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マネーゲームとコンビニのバイト、稼いだお金の価値は同じか?

ノンフィクション作家佐藤優氏×『成金炎上』山岡淳一郎氏対談 第4回

  • 山岡 淳一郎

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2009年6月15日(月)

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――混迷する状況の中で、個々の人間が考えておくべきことは、どういうことだと思いますか?

佐藤 今後、金がどうなるか。これも『成金炎上』を読んで考えさせられました。人間というのは、やっぱり実体のないものは苦手なんです。

佐藤 優(さとう まさる)
1960年生まれ。起訴休職中外交官にして作家。2002年に背任容疑で逮捕後有罪判決を受け、現在上告中。著書に『国家の罠~外務省のラスプーチンと呼ばれて』(毎日出版文化賞特別賞)『4101331723』(大宅壮一ノンフィクション賞)『テロルとクーデターの予感 ラスプーチンかく語りき2』など。雑誌連載も多数。
(写真:大槻 純一、以下同)

 僕は柄谷行人さんを非常に尊敬して時々飲んでます。彼いわく、バーチャルな貨幣をつくれると思ったのは完全に間違いだったと。NAM(詳しくは『NAM―原理』柄谷行人著、太田出版 を)をやって分かったけれど、地域通貨でうまくいっているのは、映画の鑑賞券という実体がある「おうみ」だけだと。

 「おうみ」は2004年以降は地域通貨の活動を休止中とのことですが、柄谷さんの言うように、この地域通貨には意義があったと思います。

 それは、歴史なんですよね。何となくこの本を読んでいて、僕は金というものが今後、貨幣として復活するような気がしました。

金の裏付けをなくした貨幣が恐慌を呼んだ

山岡 これまでお話ししてきた「歴史の反復性」の一方で、当然のことながら、80年前の世界恐慌と現代の世界同時不況では異なる点も多くあります。経済を成り立たせている根幹部分で、最も大きく違うのは通貨制度ですね。世界恐慌は、各国の通貨と金の交換比率が法律で定められる「金本位制」が崩れていく過程で生じています。金本位制は、貨幣の価値を金で裏付けることで、一種の固定相場制を維持して、為替を安定させ、国際収支を均衡させる効果がある、と信じられていました。

 しかし、第一次大戦で戦時体制に入った先進諸国は、戦費調達の必要性もあって、しばらくの間、金保有量にしばられる金本位制を停止して、それぞれの政府、中央銀行の考えでお札を刷りまくった。戦争が終わって、再び「正常へ帰れ」を合言葉に金本位制への復帰を試みますが、戦時中に経済が大発展したアメリカに全世界の金の4割以上が集中してしまい、もはや古きよき時代には戻れない、となった。そこにウォール街の株価暴落を引き金として恐慌が襲いかかりました。

 金本位制の崩壊で、貨幣の価値の裏づけが大きく揺らぎました。金という貴金属は、独特の光沢と化学的腐食に強く、薄く延ばせる性質もあって、貨幣の歴史とともにあったものです。それが貨幣と切り離され、しかも敗戦国のドイツなどでは超インフレで荷車にお札を積んでジャガイモを買いに行くような事態になった。まさにお札が紙くず同然になったわけです。この意味は大きいですね。

佐藤 金本位制が崩れたことは、世界経済を牛耳っていた大英帝国の凋落の象徴でもありましたね。

山岡 ええ。金本位制は、実質的には植民地から富を吸い上げて潤うイギリスの「ポンド」を基軸通貨として国際決済をするシステムでした。ところが第一次大戦で超大国だった英国は衰退し、米国が台頭するなかでポンドは基軸通貨の座から滑り落ち、ドルへと切り替えられていく。金本位制の崩壊は、世界経済の主役交代を告げるものでもあったのです。

 ドルは、第二次大戦後、ブレトン・ウッズ体制で金との交換が認められ、各国通貨は、そのドルとの固定相場を維持する(1ドル=360円)ことで間接的に金とつながっていました。しかし、1971年のニクソン・ショックで金ドルの交換が停止されて、金本位制は完全に幕を閉じ、管理通貨制度に移行しましたね。その後もドルは基軸通貨としての危機をたびたび迎えますが、生き延びてきました。

 しかし今回の世界同時不況は、かつてのポンドと同じようにドルを世界の中心から遠ざけることになるかもしれません。とはいえ、じゃあドルに代わる通貨は何か、となると、ユーロ? 元? と、疑問符がつきます。安定感に欠けます。そこで乱世の「金」というわけです。ただ昔のように貨幣と金を直接的につなぐのは難しいでしょうね。

次にくるのは、労働価値説の復活?

佐藤 完全につなぐことはできないでしょう。ただ、やっぱり何となく地金を持っていると、非常に安定しているんだという雰囲気が、また広がりつつある。最近の金価格の上昇がそれを示していると思う。

 加えて、これも僕の非常にぼんやりとした発想なんですけど、労働価値説が戻ってくると思う。

 市場における均衡点の背後に何を想定するかということで、新古典派理論を支える哲学を考えてみる必要がある。均衡点の背後には労働があるという感覚の物語があった方がいいと思うんです。つまり、マネーゲームで獲得した10万円と、コンビニでアルバイトをして獲得した10万円は違うんだと。こういった神話が流通した方が、僕はいいと思うんです。

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