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【時代のリーダー】佐治 信忠・サントリー会長兼社長

アカンかったら、しゃーない

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2009年6月22日(月)

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先行きが見通しにくい2009年。困難な時代には新しいリーダー像が生まれるはずだ。これまでも企業経営や政治に新しい時代を切り開いたリーダーがいた。そんな時代のリーダーを日経ビジネスが描いた当時の記事で振り返る。
(注)記事中の役職、略歴は掲載当時のものです。

* * *

2002年6月10日号より

2世の気負いと無縁な「ヒゲのジュニア」は、あくまで自然体。
自らの進路を、常にサントリーの将来像と重ね合わせてきた。
独自の嗅覚でかぎ取った国際化と多角化の課題実現へ、今攻め込む。

=文中敬称略(田中 成省)

 「やってみなはれ」。サントリーの起業家精神を象徴する言葉としてあまりにも有名だ。「ビール事業に参入する時、じいさんがオヤジに言った言葉。いい言葉だと思う」。こう語るのは、昨年3月、いとこの鳥井信一郎から経営のバトンを受け継いだサントリー4代目社長の佐治信忠(56歳)。「じいさん」とは創業者の故鳥井信治郎、「オヤジ」は1999年に亡くなった佐治敬三である。

 佐治信忠には「やってみなはれ」以外にも、無意識のうちに使うフレーズがある。「アカンかったら、しゃーない(仕方ない)」。例えば、こんな具合だ。「社員から『この商品を出したい』という熱意が感じられれば、納得できなくてもゴーサインを出す。やらなければ結果は分からないし、やってみてアカンかったら、しゃーない」。

悲壮感のない一生懸命さ

佐治 信忠(さじ・のぶただ)氏
1945年、兵庫県川西市生まれ、56歳。慶応義塾大学を卒業後、渡米。71年米カリフォルニア大学大学院を卒業。ソニー商事を経て、74年サントリー入社。79年サントリーインターナショナル社長。82年サントリー取締役、常務、専務、副社長を経て、2001年3月社長就任。2002年3月から会長兼務。 (写真:長谷 亨)

 佐治が経営者としてこの言葉を最初に使った場所は米国だ。79年、サントリーの米国法人、サントリーインターナショナルの社長に就任した直後のこと。「ウイスキー(をやってみた)がアカンのやからしゃーない。『ミドリ』を売ろう」。この言葉が、行き詰まっていたサントリーの海外事業に風穴を開けた。

 サントリーは「オールド」や「ローヤル」などを引っ提げて62年、米国に進出する。それから17年経った79年になっても、米国でのウイスキー販売量は、年間1000ケースに届かない。完全に閉塞状況に陥っていた。

 そこで佐治は、この年から販売を始めたメロンリキュールのミドリに注目。ウイスキーに投入していた販売原資を、そっくりミドリに充てる決断を下した。この時の様子を、米国で佐治と机を並べていた現常務の古平昭信が明かす。「現地の先輩たちは、ミドリへの資金シフトに反対していた」。

 無理もない。オールドやローヤルはサントリーの看板商品。米国でサントリーのウイスキーを販売することは、現地はおろか、サントリー全体の悲願。そのために20年近くもの間、日本から渡米した社員が奮闘してきた。「皆、ウイスキー販売に使命感を持っていた」と古平は言う。にもかかわらず、ウイスキーとは社内的な“格” の違う新製品に戦力を移そうというのだ。

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ビル・エモット 英エコノミスト誌元編集長