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「カネの誘惑を断ち切れば、英雄になれる」危険な時代

ノンフィクション作家佐藤優氏×『成金炎上』山岡淳一郎氏対談 第2回

  • 山岡 淳一郎

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2009年6月1日(月)

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――成金の興亡と昭和恐慌を描くなかで、孤立した人々がテロリズムに駆り立てられる可能性を示唆した山岡氏と、現代日本におけるテロルとクーデターの予兆を鋭敏にとらえた佐藤氏。明治以降の官僚支配が、新興企業群を成金として嘲る雰囲気を生み出し、成長を阻害してきたのではないか。これは『成金炎上』のテーマのひとつだった。

*     *     *

佐藤 『成金炎上』を読んで堀江貴文さんを思い出しました。僕は堀江さんには何回か会ってます。最初はお金のためのお金を集めているのかなと思ったんですけれども、初めて話をしたときに、非常に面白い人だと気付いたんです。あの人は超人類になりたいんです。人類というのは科学技術の成果によって死を克服できると、堀江さんは確信しているんです。だからそのために金を集めているんですね、自分が永遠に生きるようになるために。

佐藤 優(さとう まさる)
1960年生まれ。起訴休職中外交官にして作家。2002年に背任容疑で逮捕後有罪判決を受け、現在上告中。著書に『国家の罠~外務省のラスプーチンと呼ばれて』(毎日出版文化賞特別賞)『4101331723』(大宅壮一ノンフィクション賞)『テロルとクーデターの予感 ラスプーチンかく語りき2』など。雑誌連載も多数。
(写真:大槻 純一、以下同)

 堀江さんは宇宙には必ず生命体があるはずだし、我々が移住できるところがあると夢見ています。これは19世紀末のロシアの思想家のニコライ・フョードロフという人と同じ発想です。万人を全員復活させると空気が足りなくなるから惑星間移動をしないといけない。そういう非合理な発想からロケットを考えるんですね。

 ロケット工学は本来、非合理な部分を切り捨てて、軍事の役に立つから進めたんですけれども、堀江さんの飽くことなき企業拡大への欲望には非合理な発想があった。同時に、僕は堀江さんのやることが2つ、国家とぶつかったと思います。

 1つは象徴天皇制への違和感。象徴天皇制のもとでの議院内閣制は時間がかかるから、大統領制がいいと言った。もう1つ、彼が、株式の分割で狙ったこと。1万分割、10万分割と繰り返して、最終的にはライブドアの株で大根を買える世界をつくりたいと。

山岡 それは、通貨になりますね。通貨発行権は、国家の高権。そこに穴をあけようとした。

官の力学で拓銀は潰された

佐藤 天皇制に手を付け、貨幣をなくして、ライブドアという枠組みの中にいれば回っていけるような世界をつくろうとした。官僚が不気味なものと思って、初期に除去しようとしたのはよく分かりますよね。それを本人に指摘したら、そういうことなのか、と(笑)。

 天才というのは、無意識のうちに行動して、それを何度も繰り返す。だから外側で解説する役割の人が必要です。結論から言うと、後発資本主義国である日本の場合には、やっぱり官僚とケンカしたらダメですね。負けます。それから、普段、ウィン・ウィン・ゲームでみんなが儲かっているときはいいけれども、みんなで損失を負担する状況になったときが問題。

 マルクスが『資本論』で書いていますが、資本家は、自分の超過利潤が減ることには我慢できる。でも自分の資本がマイナスになって削られるとなったら、徹底的に抵抗すると。景気循環の中で恐慌や長期不況が続いたとき、「かわいくないところ(前回参照)」に全部負担がいくんですよ。

山岡 おっしゃるとおりです。この本で書いた時代、1927(昭和2)年3月、大蔵大臣の片岡直温が議会の審議中に野党の追及を浴びて、つい「渡辺銀行がとうとう破綻しました」と口を滑らせた。そこから、いわゆる金融恐慌が起きるわけですが、根本的な問題は不良債権処理でした。関東大震災の後に闇雲に発行して「財界のガン」と呼ばれた震災手形の処理です。

 公費を投入して、鈴木商店―台湾銀行などが抱える不良債権を処理してしまおうというわけですが、見逃せないのは、それと同時に「震災地の二流、三流ボロ銀行の整理」を狙っていたんですね。片岡自身が、新聞のインタビューで「強制的にも(整理を)断行しようとした」と述べています。

 ところが、政治的対立もあって、あたふたしているうちに金融恐慌の対策は後手、後手に回って、当初は生かすはずだった鈴木商店を潰し、弱小銀行も吹き飛ばす。宮内省御用達の「第15銀行」まで倒産させている。結局、当初は2億円の公費投入で済むはずだったのが、7億円以上かけている。90年代のバブル崩壊後の不良債権処理や、今回の世界同時不況での政府の動きをみていると、何度同じことをくり返すのかと……。

佐藤 日本でいうと、拓銀(北海道拓殖銀行)をつぶしたときのような感じですね。本当に拓銀をあの程度のことでつぶす必要があったのかどうか。

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「カネの誘惑を断ち切って、英雄になった人物」で誰でも知っている人物がいます。一万円札の人・福沢諭吉です。 彼は回顧録「福翁自伝」でこう書いています「およそ世の中に何が怖いと言っても、暗殺は別にして、借金くらい怖いものはない」 しかし、彼は「暗殺」に対しては極度に臆病でした。何度も攘夷派に命を狙われ、「押入れの奥に逃げ込んでびくびくしていた」頃を思えば、「今の時世(明治30年)は保安条例で追放されはするが、暗殺されないだけ、まことに結構なことだ」と明快に肯定しています。今求められるのは「愛に基づくテロリズム」とは対極の人物・福沢諭吉を研究することではないでしょうか?(2009/06/01)

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「カネの誘惑を断ち切って、英雄になった人物」で誰でも知っている人物がいます。一万円札の人・福沢諭吉です。 彼は回顧録「福翁自伝」でこう書いています「およそ世の中に何が怖いと言っても、暗殺は別にして、借金くらい怖いものはない」 しかし、彼は「暗殺」に対しては極度に臆病でした。何度も攘夷派に命を狙われ、「押入れの奥に逃げ込んでびくびくしていた」頃を思えば、「今の時世(明治30年)は保安条例で追放されはするが、暗殺されないだけ、まことに結構なことだ」と明快に肯定しています。今求められるのは「愛に基づくテロリズム」とは対極の人物・福沢諭吉を研究することではないでしょうか?(2009/06/01)

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