「日経ビジネスが描いた日本経済の40年」

【時代のリーダー】井上 礼之・ダイキン工業社長

日本的経営はダメじゃない

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2009年6月17日(水)

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先行きが見通しにくい2009年。困難な時代には新しいリーダー像が生まれるはずだ。これまでも企業経営や政治に新しい時代を切り開いたリーダーがいた。そんな時代のリーダーを日経ビジネスが描いた当時の記事で振り返る。
(注)記事中の役職、略歴は掲載当時のものです。

* * *

2002年4月22日号より

8期連続の連結経常増益を続ける勝ち組メーカーを率いる。
時価総額重視などの資本の論理と人を活かす経営の融合を狙う。
先行き不透明な時代に組織を鼓舞し、世界シェアトップの座に突き進む。

=文中敬称略(西頭 恒明)

 人を大切にして、活かす経営――。かつては日本の経営者の誰もが口にした言葉だが、リストラや賃金カットの嵐が吹き荒れる今では、白々しさすら感じさせるようになってしまった。しかし、業務用空調機で約40%のトップシェアを握るダイキン工業社長の井上礼之は「経営の基軸となるのは従業員だ」と、真っ正面から主張する。

井上 礼之(いのうえ・のりゆき)氏
1935年3月京都府生まれ、67歳。57年同志社大学経済学部卒業、大阪金属工業(現ダイキン工業)入社。66年6月、淀川製作所総務部総務課長兼企画室課長。75年9月人事部長兼淀川製作所副所長、79年2月取締役。85年2月常務、89年6月専務。94年6月社長に就任、現在に至る。スポーツ万能で、入社後はバスケットボール部で活躍した。 (写真:岡崎 利明)

 長引く不況と国内空調機市場の成熟化という逆風下にもかかわらず、ダイキンは2002年3月期に8期連続の連結経常増益を達成したと見られる。製造業、とりわけ機械メーカーでは数少ない勝ち組企業の1つだ。

 成長要因を戦略面から見れば、まず、米空調機大手トレーンとの包括提携に見られる海外展開の強化がある。伸び悩む国内市場に頼らず、成長が期待できるアジアや欧州へと積極的に展開してきた。また、単なる機器の販売にとどまらず、保守・管理などのサービス・メンテナンス事業を収益の柱に育ててきたことも挙げられよう。

 さらに、その強さの源泉まで探るならば、井上流の人を活かす経営にたどり着く。

 例えば、春闘での労使交渉に「人に基軸を置く」と唱える井上の姿勢が明確に表れている。周囲の企業を見渡せば、ベアゼロ回答、定期昇給の額も見直しと、賃上げを前提とした交渉が完全に終焉を迎えた今年の春闘で、労働組合との徹夜の団体交渉に自ら望んで乗り込んだ。

 もとより、徹夜の団交といっても、ダイキンの労組が非常に先鋭化し、強い結束力で経営側に対峙しているわけでもなければ、合意が難しい特別な事情を抱えているわけでもない。夜を徹するロングラン交渉は、「経営陣と社員がお互いの考えを赤裸々に語り合おう」という考えから、井上自身が人事部長になった頃に始めたものだ。

 「20年、30年前ならまだしも、今どき徹夜の団交で何を話し合うのか」と、半ば呆れる向きも多いだろう。そんな見方を井上はこう言って一笑に付す。「確かに何て非効率だと思われるかもしれない。だが、とことん話し合い、双方が納得して合意に達すれば、どこからも不満は出てこないし、信頼感や経営参加の意識も高まる。組織が一丸となるうえで、決してムダなことではない」。

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