先行きが見通しにくい2009年。困難な時代には新しいリーダー像が生まれるはずだ。これまでも企業経営や政治に新しい時代を切り開いたリーダーがいた。そんな時代のリーダーを日経ビジネスが描いた当時の記事で振り返る。
(注)記事中の役職、略歴は掲載当時のものです。
* * *
2003年12月1日号より
SFとおもちゃを愛し、「経営はゲーム」と言い切る技術系オタク。
孫正義の陰に隠れながらも、ヤフーを東証1部企業に育て上げた。
理詰めで攻め、すべてのネットサービスでナンバーワンを目指す。
=文中敬称略(大竹 剛)

1957年2月東京生まれ、46歳。東京理科大学理学部数学科ではコンピュータープログラムの作成に没頭し、79年にソード電算機システムに入社。87年にソフトバンク総合研究所に転職。92年にソフトバンクに移り、94年から同社社長の孫正義の側近として米IT関連企業の買収に携わる。96年に出資先の米ヤフーの日本法人の社長に就任。97年に店頭公開、2003年10月に東証1部上場を果たす。(写真:陶山勉)
10月28日、めったに着ないスーツに身を包み、いくぶん緊張した面持ちで井上雅博は、東京証券取引所の情報発信センター「東証アローズ」(東京都中央区)に向かった。ヤフーの社長に就任して7年が過ぎ、ついに東証1部に株式の上場を果たしたのだ。
上場セレモニーでは詰めかけた報道陣を前に、照れくさそうに記念の盾を受け取り、立ち会い開始の鐘を鳴らした。米ヤフー創業者のジェリー・ヤンもお祝いに駆けつけ、2人は耳打ちしては笑い合い、お互いに喜びをかみしめていた。
ヤフーが運営する日本最大のウェブサイト「Yahoo! Japan」には、1カ月に約3600万人が訪れる。2003年度の売上高は710億〜730億円を見込む。検索サービスを核に、ニュースなどの情報提供からオークションまで、幅広いサービスを手がける。ADSL(非対称デジタル加入者線)を使ったブロードバンドサービス「Yahoo! BB」では、300万人以上にプロバイダーサービスを提供する。現在の時価総額は2兆4691億円(11月20日終値)。セブン-イレブン・ジャパンに次いで16位で、親会社であるソフトバンクの1兆2769億円の倍の規模だ。
ヤフーを育て上げた井上の功績は、ソフトバンク社長の孫正義の派手な経営の陰に隠れ見えにくい。「米ヤフーに出資したのは孫の先見性の賜物で、既に米国に成功モデルがあるからうまくいった」と皮肉る人もいる。最近では、孫がYahoo! BBというブランドを声高に叫び、赤字覚悟でブロードバンド事業に邁進すればするほど、井上の姿はかすみがちだ。あるヤフー社員は、「入社面接でヤフーの社長は誰かを問うと、孫社長と答える人もいるほどだ」と苦笑いする。
確かに、井上は自ら好んで目立つタイプではない。ヤフー創業時には、「自分が社長になるよりも孫さんがなった方がマスコミが騒ぐ」と、初めの数カ月は取締役としてヤフーに関わったほどだ。そうした孫に対する一歩引いた振る舞いのせいか、ネットベンチャーの社長としては、ヤフーを追撃する立場にある楽天の会長兼社長、三木谷浩史の方が有名になった。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。




からのご案内




