとう まさる)
1960年生まれ。起訴休職中外交官にして作家。2002年に背任容疑で逮捕後有罪判決を受け、現在上告中。著書に『国家の罠~外務省のラスプーチンと呼ばれて』(毎日出版文化賞特別賞)『4101331723』(大宅壮一ノンフィクション賞)『テロルとクーデターの予感 ラスプーチンかく語りき2』など。雑誌連載も多数。
(写真:大槻 純一、以下同)

佐藤 鈴木商店というのは、我々も名前だけは聞いたことがありますし、そこから派生した企業体もたくさんある。でもなぜ、あの鈴木コンツェルンが崩壊したのか。鈴木崩壊と同時に(旧来の)財閥の力が強まったプロセス、そのあたりが解き明かされるところがご著書の魅力の1つですね。

 いきなり話がそれますが、今日はちょっと変わったものを持ってきたんです。

 実は実業系の高校生が使う日本史Aの教科書なんですよ。今、大学進学を希望する人たちは、日本史Bの教科書を使うんですね。山岡先生や私たちが高校生の頃に使った日本史Aの教科書は、現在のBの比較的重要なところだけを書いて薄めたという感じだったんですが、今の日本史Aっていうのは、全然違うんです。近現代史だけなんです。

『成金炎上』と『日本史A』で歴史の再現性を学ぼう

山岡 ほう。歴史を古代から中世、近世、近代と下ってくるパターンじゃないのですか。

『改訂版 日本史A』(山川出版社)
購入は山川出版社のホームページから

佐藤 世界史Aも同じく、近現代史に特化しているんです。で、実は日本史の近現代史、つまり日本史Aでは、山岡さんが扱っておられるテーマが一番手厚く扱われているんです。通常の、受験向けの教科書には出てこないけれど重要な話ですね。世界恐慌を経た後で、銀行の集中率や占有率がどう変わっているかだとか。そんなデータが高校の教科書に出ているわけです。台湾銀行や第十五銀行の崩壊とか、こういったことが載っていて、案外、ビジネスパーソンには、この日本史Aの教科書がお薦めだなと最近思っているんです(笑)。

 歴史には、反復現象がありますから、近過去を振り返ることの重要性を常々感じております。この教科書もそうですが、山岡さんの本は、あえて歴史をふり返るという意味ですごくいい本が出たなと、そんなふうに興奮しながら読みました。

山岡 ありがとうございます。

佐藤 日本史Aの教科書にも、鈴木商店が1カ所だけ出てくるんです。あ、ここだ。

山岡 「連鎖的に経営危機に」と書かれていますね。この連鎖の出所、おおもとが肝心ですよね。

佐藤 ただ、「鈴木商店」という名前は、教科書に出る話で、大学入試でも穴埋め問題くらいでは書いたかもしれないけれども、実は我々の多くは、詳しく知らなかったですよね。

山岡 鈴木商店は、第1次大戦で好景気を背景に、売上高で三井物産を凌ぐほどの大きな会社になっていたのに、昭和の金融恐慌で一気に破綻する。政党間の対立や、いろいろ絡んでいるのですが、いわゆる支配層の鈴木商店を救済するか否かの「総意」のようなものが、非常に大きく影響している。そして、三井銀行の大番頭、池田成彬のコール市場からの資金引き揚げ、今で言う「貸し剥がし」によって、とどめを刺されます。

 この流れは、現代に置き換えれば、やはり資本と国家のぶつかり合いの中で資本に対して公的な支配力が入って、それを取り込んでいくパターンとよく似ている。三井や住友、三菱にしろ、あの頃の財閥は、政府と極めて近かった。さらに資本と国家の衝突は、もう1つ、井上準之助と池田成彬が金解禁を巡ってぶつかり合う局面でも現れました。これは、成金を政府に近い財閥がのみ込むのと違って、財閥の巨大資本と大蔵大臣の正面衝突。社会的、文化的な衝撃波は、すさまじいものだったと思います。

佐藤 分かります。

山岡 井上準之助は、日銀育ちで初めて大蔵大臣になった人ですが、自分の政治的立場を貫くために世界の通貨制度のスタンダードと信じる「金本位制」にこだわった。しかし、英国はじめ先進国はどんどん金本位制から離れる。早晩、日本も離脱せざるを得ないと考えた池田は、為替変動を視野に「ドル買い」に走る。ここで井上は烈火のごとく怒って、ドル買いの阻止に出る…。

 池田の行為は、結果的に「売られた日本、買われた米国」との批判を浴びて、ナショナリズムの集中砲火を浴びました。2人の衝突をうまく利用したのは、最大の官僚組織だった軍部と、それに近い政治勢力でした。

 井上と池田は、勝者のいない戦いをしてしまったんですよ。井上はテロに遭って暗殺され、三井財閥も総帥の團琢磨が暗殺された。この流れは、よく覚えておかなければならないでしょう。

 もちろん、単純には比較できませんが、私は佐藤さんの『テロルとクーデターの予感』を読みながら、村上ファンドの村上(世彰)氏と検察のぶつかり合いとの類似性を、ふと感じました。

ITバブルを経て“ベンチャー”の定義が変質した

佐藤 私も『成金炎上』を読みながら同じように感じました。いや、実に面白いですよ。それから、もう1つ感じたのは、やっぱり当時の起業家というのは企業の負債に対して無限責任を負っているということの重さです。自分の会社に対する責任感とはまた別の観点で会社に対する愛着が深い。責任感という観点でも、この鈴木商店には学ぶべきところが非常に多いんじゃないのかなと思いましたね。

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