砂漠に不思議な燕尾服の楽団。マリリン・モンローのなつかしい歌声が流れる。
そう言い出すだけで、「ああ、あのテレビコマーシャル」と思い出す人は多いだろう。
吉川晃司扮する指揮者をはじめ総勢17人の豪華出演者は、いずれも1人でも主役をはれるスターたち。このサントリーの缶コーヒー「ボス シルキーブラック」の幻想的な世界が、アートディレクター森本千絵のテレビコマーシャルの最新作である。
森本の作品世界は広告だけにとどまらない。
33歳の女性が作り出す広告世界
ミスター・チルドレンはじめ数々の人気アーティストのCDジャケットやプロモーションビデオを手がけ、岩波書店の育児書『育育児典』のアートディレクションではグッドデザイン賞を受賞。N.Y.ADC 賞(2002年、2005年)、ONE SHOW ゴールド(2003年、2005年)同ブロンズ(2005年)、朝日広告賞、新聞朝日広告賞、JR 東日本ポスターグランプリ(2002年、2004年)、アジア太平洋広告祭ゴールド、東京ADC賞(2002年、2005年)、JAGDA 新人賞(2004年)…。
現在も20件以上の仕事を同時進行させる森本は、弱冠33歳。31歳で大手広告代理店・博報堂を独立し、7人のスタッフを抱える女性経営者でもある。
森本率いるgoen°に発注される仕事はひきも切らない。それは、森本の作り出す世界が、確実に時代をとらえているからにほかならない。そこには広義の意味でのビジネス成功の秘密が隠されているのではないだろうか。
音というコミュニケーションツール
人気の2組のミュージシャン、「ゆず」と「キマグレン」の初のコラボレーションユニット「ゆずグレン」が若者の間で話題をさらっている。CDシングル「TWO友」のジャケットのアートワークとプロモーションビデオも、森本千絵が手がけた。
「曲の世界をどうビジュアルで伝えるか。自分も1つの楽器になる。そういう意味で音楽作りに参加する」と森本は言う。
森本にとっての音楽の重要性は、ミュージシャンとの仕事に限らない。
この5月13日にフランスで開幕した第62回カンヌ国際映画祭に出品された日本映画に「空気人形」(監督・是枝裕和、秋公開予定)という作品がある。この宣伝広告を手がけたのも森本千絵だ。こうした、一見音楽とは無縁の仕事でも、「音」でのコミュニケーションを大切にするのが森本流だ。「どんな仕事でもまず自分なりにテーマ曲を決める」と言う。
「空気人形」の仕事でも自らが選んだ音楽50曲以上を収録したCDを作り、是枝監督に手渡した。もちろん「空気人形」の映画音楽とは全く関係がない。森本オリジナルのコミュニケーションツールなのだ。
「言葉や文字では説明できない感覚があるでしょう。どうしても会話だけではズレが生じる。自分が持ったイメージと、クライアントのイメージが合っているか、音で確認するんです」
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