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自分のお金で買ったマンションから、なぜ国に追い出されねばならないのか?

ノンフィクション作家佐藤優氏×『成金炎上』山岡淳一郎氏対談 第3回

  • 山岡 淳一郎

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2009年6月8日(月)

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――ここから、お二方の著著をベースに、現代の問題へと話をつなげていきたいと思います。あらためて、いまの日本はどのように見えてきますか?

山岡 後藤新平、金子直吉と成金の成長、昭和恐慌という僕のテーマの起点は、じつは住宅問題だったんです。

 いま、郊外のニュータウンで、建物の老朽化と住人の高齢化がどんどん進んで、コミュニティーを維持するのが非常に困難になっています。これらは、高度成長期の建設ラッシュのころ、国策として都市流入人口の受け皿として造られたものですが、ひとが生活しながら歳をとることを考えずに造られています。若い子育て世代をかき集めることだけを念頭に置いて建設されているから、古い5階建てにはエレベーターもない。医療機関の配置もちぐはぐになっています。

 しかも、住宅政策が景気浮揚の枠組でしか考えられなかったから、商品としての売りやすさばかりが強調されてきた。その結果、八王子市南大沢の旧住宅公団(現UR)が分譲した大団地のように、デザインの新奇性ばかり追って、基本的な構造安全性が損なわれた大規模欠陥住宅も生まれています。構造偽装事件が起きる前にURによる構造計算書の紛失、ねつ造と疑われるトラブルが起きています。

 あるいは、古いマンションを建て替えれば「資産価値が上がる」と信じ込み、住民の5分の4の議決で建て替えが決まったものの、デベロッパー側と、住み続けたい住民との裁判が長引き、強制執行で住民が排除された「千里桃山台第二団地」のような例もあります。

 自分のおカネでマンションを買って、たかだか30年かそこらで国家権力によって、まだ住んでいられる家から排除される。信じられますか。他の先進国では、まず考えられないし、誰が考えたっておかしい。なぜ、基本的人権である「住」が政府行政機関とそれに近い開発業者の食い物にされてきたのか。

 その構造を『あなたのマンションが廃墟になる日』と『マンション崩壊』で書きました。それで、住宅政策の源流をたどっていて「都市計画の父」と呼ばれた後藤新平に行き着いたんです。

佐藤 なるほど。

山岡 後藤の都市建設や医療制度の作り方を調べてみると、大胆で構想レベルの高いものでした。医者出身で自然科学的に物事を考える素養があったからでしょうが、公共の思想が対象とする領域を、国家よりも、はば広くとらえています。法学部出身の官僚とは違っていました。新鮮でしたね。

 そもそも国家的統制と市場の間には海のように広い公共の領域があります。現代の日本は、ここが弱っています。日本の危機の多くは、公=官と思い込み、信じ込まされてきたことに起因すると見ています。

公でも私でもない強い中間団体を作る

佐藤 優(さとう まさる)
1960年生まれ。起訴休職中外交官にして作家。2002年に背任容疑で逮捕後有罪判決を受け、現在上告中。著書に『国家の罠~外務省のラスプーチンと呼ばれて』(毎日出版文化賞特別賞)『4101331723』(大宅壮一ノンフィクション賞)『テロルとクーデターの予感 ラスプーチンかく語りき2』など。雑誌連載も多数。
(写真:大槻 純一、以下同)

佐藤 僕の母自身が今、さいたま市内の団地で、父の死後、1人で暮らしています。団地って全然安くないんですよね。年寄り1人で60何平米ぐらいのところに入っていて、十何万円払わされていますからね。それで形だけはバリアフリーになっているんだけど、もうコミュニティーは崩壊しているし。

山岡 そうは言っても高齢の方は、愛着のある団地で、終の棲家にしたいという願望がけっこう強いですよね。

佐藤 まさにそうなんですよ。だから私の母親にしても、引っ張ってこようと思っても、行きつけの病院やスーパーがある。時々ベランダにやって来る猫たちのことが心配だとか、近所で話をするおばちゃんがいるとかで離れたくないという気持ちが強いんですよね。

山岡 ネットワークはぼろぼろになっているけれど、住み続けてきたことで辛うじてつながっているものがあります。それをどうやってもう1回、つなぎ止めていけばいいのか。ワーキングプアも非常に大きな問題ですが、都市近郊に置き去りにされた古い団地も深刻な問題を抱えています。

 とかく、建物の老朽化と住民の高齢化という二種類の問題ととらえられがちですが、僕の認識としては、それは一体であって、コミュニティーの再生に尽きる。住み続けながら、いかに世代交代するか。建物の整備はコミュニティーが機能していなければ手遅れになります。同じ問題の表と裏なのに、今まで行政の縦割りでしか対応されてこなかった。ここにどう横串を通せばいいか、です。

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