先行きが見通しにくい2009年。困難な時代には新しいリーダー像が生まれるはずだ。これまでも企業経営や政治に新しい時代を切り開いたリーダーがいた。そんな時代のリーダーを日経ビジネスが描いた当時の記事で振り返る。
(注)記事中の役職、略歴は掲載当時のものです。
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2001年6月4日号より
音声だけでは限界とiモード開発を決断、ドコモ独走の礎を築いた。
競争こそ企業活力の源泉というポリシーで、NTTの殻を破った。
顧客志向、脱・自前主義を掲げ、ドコモの経営を改革した。
直言貫く性格で、NTT時代は何度も出世が遅れた。
自らが導いたiモードで、大企業意識が出始めた社風に警鐘を鳴らす。
=文中敬称略(真弓 重孝)
連休が明けたばかりの5月のある金曜日。NTTドコモ会長の大星公二は、JR代々木駅の目と鼻の先にあるNTTドコモの販売代理店、「ドコモショップ代々木店」に足を運んだ。背が高く、がっしりとした体躯。目鼻立ちのはっきりした顔は人目を引く。
昼休みが一段落した時間にもかかわらず、ショップは背広姿のサラリーマンや浪人生風の若者がそこここに見受けられる。お目当ては、最新型のiモード対応機種だ。鎖につながれたデモ機を手にして、感触を試している。

1932年4月7日札幌市生まれ、69歳。57年東京大学法学部卒業後、日本電信電話公社(現NTT)入社、88年NTT取締役経営企画本部長、90年同常務企業通信システム本部長、92年NTT移動通信網(NTTドコモ)社長、98年同会長、現在に至る。学生時代は全都道府県を旅行したように、今もぶらり出かける外出好き。 (写真:清水 盟貴)
大星は販売店の店長に軽く会釈すると、声を潜めるようにして話し出した。
「SO503i(ソニー製の新型携帯電話機)に不具合が生じて回収することになった連絡は、もう店に届いている?」
その日、ドコモはiモードの新サービスに対応したSO503iにソフトウエアの不具合が生じたため42万台回収することを明らかにしていた。
まだ連絡が来ていない旨を店長が伝えると、「そうか、そういう大事な話は、真っ先に販売の一線に伝わるようにしないといけないな。お客さまとの大事な接点なのだから」。
遠慮がちにうなずく店長に柔らかい笑みを浮かべると、今度は、販売員の腕章をつけた女性店員に目を向け、口を開いた。
「ところで、iモードは今も売れているの?」
新規のお客の9割以上がiモード対応の機種を選ぶという話を聞くと、「そうか」と答え、心配と安心が交差したような安堵の表情を見せた。それはまるで、子供を見る父親の姿を思わせる。
それもそのはず、大星は、iモード“生みの親”なのだ。
社内の反対を強引に押し切る
大星は、1992年、NTT常務からドコモ社長に就任した。当時のドコモはNTTから切り離されたばかり。100億円の赤字を抱えていたが、大星の社長在任中にドコモの業績は大幅に向上、退任時の98年3月期は3700億円の連結営業利益を計上するまで成長した。いわば大星はドコモの中興の祖だ。
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