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“弊社”は謙遜か暴力か

2009年9月11日(金)

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 「弊社」で始まる文書を私は好まない。それは「弊社」を口にする機会のない私の職業からくる違和感なのか、それを口にするビジネスマンたちにどこか無理を感じるからか。

 だいたい、「弊社は…」と語らねばならない時は限られている。ビジネスや営業で相手の人物と出会って間もない頃だ。

―― どんな会社なのですか?
  「弊社はもともと…」
―― 今は何に力を入れているのですか?
  「弊社の得意とするところは…」

 あくまで会社を代弁する名詞としてそれがある。

 だが名刺を交わした翌日からはその主語は「弊社」から「私」、呼ぶ時は「○○さん」に移行する。もう会社から個人へと関係性が深まり、突っ込んだ話になる時期のことだ。

 それ以降は仕事が終わるまで個人の名前を呼び合うことになる。出会ってから終わりまで「弊社」という主語で語り続けることはむしろ難しい。

 だが、仕事の流れの途中で突然、相手から「弊社は」という文書が舞い込むことが度々あった。それは決まってなんらかの拒絶の時だった。

 「あいにくながらご要望の件ですが、弊社はパンフレットにも記載してある通り…」とか、「弊社の事情により、ご希望に添いがたく…」とかだ。

 そんな時には必ず、それまで「私は」と語っていたはずの担当者の主語が「弊社」になった。

 私はその“変わり目”の瞬間に相手の“卑劣”を見る。

 「弊社」という主語は、謙遜にも、暴力にも使える便利な言葉だ。

 出会いは謙遜して使い、相手を切り離すとなれば、それまでの担当者はさっと企業の奥に姿を隠し、突然、「弊社」という顔の見えない主語に切り替え、有無をも言わさず相手に拒絶を突きつける。

 その文書を受け取った方は突然、担当者ではなく、企業と向き合うことになる。そして、「個人vs企業」では、まずはその圧倒的な力の格差に個人がひるむ。これが、「弊社」を使う効果だ。

 その効力を自覚しているにせよ、無自覚にせよ、便利な言葉としてその暴力性に気付かず使うビジネスマンに私は警告したい。

 なぜなら、「弊社は」で始まる拒絶は、裁判沙汰へのゴングになりかねないからだ。

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「“弊社”は謙遜か暴力か」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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