「世界ブランドの日本人を追え クエスト 探求者たち」

心に届くCMは「ご縁」から生まれる

アートディレクター goen゜(ゴエン)代表 森本千絵

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2009年5月22日(金)

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 砂漠に不思議な燕尾服の楽団。マリリン・モンローのなつかしい歌声が流れる。

 そう言い出すだけで、「ああ、あのテレビコマーシャル」と思い出す人は多いだろう。

 吉川晃司扮する指揮者をはじめ総勢17人の豪華出演者は、いずれも1人でも主役をはれるスターたち。このサントリーの缶コーヒー「ボス シルキーブラック」の幻想的な世界が、アートディレクター森本千絵のテレビコマーシャルの最新作である。

 森本の作品世界は広告だけにとどまらない。

33歳の女性が作り出す広告世界

 ミスター・チルドレンはじめ数々の人気アーティストのCDジャケットやプロモーションビデオを手がけ、岩波書店の育児書『育育児典』のアートディレクションではグッドデザイン賞を受賞。N.Y.ADC 賞(2002年、2005年)、ONE SHOW ゴールド(2003年、2005年)同ブロンズ(2005年)、朝日広告賞、新聞朝日広告賞、JR 東日本ポスターグランプリ(2002年、2004年)、アジア太平洋広告祭ゴールド、東京ADC賞(2002年、2005年)、JAGDA 新人賞(2004年)…。

 現在も20件以上の仕事を同時進行させる森本は、弱冠33歳。31歳で大手広告代理店・博報堂を独立し、7人のスタッフを抱える女性経営者でもある。

 森本率いるgoen°に発注される仕事はひきも切らない。それは、森本の作り出す世界が、確実に時代をとらえているからにほかならない。そこには広義の意味でのビジネス成功の秘密が隠されているのではないだろうか。

音というコミュニケーションツール

 人気の2組のミュージシャン、「ゆず」と「キマグレン」の初のコラボレーションユニット「ゆずグレン」が若者の間で話題をさらっている。CDシングル「TWO友」のジャケットのアートワークとプロモーションビデオも、森本千絵が手がけた。

 「曲の世界をどうビジュアルで伝えるか。自分も1つの楽器になる。そういう意味で音楽作りに参加する」と森本は言う。

 森本にとっての音楽の重要性は、ミュージシャンとの仕事に限らない。

 この5月13日にフランスで開幕した第62回カンヌ国際映画祭に出品された日本映画に「空気人形」(監督・是枝裕和、秋公開予定)という作品がある。この宣伝広告を手がけたのも森本千絵だ。こうした、一見音楽とは無縁の仕事でも、「音」でのコミュニケーションを大切にするのが森本流だ。「どんな仕事でもまず自分なりにテーマ曲を決める」と言う。

 「空気人形」の仕事でも自らが選んだ音楽50曲以上を収録したCDを作り、是枝監督に手渡した。もちろん「空気人形」の映画音楽とは全く関係がない。森本オリジナルのコミュニケーションツールなのだ。

 「言葉や文字では説明できない感覚があるでしょう。どうしても会話だけではズレが生じる。自分が持ったイメージと、クライアントのイメージが合っているか、音で確認するんです」

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著者プロフィール

酒井 香代(さかい・かよ)

エディター、ライター。
1985年 京都大学文学部(哲学科)美学美術史専攻卒業。広告制作・編集プロダクションにて大手航空会社機内誌(日本航空機内誌「ウインズ」)はじめ、企業誌を中心に編集・執筆をする。2000年よりフリーランスに。「クロワッサン」(マガジンハウス)や「ユーヴァレール」(企業誌)などの人物インタビューはじめ、「別冊太陽」の「気魄の人 横山大観」「ルノワール」「古代九州」などの執筆・編集に関わるなど、旅・酒・美術・建築などの取材を続けている



このコラムについて

世界ブランドの日本人を追え クエスト 探求者たち

世界を舞台に活躍し、世界を相手に勝負を挑む日本人たち――。中には、日本では無名であっても、欧米各国で唯一無二の存在として名を知られる日本人もいます。その姿を追うドキュメント番組、「クエスト〜探求者たち〜」がwowowで始まりました。このコラムでは番組と連動し、各分野で活躍する日本人の姿を文章で描いてきます

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