先行きが見通しにくい2009年。困難な時代には新しいリーダー像が生まれるはずだ。これまでも企業経営や政治に新しい時代を切り開いたリーダーがいた。そんな時代のリーダーを日経ビジネスが描いた当時の記事で振り返る。
(注)記事中の役職、略歴は掲載当時のものです。
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2006年7月31日号より
高級ホテルに特化した予約サイトとして独自の地位を確立する。
30歳で患った難病の克服が、起業の道へと駆り立てた。
IT企業家でなく、サービスのプロとして次はレストラン予約網を築く。
=文中敬称略(蛯谷 敏)
「ほら、あれです。黒い犬」
社長室の壁に留められた1枚のピンナップ写真を指すと、大柄の男性はその体躯には不釣り合いなほど満面の笑みで、自慢げに言葉を続けた。「一休というのは母が飼っていた犬の名前なんです。“一級”のホテルに“一休み”。インターネットのサイト名にはぴったりでしょう」。

1962年2月生まれ、44歳。86年上智大学法学部法律学科卒業、同年日本生命保険入社。リーマン・ブラザーズ投資顧問派遣後、融資・審査部に所属。 98年5月に日本生命を退社、同年7月に一休の前身に当たるプライムリンクを設立、代表取締役就任。2004年7月に商号を一休に変更。
壁には尊敬する経営者の言葉を飾る(写真:清水 盟貴)
森正文、44歳。高級ホテルや旅館に特化したインターネット予約サイト「一休.com(ドットコム)」を運営する一休の社長である。「味のある社名ですね」と話題を振ると、森は悦に入った表情で愛犬のラブラドールレトリバーを紹介してくれた。
あまたあるネット予約サイトの中でも、最近の一休の快走には目を見張るものがある。予約手数料や広告を収益源に、2006年3月期の売上高は前期比 50.8%増の18億7100万円、営業利益は同63.2%増の11億8500万円と大幅な増収増益を記録。今年3月末の会員数は約110万で、昨年の同時期に比べて約30万増えた。昨年8月には、東京証券取引所マザーズ市場への上場も果たしている。
「センチュリーハイアット東京」「ホテルオークラ東京」「帝国ホテル」――。 一休に名を連ねるのは、一流ホテルや高級旅館ばかりだ。登録宿泊施設数は、2006年3月末で828。サービス開始からホテルの質を利用者に訴求する戦略で独自色を出してきた。
110万の会員のうち、実に4分の1が年収1000万円以上の高所得者だ。顧客当たりの平均単価も約2万2000円と高額。インターネットのホテル予約サイトといえば、ビジネスホテルを「格安」で提供するとのイメージがついて回ったが、森はそれを覆した。
ヒルズ系とは一線を画す
インターネットを基盤に事業を運営するネット企業の中で、一休は間違いなく勝ち組に分類される。PER(株価収益率)は約64倍と、投資家の成長期待は高い。
森は、日本生命保険を36歳で辞めて起業した。勝ち組ネット企業の仲間入りした今の状況を、どう見ているのかと水を向けると、少しむっとした表情でこう返してきた。
「ほかのネット企業と同じ括りで見ないでほしい。確かにインターネットで事業はしているけど、時価総額世界一とか、そんなものは目指していないから」。将来の成長期待を反映した株価をテコに資金を調達し、派手なM&A(企業の合併・買収)で事業を急拡大させるネット企業。いわゆる“六本木ヒルズ族”と呼ばれる経営者の手法を森は蛇蝎のごとく嫌い、そういった経営者と関わることを避けてきた。森は、IT(情報技術)企業家ではなくサービス業の経営者を自任している。
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