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詐欺か詐欺でないか

2009年9月25日(金)

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 長年の肩こりを治そうとインターネットでクリニックを調べると、ぜひやってみたい治療法に出会った。下あごのズレをマウスピースで調節し、全身の歪みを矯正してあらゆる体の痛みを治すというものだった。本屋にも歯と健康との密接な関係を説いた本が並ぶ。

 「これだ」と思い電話した。

 「およその総額を教えてください」

 「まずその日の患者さん全員で医師の講習を受けていただきます。そのうえで治療される場合、1万円です」

 1万円くらいなら効果がなくても、あるいは、騙されたとしても許容範囲だと思い予約した。

 講習は医師が参加者全員の病状を聞くところから始まった。「皆がいるところで個人的な病状を発表するとは個人情報保護法としてどうなんだ」とは言わず、私は自分の順番が来たときに「肩こりです」と言った。他の患者たちは多種多様な深刻さで参加していた。

 何時間にもおよぶ講習で、その時間の多くは治療法を論理的に説明するというよりも、この治療法こそが世界にひとつしかない最高の治療法であるといった“説得”だった。

 いぶかしい思いがよぎったが「ま、1万円だし」と自分をなだめてつきあった。

 長い講習が終わり、いよいよ医師との個人面談が始まった。ここで具体的な治療が提示される。といってもマウスピースを作るだけなのだが。

 医師と二人きりになると、私に治療計画書と価格を提示した用紙が渡された。治療法は当然、マウスピース。価格は…50万円だった。

 そのマウスピースの調節に毎回“1万円”かかるということだった。事前の価格説明の巧妙なすり替えのワザを見た。

 私は計画書を見て、ニターと笑った。

 医師も私を見て、ニターと笑った。

 「考えさせてもらいます」と退出する私の後ろから、次の患者の「契約します」という声がガラス越しに聞こえてきた。深刻な病気のお年寄りだった。

 この社会には限りなく詐欺に近く、それでも効く人が一人でもいれば詐欺ではないと逃げ切れる商売が普通にある。摘発されてもまた手を変え品を変え、新手の詐欺まがいの商売をすることもめずらしくない。肝心なのは“いかに騙されずに生きるか”だ。

 昔、私と一緒に番組をやっていた先輩タレントが、占い師がゲストに登場する度に激怒して番組を無茶苦茶にしてしまうことがよくあった。

 ある日私は、「なぜそんなに占い師が嫌いなのですか」と聞いてみた。

 「嫌いなのではない。霊がいるだの、運命に左右されるだのと、もっともらしくメディアが流すことで、霊感商法や年寄を騙す悪徳商法の手助けをしていることが分からんのか。彼らを騙す多くはそれら根拠のない脅しから始まっているというのに」

 私はその時から、メディアと社会の共犯関係を意識するようになった。

 そんな私が最近、気になっていることがあった。

 詐欺師みたいな番組メインパーソナリティが増えている、ということだ。

「遙 洋子の「男の勘違い、女のすれ違い」」のバックナンバー

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「詐欺か詐欺でないか」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官