「日経ビジネスが描いた日本経済の40年」

日経ビジネスが描いた日本経済の40年

2009年7月17日(金)

【時代のリーダー】ハワード・ストリンガー・ソニー次期会長兼グループCEO

卿はソニーを救えるか

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先行きが見通しにくい2009年。困難な時代には新しいリーダー像が生まれるはずだ。これまでも企業経営や政治に新しい時代を切り開いたリーダーがいた。そんな時代のリーダーを日経ビジネスが描いた当時の記事で振り返る。
(注)記事中の役職、略歴は掲載当時のものです。

* * *

2005年3月21日号より

ソニー初の外国人CEO(最高経営責任者)に6月就任する。
米国では徹底した合理化とチーム力で、映画、音楽の収益力を高めた。
家族とジョークを愛する英国人が、「運命の一瞬」を明かした。

=文中敬称略(ニューヨーク支局 山崎 良兵)

ハワード・ストリンガー(Howard Stringer)氏
1942年英国ウェールズ、カーディフ市生まれ、63歳。65年、オックスフォード大学で現代史の修士号を取得。67年米CBS入社。88年同社放送部門の社長。97年5月ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカ(SCA)社長。98年12月SCA会長兼CEO。99年6月ソニー取締役。2003年4月副会長。2005年6月ソニー会長兼グループCEOに就任予定。(写真:菅野 勝男)

 2月27日、米ロサンゼルスで開かれた映画のアカデミー賞授賞式。自社の手がけた「クローサー」に出演するナタリー・ポートマンがオスカーを受賞できるかどうか、気をもんでいたソニー副会長のハワード・ストリンガーは、休憩時間にかかってきた1本の電話に、我が耳を疑った。

 「私は一線を退くことにした。ソニーのCEOを引き受けてもらえないだろうか」。会長の出井伸之が切り出したのが、驚くべき内容だったからだ。

 ストリンガーは自分自身がCEOになる可能性をあまり考えていなかった。むしろ副社長の久多良木健を本命視していた節がある。「久多良木の強みは革新的で反逆者であるところだ。私は出井と久多良木が正しい関係を築けたら、ソニーを変革できると思っている」。昨年12月に会った時、ストリンガーはこう語っていた。

 しかし、その時のインタビューの端々に感じたのは、ストリンガー自身がソニー全体の経営に対して強い情熱を持っていることだった。

 「イノベート・オア・ダイ(改革か死か)」という言葉をストリンガーは好んで口にする。変化の激しい時代は、早く環境に適応できないと生き残れないという意味だ。ストリンガーは、昨年9月のソニーと投資家グループによる米映画スタジオのMGM買収を成功させ、米メディア大手のタイム・ワーナーを出し抜いた。いつもアナリストに「ソニーはどうせ早く動けない」と思われているのを悔しく思っていたが、もうそうではない、と強調した。

守旧派に問う「改革か死か」

 一方で、ソニーを変革することの難しさについてもはっきりと認識していた。「日本には頑固な守旧派がいて猛烈な変化を拒んでいる。なぜなら彼らは今のままのソニーを愛しているからだ。彼らを敵対的と言うつもりはないが、会社の進むべき道ではない」。

 ソニーのCEOのいすに関心がなかったわけではないストリンガーだが、出井からの要請に即答はしなかった。

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